第17話

 俺は図書館で本を読んだ帰り道にヒマワリと出くわした、ヒマワリは魚を咥えている


 と、遠くから声が聞こえた


「泥棒よー!」


 この町は平和だ、泥棒なんて今まで聞いたことがない


 ただ一つ、ヒマワリがいつも魚を咥えて帰ってきては俺が謝りに魚屋さんに行っていた


「またてめぇかこのバカ野郎!」


 俺はヒマワリに走りより、右の頬を引っぱたいた


「いたいにゃー! いきなり叩くなんてひどいにゃ! みゃーはまだ何にもしてないにゃ!」


 ヒマワリが喚きながら抗議してくる、魚を咥えたまま平然と立っていた


「お前がまた魚を盗んだんだろうが!」


 次は左の頬だ、この猫を躾けなきゃいけない!


 ヒマワリは俺の平手打ちをバックステップで簡単にかわした


 こいつ素早いじゃねぇか


「にゃ!? まさかさっきの『泥棒』って叫び声のことかにゃ? みゃーじゃないにゃ! 最近下着泥棒が起きてるのにゃ! きっとそれにゃ!」


 ……下着泥棒だと!? けしからん! そんなことは許されんぞ!


 俺の怒りは下着泥棒に向いた


「ちょっとギルド行ってくるわ」


「その前に言うことがあるにゃ!」


 俺が叫び声の方に向かおうとするとヒマワリが呼び止めてきた


 わかってる、謝るべき場面だ、悪いことをしたらごめんなさいは常識だ、でもヒマワリに謝るの? なんかいやだ


「なぁ……俺が今まで何回魚屋さんに謝ったかわかるか? 爪とぎされたって苦情をどこの勇者が頭を下げていると思う? 弁償していると思う?」


 ヒマワリが耳を塞ぎながらダッシュで逃げていった


 勝ったな、しかし女を引っぱたくことに金で理由をつけるやつは最低だな、こいつはダメな猫だからいいと思うが




 俺の足ははやい、前にダンジョンの宝箱にあった瞬足ブーツのおかげだ、なぜか全然疲れもしない、おそらく魔法のおかげだろう


 声のした方に向かうとおばちゃんが指を差しながら叫んでいる


「泥棒よー! あそこにいるわー!」


 指差していた方向をみると下着泥棒らしき人物が町の外に向かって壁を登っているのが見えた


 外に行くのかよ! 魔物もいるのにどんだけ命かけてんだあいつ!


 しかし外に行くなら橋を渡るわけにもいかないだろう、外には兵士が待機しているはずだ


 どうしようか、とりあえず捕まえるべきだよな


 俺はパルプンテを唱えてみたが、なにも起きた感じがしない。空でも飛べるかと思ったがそんな感じはしなかった、ジャンプしてみる。……空中に足がついた


 歩けるじゃん!


 階段を上ったり降りたりできるように、好きに高さを変えられた。少しためした後に下着泥棒を追いかけたが、結局森に入る手前まで追いつけなかった。下着泥棒も足が早いようで他には誰も追いかけてきていなかった


「ゆ、勇者様……」


 下着泥棒は俺が肩に手を置いただけで逃げるのをあきらめたようだ


「いいから案内してくれ」


 おそらく何枚も下着があるだろう、俺は下着泥棒のアジトに案内してもらうことにする


 そこは洞窟だった、森から少し入ったところにあり、草で覆われカモフラージュされているようだ


 中に入ってみると、…………下着泥棒がたくさんいた


「勇者様が降臨なされたぞぉー!」


 案内させていた下着泥棒が洞窟内に響き渡る声量で叫んだ


 ゾロゾロと下着泥棒達が集まってきてお辞儀してきた、壁側によって真ん中を歩けるようにしているようだ、二十人くらいはいるだろうか。そして怖い


 こいつら……やばい


 下着泥棒たちはみな同じ格好をしていた、パンツをかぶり、上半身裸でブラだけをしており、下半身は葉っぱで大事な部分を隠している。手には手袋がされていた。俺は怖くて身動きがとれない


 奥からリーダーだろう男が歩いてくる、その姿は下着泥棒たちの姿に両手両足の付け根にパンツを巻付けていた


「勇者様こちらへどうぞ」


 男が手で奥に行くように支持してくる、俺はだまって洞窟の奥に進んでいった


 そこは広く、丸テーブルの上にパンツが写真付きで並べられており、そのまわりに椅子、一番奥には大きな王座のような椅子があった、俺は支持されるとおりに王座に座った


「こちら、お肉屋さんの看板娘パンティーと、本屋のクールお姉さんパンケーキでございます」


 俺の前にスッと皿がおかれた、パンツが漬けてあるお茶にパンツが乗ったショートケーキだった


「……」


「そしてこちらがギルドのお姉さんパンティーにございます」


 俺の首に受付嬢さんのパンティーが巻かれた、…………ちょっと大きくなってきた


 Tバック……だと!?


「え、なに……この状況」


 確かに受付嬢さんは綺麗だ、これはありがたく貰うが、俺はこいつらを退治しに来たはずだ、それにパンツを食うとか変態か!


「勇者様! 俺たちには隠さなくていいんです!」


「町中の人たちがヒソヒソ噂をしていたとしても俺たちは差別なんてしません!」


 ヒソヒソ噂話? ……俺がパンツ好きなのがバレてんのか!? いや町の人に見られてないはずだ!


「な、なんのことだ?」


 わけがわからず訪ねた


「ルナちゃんがスカートをめくられた、パンツを剥かれた、エルフのお嬢さんをしろくべたつくなにかで――」


「やめろぉおおおおおおおおおおおおおおお!」


 あいつか! あいつがそんな噂流しやがったのか! ひどい嫌がらせをしてくれるじゃないか、勇者終わってんじゃん、変態勇者じゃん!


 俺の怒りはルナに向かう


「勇者様!? どうなされたのですか?」


 俺は足を組み堂々とした態度をとった


「……ルナのパンツ獲ってこい、ついでに他のやつのもまかせる。あいつらの一日のスケジュールを教える」


 俺は怒りの中にも知識を残していた、ついでにサンやエルのパンツも盗ませよう


「勇者様のお導きだぁー! 野郎どもきばっていくぞぉ!」


 仲間たちが盛り上がる中、俺は冷静に注文を付け加えた


「あ、受付嬢さんのも頼む」


「まかせてくだせぇ!」




 一日たった


「スフー、スフー」


 俺は下僕を送り出すと写真付きのパンツから可愛い子を選び匂いを嗅いでいた


 すると下僕達が帰ってきたようだ


「ダメでやんす、ガードが固すぎるでやんす」


 下僕たちは手ぶらだった


「なにやってんだてめぇら!」


 俺は不細工のパンツを投げつける


「しかしみなさん警戒しているようです、私たちではとても」


 どうやら町中で警戒心が高まっているようだ


 確かにあいつらは強い、ドラゴンと猫がいるんだ、他の家よりも警戒心が強いのかもしれない


「しかたねぇ、俺が指示してるってバレんじゃねぇぞ」


 俺は下僕たちにパルプンテ、透明化をかけ送り出すことにした


「オヤビンさすがでやんす!」

「いいから早く行ってこい!」




 また一日がたった


 下僕たちが帰ってきた


「オヤビンやりやした! ヒマワリちゃんのパンツです」


 下っ端下僕がヒマワリのパンツを差し出してくる


「こんなゴミしかとってこれねぇのか!」


 俺は猫のパンツを壁に投げつけた


「ゴミはあなたですよ?」


 ……洞窟の入口にはサンとルナ、後ろに隠れるようにエルと猫がいた


「そ、そんな、お前らなんでここが……」


「透明化が使えることは知ってるにゃ! でもみゃーにかかれば匂いで簡単に追跡できるにゃ!」


 こいつこんなときだけ頭を使いやがって!


 猫はサンの後ろに隠れながら両手で指差してくる。下僕たちの透明化は洞窟に入るときに解けていた。その異様な風貌に恐怖しているのだろう、サンを抱き抱えるよにしている


「パンツがほしいならあげますよ~、戻ってきてください~」


 なんだ? 俺が帰ってこないから心配でもしているのか? しかし魅力的な提案をしてくるな、だがエルのパンツはすでに持っている。サンとルナのパンツがほしいのだ、落としどころとしてはサンだな


「俺にはまだやることがあるんだ、俺はこいつらと天下を取る!」


「クス! いいかげんに戻ってきよ! あんたがいないと寂し――えっと、その……ゴニョゴニョ」


 尻すぼみになっていく言葉は最後の方が聞き取れない


「なんだって? 最後のほうが聞こえなかったぞ?」


「っ! もう! もう!」


 サンがブレスを吐いてきた、俺は慌ててパルプンテで二十人の仲間を守った


 やばいやばい、サンが怒ってる。今のはパルプンテが使えなかったら死んでるだろ! どどど、どうしよう


「そそそ、そんなことをしても無駄だぞ!?」


「……」


 一瞬の沈黙があたりを支配する


「はぁ、どうせパンツがほしいのでしょう? わたしのパンツをあげますから戻ってきてください」


「るるるるるる、ルナ!? え、あなたまで何を言い出すの!?」 


 サンが慌てているが、ふむ、ルナのパンツか。


「さきにパンツをよこせ! 話はそれからだ!」


 ルナがひょいっと縞ぱんを放った、俺は慌ててそれをキャッチした


 確かにいつもルナが履いてるパンツだ! ……マジで? え、マジで? ……うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお


「お、オヤビン?」


 俺はついでにヒマワリのパンツを拾いそのまま下着泥棒共に向き直る


「おとなしく捕まれ変態ども」


「オヤビーーーーーーーン!」


 俺は下着泥棒たちを捕まえ、ギルドに引き渡した


 そして受付嬢さんに土下座した、右手に受付嬢さんのパンツをそっと乗せている


「このパンツを報酬としてください」


「え、えぇいいですよ、報酬ですから」


 受付嬢さんは恥ずかしそうに目をそらしていたが、お許しが出た


 家に帰るとヒマワリにも許しをもらう


「あ、このパンツもらっとくわ」

「さっきと全然態度が違うにゃ!」


「……いいよな?」

「…………にゃい」


 お許しをもらった


 ふっふふーん、受付嬢さんとヒマワリ、ルナのパンツが増えて、これで家宝がエルパン、幼パン、嬢パン、ヒマパン、ルナパンの五つになった、一気に倍以上だ


「あ、言い忘れてましたがそのパンツ、一度も履いたことないですからね」


 ルナには人の心がないのか?


 優雅に紅茶を飲みながらなんでも無いことのように言い放たれた


「……」


 パンツがほしかった……でも…………いや確かにルナのパンツだ、嘘じゃなかった………………チクショオォオオオオオオオオオオオオ


 家宝が四つに減った


 でも待てよ? ……ルナが握り締めて洞窟にいくまでずっと持ってたパンツだろ? 価値はないか? いやあるね!


 やっぱり家宝は五つだった。パンツはこう、なんというか、許しをもらって満たされた状態で貰わないと意味がない気がする



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