第14話

 俺たちはエルを連れてダンジョンに来ていた


 エルはまったく攻撃を受けていない、俺の腕にしがみついていた


「怖いです~デュフフ」


 エルはお嬢様のはずだが、そんなことより俺の息子がやばい!


 サンはドラゴンになり暴れていた


「私だって! 私だって頑張ってるのに! なによ胸なの! 胸がいいのかしら!」


 サンが魔物を蹂躙していた




 五十階層にたどり着いた。扉をあけるとそこのボスは大きく、白タイツを着た様な魔物だった


 人じゃないのかあれ


「はわ~大きいですね~、がんばれ、がんばれ」


 顔が近いせいか言葉が耳元で聞こえる……


 俺の息子も大きくなりました


「あれって人じゃないよな?」


「魔物よ! タイツを着てるように見えるけど全部皮膚よ!」


 ふーん


 こちらに気がついたのか中央にいた魔物が姿を消した、まるでそこにいなかったかのようにスッと


「消えたぞ!? 倒したのか!?」


「どうやら姿を消す魔法のようですね、やっかいです」


 なるほどな、それは強そうだ、…………使える!


「はわわ、すごいです~。透明人間もののAVの気分です~」


 エルはそう言うと一歩踏み出した


「おいエル! 迂闊な行動は――」

「はぅ~なんですかこれ~? しろくべたつくなにかですぅ~」


 エルの足元には白い粘液のようなものが水たまりのようにあった


 これはいけませんよ!


「さっきの魔物が出す粘液ね! 感情が高ぶると辺りに撒き散らされるらしいわ!」


 迷惑すぎるだろ! しかし感情か、俺のようにエロい気分でいっぱいじゃないよな?


「怨恨とかか?」


「えんこう~?」


 違うぞ、さっさと倒さないとな、俺の息子が危ない!


「パルプンテ」


「はわわ~!」


 突風が吹き、エルが倒れた。そこにはしろくべたつく何かがあり、エルがベタベタの濡れ濡れだ


 ごめん! エロいこと考えてました! こんな結果になるなんて微塵も考えてませんでした本当です無罪です


「……なにやってんの? そんなに胸がいいの?」


 サンの怒気が横から感じられる、目が向けられない


「ち、違うよ? 事故だよ?」


 まずいな、早く倒して空気を変えなければ、しかし実際こいつはどうやって倒せば……


「……敵が見えない、どうしようか?」


「私がやります~」


「え? お前何言ってんの?」


 エルは立ち上がり、一歩踏み出すと。自分のスカートを少しずつまくりあげた


「ほらほら~、パンツですよ~」


 すると赤いものが浮かび上がってくる


「パルプンテ!」


 白タイツは燃え尽きた


 エルがそのまま振り返り自慢げに言ってくる


「作戦成功です~、皮膚なら赤くもなりますよね~」


 不完全な魔法だな! 


 ……俺もさっきの色のような顔をしているのかもしれない、俺の息子も粘液を出せるのだろうか




 ルナがさっそく宝箱を開けていた


「あたりです! ニョホ、ニョホホ、これは高く売れますよ」


 ルナが小瓶に頬ずりしていた


「なんだあれ?」


「あれはおっぱいが大きくなる魔法の薬ですね~、私は飲んでませんよ~?」


 前人未到の五十階層の宝には、女の夢なのかもしれない物が詰まっていたようだ


 サンがエルの言葉を聞いたのだろう、ダッシュでルナから小瓶を奪い取った


「これは私のためにある薬だわ! 日頃の行いがやっと報われたのね! これでこんな胸とはおさらばだわ!」


「あぁ! ダメ、ダメですよ!? やめ、やめてください私のお金がぁ!」


 サンはルナの言葉などお構いなしに、すぐ小瓶の中身を飲み干した


 ……しばらく見守ったが何も起きない


「中身違いましたか~?」


「胸の大きくなる薬で間違いなかったです。はぁ、私のお金がドブに捨てられました。ドラゴンに魔法は効かないんです。サン、あなたは一生その小さな胸です諦めましょう、私もお金を諦めました」


「……うわぁ~ん、嫌よそんなのぉ。もうドラゴンやめるもぉん~」


 サンが泣き叫んでいる


 ドラゴンも大変だな、俺は胸の大きさにはこだわらないぞ? 大は小をかねるなんて言葉は胸には当てはまらない。胸の大きいロリってなんか違和感あるしな




 ダンジョンを出るとアダムが待っていた


 エルは俺の腕に胸を押し付けている、柔らかい


「勇者になられましたか。ぐっ、今日のところは何も言いません」


 サンが俺の腕に胸を押し付けくる、固い


「てめぇ浮気かごらぁああああああ」


 アダムが切れて俺の胸ぐらをつかんでくる


「やめて! 俺勇者だよ!?」


 俺が言うと同時にエルがアダムの頭を引っぱたいた。するとアダムの頭が、いや…………ズラが吹き飛んだ


 こいつ、ハゲか……よ


 俺たちは全員無言だった、見てはいけない物を見たようにアダムから視線がはずされる


「……後のことは任せてください~」


 沈黙を破るエルの頼もしい一言に俺たちは安堵し、町に向かった


 エルにアダムを任せる、あの嬢王様に報告してもらうためだ


 勇者のパーティに入り五十階層をクリアしたんだ、エルもアダムも嬉しいだろう


 そして! 俺たちは今日、別行動をとることにした




 俺は大浴場の前にいる。そこには情報屋のジョウが跪き、俺を待っていたようだ


 白タイツ様、あなたからは大変な魔法のアイデアをもらった、あなたことは生涯忘れない


「待っていましたよ勇者様、どうかわたくしめもお連れください、さもなくばこれからするであろう事をバラしますがね」


「う、うむ」


 脅迫されてしまった 


 さすが情報屋、俺の魔法、行動を把握していたか


「わたくしに斥候を務めさせて頂きたい」


「うむよかろう、まずはこの白タイツを着るのだ」


 俺はここに来る前に白タイツを買っていた、予備で二枚買ったのだがさっそく予備を使うことになるとは思わなかった。


「これは?」


「偉大なる白タイツ様の加護が宿っている」


「ははぁ、かしこまりました」


 無駄な言葉など不要だ、白タイツ様、我らを御守りください


 ジョウにも魔法をかけ、さきに行かせる。数歩後に続く


 斥候とはいえジョウだけ先にいい想いをさせるわけにはいかん!


 俺たちは入ってくる女性に合わせ脱衣所に忍び込んだ、そこは天国だった


 目に入るものがすべて女性! ケモ耳、エルフ耳、爆乳、貧乳、下着に下着! おっぱ――


「うほほ、これは!」


 ジョウは感極まってしまったのか、言葉をもらした


 馬鹿! 声を出すな!


 脱衣所にいた女性客がみんなこっちの方を見てしまった。怯えの表情もあるが、怒りの、般若のごとくこちらを凝視している


 こここここ、怖すぎる、無理だ、ここは阿修羅の住まう国なんだ


「みんな声がしたわ!」


「あの赤いのはなにかの魔法だわ!」


「攻撃するのよ!」


 ヒェ


 色々な武器が飛んでくる、俺はジョウを見捨てて逃げた


 振り返る暇も度胸もなかった


 気がついたらベットの中だった


 俺はジョウを見捨ててしまった。なんてことだ戦友が、お前のことは忘れない。だが白タイツてめぇはダメだ、不完全な魔法を教えやがって、次にあっても燃やし尽くしてやる! そしてジョウ、頼むから本当に俺のことはバラさないでくれ、俺は勇者になったんだ、初日から変態覗き魔勇者なんて称号は嫌だ。頼むぞ戦友よ。


 俺は祈りながら眠りに就いた

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