第12話
めっちゃ寝た! 昨日は全然寝てなかったからか、たっぷりの睡眠時間が心地いい
やっぱりあんな少ない睡眠時間で外に出るとか正気の沙汰じゃないわ。町の人の声とか聞こえなくなってたし
「起きてるにゃ?」
コンコン、とヒマワリがノックをした音がする。ヒマワリは家に来てから俺を起こす大役をこなしている
サンもノックを覚えて欲しい、ノックは人類最大のすばらしい発明だ
「おう」
「ご飯の時間にゃ!」
「運んできてくれ」
「わかったにゃ」
昨日は疲れた、町の危機を救ったんだからこれくらいダラダラしててもいいだろう
俺はまたベットに横になり、幸せな時間を満喫する
「あぁ! どうやって作るのよこれ!」
「やめ、やめてください顔にかかってます、私の綺麗な顔が!」
サンとルナが騒いでいる、二度寝ができない
少し時間が経つと、なぜかサンとルナが朝飯を運んできた、ヒマワリが付いてきている。どうやらお粥のようだ。
そしてサンがメイド服を着ている!
「サン!? お前なんで、なんでそんなに可愛い格好をしているんだ!」
「クスが、その……前に言ってたから」
サンは顔を赤くしながらもオロオロしながら俺のベットに座った、まだモジモジしている
サンは料理が苦手なはずだ、俺のために作ったのか!? マジで!?
サンの手をみると絆創膏が貼ってある
あざとい、そして可愛い!
「た、食べさせてあげるわ……」
お粥をスプーンですくい、口元に運んでくる
なんだこの状況は!?
「別人か!? それとも頭でも打ったのか!?」
「違うわよ! 食べないの!? ほらもう、あーんして!」
「お、おう。あ、おいしい」
胃の中に暖かいお粥が流れ込んでくる感覚がする、すごく落ち着く、優しい味と優しい感覚
サンにお粥を食べさせてもらう時間はすぐに終わった、続いてルナもお粥を持ってベットの近くまで来た
「どうぞ」
お粥を差し出すルナの手は何事もない
こいつも料理が出来ないはずだが、ウソだったのか? いや包丁で指を切るやつなんてそうそういない、サンがおかしいのだ。それにルナの事だ、どうせサンが作ったお粥を半分パクったとかだろう
てゆーか二杯もお粥のみってどういうことだよ!? もういらんわ!
お粥が目の前におかれた、サンもルナもニコニコしているが……
なんだろう昨日のことが堪えていると思ったのか?
「ヒマワリ、やるよ」
「いいのかにゃ!? やったにゃ!」
俺はヒマワリにお粥をあげた
「昨日のはなんだったんだ? 消えたんだが」
「あれは魔物魔道士ですね、元々は強い魔法が使えるだけのただの雑魚ですが、ドラゴンキラーを持っていました。あれがなければあんな屈辱!」
「ほんとにクスが居てくれてよかったわ」
サンがまた真っ赤に染まる、ルナは知らん
「にゃぁあああああああああああ! お腹がお腹がぁああああああああああ」
ヒマワリが部屋を駆けながら出て行った
「今のはなんだったんだ? 消えたんだが」
俺は確信していた、ルナがなにか仕掛けてくるってな! そんな罠を見破られたルナは
「ちっ」
「ルナ!? まさかあなたまた」
「下剤ですがなにか?」
なにか? じゃねぇよ!?
「あちょ、おまっ、逃げんな!」
ルナが部屋を出ていき、サンも後をついて行った
いつも通りリビングでくつろいでいると、アダムが人を連れて訪ねてきた
「クス様、この度はありがとうございました」
「すまぬな、邪魔するぞ」
アダムの付き添いの女性がそう言った
つり目で気の強そうな女性だ、いい服を着ている
「エロい本が散乱した汚にゃらしい汚部屋ですが、どうぞお上がりくださいですにゃ」
「猫ちゃん~、こっちでもう一本いっときましょうか~」
ヒマワリがエルに連れて行かれた
「いやにゃぁあああああああ!」
ヒマワリの叫び声が聞こえた
女性が一歩家の中に入ると土下座してきた
「我が国の民を救っていただき感謝する! 踏んでくれ!」
「女王様! そのようなことをしてはいけません!」
女王!? 最後のはなんだ!? この国の挨拶か!?
「しかし! 女王の響きに憧れてなってみたものの。女王になったら誰も踏んでくれなくなったのだぞ!?」
「それが普通でございます!」
あぁ、この国は終わっている。普通の人がいない……アダムは普通かも知れない、お父さん!
「踏んで欲しいと懇願されたのなら! 踏んであげるのが情けというものです!」
ルナがゲス顔で女王を踏もうとする
「待てルナ! 問題になるだろうが!」
俺はルナを羽交い締めにし、必死に止めた
「あぁその顔たまらん! 早く踏んでほしいのじゃぁああああああああ」
「おやめください女王様!」
アダム、お前頼りになるな
「クス様~、猫ちゃんのおしおき終わりました~」
エルが俺に抱きついてきた
「きっさまぁああああ! 娘になにしてやがるぅうううう!」
お前の娘から来ただろ見てなかったのか!?
アダムが俺の胸ぐらを掴みかかってくる
「ちょっと! クスになにしてんのよ!」
サンがアダムを突き飛ばし揉めている
もう収集つかねーわ、何しに来たんだよ
なんとか奴らを部屋に押し込み、話を聞くことになった
俺たちはテーブルを囲み座っていた
「ふむ、元勇者は魔物であったか」
「はい」
女王はしばらく沈黙した後、口を開いた
「実はの。各国の会議で魔王軍とは和解を求め、共に道を歩むことが決まったのじゃ。しかしあの元勇者だけが反発しての、我が国を滅ぼすと言い放ち行方をくらましておったのじゃ。今回のこと、誠に世話になった」
女王は頭を下げた
「顔を上げてください」
「……机に顔を押し付けてはくれぬのか?」
「……しませんよ?」
「ちっ」
「……頭を上げてください、話は終わりですか?」
「まだじゃ、ドラゴンのこと、元勇者のことはこちらから国民や、他国に話をしておく。それとダンジョンを五十階までクリアした暁には、お主を新たな勇者とし新たな良き象徴となってもらいたい! お主ならできるじゃろう?」
女王は頭を上げながら話した
ダンジョン攻略か、しばらくサボってたな。あのくらいなら余裕そうだし勇者か……かっこええやんけ!
「たぶん、できますね」
「よろしく頼む。それと一つお願いがあるのじゃが」
「はい、なんですか?」
「…………踏んでくれんかの?」
「嫌です」
女王達との話は終わり、玄関まで見送りに行くことにする
俺は非常識な仲間たちとは違う!
「最後に一つ。踏んでく――」
「嫌です」
女王達は帰っていった
食事の時間になった
サンの前には大盛りのご飯があったが、ヒマワリの前には大きなお皿にちょこんとたくわんが乗っていた
「どうしたんだ?」
「野良猫さんが~お魚全部食べちゃったんです~」
それを聞いたルナが虫をポイッと床に投げた
「恵んであげましょう」
「反省してるのにゃ、いらないにゃ」
「食べ物を粗末にするんですか!?」
それ虫だし、たべものじゃねーし、粗末にしてんのもお前だ
関わらない方が良いだろうな、と思っていたら。サンが虫を見ている
た、たべないよな?
……しかしなんだろう猫が少し可哀想だな
俺はヒマワリにおかずを少し分けてやろうとした
「ゲフッ、反省してるにゃ、いらないにゃ」
今ゲップしたよな? どんだけ食ってんだよ!
「……ところでみんな、明日からダンジョンに行こうと思う。どうやら俺は勇者になるらしい」
「いいわね! やっとやる気になってくれたのねクス!」
……だって勇者とかカッコイイし
「それで、二人のどちらかをパーティに入れたいんだが、どう思う?」
「ぱぱぱ、パンティーに、入れたいんですか~?」
言ってないぞ!? 入れたいけども
「そ、そんなことしたらダメなんだからね!?」
サンが顔を赤くしている
「しないから!」
とりあえずヒマワリを連れて行くことになった
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