第6話

「クエストを受けよう!」


「どうしたのよいきなり」


 異世界に来てからまともに戦った経験がない、二人共簡単に魔物を倒している


 俺だってやってみたい! パルプンテだって一回使ってみたけど危ない感じはしなかったし


「やってみたいんだ!」


「そ、そう。別にいいけど」


 ギルド掲示板前に来た


「どれにしようか」


「これにしましょう報酬が多いです、私たちならやれます」


 ルナは金剛力士像討伐、と書いてあるクエストを指している


 あぁ、世界の終わりの予感がする


「いけるのか? ほんとに?」


「はい、私たちなら余裕です、あなたは知りませんが」


 い、いけるか? いやいける!


 俺は受付嬢に詳しいことを聞きに行った


「このクエストを受けて頂けるんですか!? ありがとうございます。金剛力士像は森で盗賊のような行為をしているようで大変困っていたんです」


「そ、そうですか」


 この世界の物価は元の世界とあまり変わらない。ゴブリン退治やスライム退治は報酬が二万と書いてあり、冒険者になったばかりの人がパーティを組んでやっと倒し、その日の賃金を得ているらしい


 元の世界で言うフリーターや派遣と余り変わらない気がする


 金剛力士像の報酬は一千万だった、たぶんこいつは強い


「あの、見学希望者がいるようなのですがよろしいでしょうか……」


「はぁまぁ」


 いいじゃん、人が多いほうが安全だろう


「ありがとうございます! では、一時間後に町の外でお願いします!」


「わかりました」




 一時間後に町の外、平原に行ってみると


「え、こんなにいんの?」


「すご~い、フレンズがいっぱいいるわね!」


「見てください、まるで人がゴミのようです」


 例えに差があるなぁ


 男が一人歩いてきた


「よろしく、僕は情報屋のジョウ。君があの騎士団長を倒し、ダンジョンをたったの二日で三十階まで勧めたんだよね?」


「はぁそうですね、よろしくお願いします」


「ははっすごいなぁ、よろしく!」


 その後も他の人に挨拶され、なぜか褒められた。


 やっと出発できる


 平原を進むと冒険者達が戦っているようだ、魔物に囲まれているがなんとか隊列を組み刃を交えていた


 うわ、あれ大丈夫なのかな?


「あの人たち囲まれてるわ! 助けてくる!」


 サンが走って行き魔物をボコボコにしている、走った勢いで何匹かの魔物を倒し、一撃殴っては次から次へ倒していった


「おい、あの嬢ちゃん強くないか」


「すげぇ、あっという間に倒していってるぞ」


「これがダンジョン攻略者様のパーティか」


「俺らもあんな風になれるのか?」


「可愛い」


「俺もあんな子と冒険してぇーなー」


 見学者達の感想が聞こえてくる、サンは戻ってきたようだ。ついでに冒険者達もついてきていた


「助けていただきありがとうございます!」


 冒険者たちが頭を下げてくる 


「いえいえ、サンにお礼を言ってあげてください」


 どうやら冒険者達も見学者に混ざるらしい。少し進むとまた冒険者達が戦っている


 今度は結構余裕そうだ


「必死こいて戦ってますね、滑稽です。横殴りしましょう」


 ルナはニヤニヤしながら歩いて行った


「あの子も強いな」


「すげぇ、残酷に倒してる気がする」


「これがダンジョン攻略者様のパーティー?」


「俺もあんな風になってしまうのだろうか」


「可愛い」


「俺もあんなことされてぇーなー」


 見学者達の感想が聞こえてくる、ルナは戻ってきたようだ。ついでに冒険者達もついてきた


「あの、ありがとうございます……」


 顔がピクピクしている


「いえいえ、イヤミはルナにお願いします」




 そんなこんなで森にたどり着いた、目の前には金剛力士像、阿形、吽形がしゃがみこみゴソゴソしていた。俺たちには気がついていなようだ


 仏像人間か?


 体の表面が光って光沢がある、硬そうだ、しゃがんでいるのでわからないが、筋肉質で横幅も大きく、おそらく立ったら大きいだろう


「俺がいく、危なくなったら頼むな」


「わかったわ」


「……」


 ルナも何か言って!


 見学者達のヒソヒソ声が聞こえてくる


「まさかひとりで行くのか? あの金剛力士像相手だぞ」


「さすがに自殺行為だろ、三人で同時に奇襲じゃないか?」


「いくらなんでもこれは……」


「俺には無理だ」


「二人共可愛い」


「わかる」


 え、そんな強いの? 無理だったらすぐサンに助けてもらおう


 俺は忍び足で阿形に近づいていき、首の後ろに短剣を突き刺した、手応えがない。阿形はスっと消えた


 え? 終わり? 弱すぎるだろ


 阿形がいたところを見るとパンツがあった


 誰のだよ!? 阿形おまえまさか……


 俺はしゃがみこんで丁寧に綺麗なパンツをポケットにしまった


 頭の上を何かが通った、急いで振り返ってみると金剛杵っぽい槍が刺さっていた


 これはやばい! 気づかれた


 吽形がこっちをみている、パルプンテを唱えた


「んほぉおおおおおおおおお」


 大きな雷が吽形の上に落ちたが、まだ立っている


 強い!


 またパルプンテを唱えた、大きな炎に包まれた岩が落ちてきて、吽形は消えた


「勝った……」


 金剛力像は二人共消えた、おそらく戦闘は終わりだ


 少しの間があった


「うぉおおおおおすげぇええええええ」


「金剛力士像が一発だとぉおおおおお」


「なんだ今の! 剣術!?」


「なんて力と技量だ!」


「あの魔法はなんだ!? 初めて見たぞ! しかも全然疲れているように見えない!」 


「パルプンテか? だとしてもパルプンテが使えるものなのか?」


「どんな魔法か、どんな現象が起こるかわからないんだろ!?」


「俺にはとても使えないわ! パルプンテに選ばれる人なんているのか!?」


 ん? なんだと? 選ばれるってなんだ?


「サン?」


 サンのほうをみるとプイッと横を向いた


「サン?」


 近づいていくとルナの後ろに隠れた


「なんですか? 近づかないでください、私のストーカーですか? 可愛い顔に綺麗な胸、完璧なプロポーション、卓越した頭脳に誰からも愛される性格、あぁ神は私に何物与える気なのでしょう」


 うるせぇええええええ


「違うから、サンに聞いた魔法の説明と違ったんだけど」


「知らないわ!」


 おいいいいいいいいい


「仕方ないですね、私が教えましょう」


 ルナが察してくれたのか、魔法の説明をしてくれた。……ドヤ顔で


 魔法は魔法に選ばれた人しか使えませんでした




 みんなで町に帰るとジョウがご飯を奢ってくれるらしい、飯屋に来ていた


「いやぁ驚いたよ、すごいんだね君たち」


「ありがとうございます」


 お前は基本的に『可愛い』しかいってなかったけどな、ほんとにみてたのか?


 するとジョウがいきなり奥にいる家族のほうを指差す、そこには幼女と汚いおっさんがいた


 楽しそうにご飯を食べているしきっと家族だ、誘拐ではないと思う


「いいものを見せてもらったお礼に幼女と仲良くなる手助けをしてあげるよ、君も幼女は好きだろ?」


 なんだこいつロリコンか? 俺は幼女に興味なんて……


「はい、よろしくお願いいたします」


 二人はゴミを見る目で見てきた、ジョウは家族に近づき、何か話している。幼女が近づいてきた!


「お兄ちゃん、プロレスごっこしよ?」


「う、うんいいよ」


 ジョウ君、君は素晴らしいお方です


 幼女は俺に馬乗りになった


 ん? なんだなんだ? 可愛いなぁ


 ボコッ! 幼女にが顔を殴ってきた


 痛い! なんだこれ痛い! 幼女ってこんなパンチ力あんの!?


「ちょ、痛いよ、もうちょっと、ね?」


 ボコッボコッ! 幼女の連続パンチが顔に当たる


 痛い痛い! 


 俺の目から汗が流れてきた


「ま、まって!」


「私は!」


 ボコ!


「お兄ちゃんが泣くまで!」


 ボコボコ!


「殴るのをやめない!」


 やめて!? もう泣いてるよ!? 汗なんて思ってごめんもう泣いてるから!


「うっ、うう」


 痛い、声が出ちゃう


「え! お兄ちゃんごめんなさい! あの人にこうしたら喜ぶって言われたの!」


 幼女はジョウを指さした


 あの野郎許さねぇ、絶対許さねぇ


 幼女が元の席に行くと入れ替わりにジョウは笑いながら戻ってくると


「いやぁ楽しそうだったね」


「は? お前何言って――」

「ちょっとトイレに行ってくるからさ、あっちのお皿が片付けられないか見ててくれ」


 ジョウはさっきの家族の方を指差すと行ってしまった


 絶対許さねぇからな


「ねぇあんた、もしかして幼女に弱いの?」


「え? いや、可愛いとは思うけど」


「は? ……痛がってなかった?」


 ……あ、そういえば殴られた。……運が効いてないのか!? 俺の運にも弱点あるのか! ……いや幼女なら問題ねぇか? 


 俺が考え事をしている間、サンとルナは家族に話しかけていた。家族が帰ると元の席に戻る


 ジョウがトイレから戻ってきたのだろう、家族がいた席に立ち寄りこちらに来た


「これがなにかわかるかい? 幼女のスプーンだよ!」


「は? それがどうし――」


「うひょひょひょひょ、んまんま幼女のスプーンペロペロ、これがこれがハァハァ幼女の唾液、なんだい? 君もスプーンがいいのかい? ダメだこれは僕のだうひょひょひょひょ」

「……」


 こいつ頭イッてるわ


 ジョウがひとしきりスプーンを舐めまわしたあと落ち着いたのかまた話しかけてきた


「……失礼したね、君には幼女のお皿をあげるよ、僕はこのスプーンをもらう、これは絶対に渡さない!」


「あなた信じられる?」


 そうだ言ってやれサン! こいつはヤバイ!


「? なんだい?」


「それ、汚いおっさんのスプーンよ、さっきルナが取り替えてたの」


「は? ……う」


「う?」


「うぉろろろろろろろろろろ」


 ジョウが吐いた


「ふふふ、悪は滅びました」


 ……うん、復讐はやめておいてやる

 

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