2029/07/14(土) - データを上書きしますか? -
第17話「最後の試練の、その前に」
見上げる異界の太陽は、
――と、こみあげる
そして今、総仕上げとばかりに仲間の先輩プレイヤー達は緋瑪を誘った。【ブライダリア】でも難易度の高いAランクのクエストへ。更なる成長と、リスクに見合う報酬を求めて。
「え、じゃあサユキさんはあの後もずっと?」
「そうよん? みんなが落ちた、ログアウトした後も、
両手を腰に当てて胸を張るサユキは、朝からテンションが高かった。どうやら
少し話の流れが掴めず、緋瑪は首を傾げた。
「野良、で? と、いうのは」
「マスター、野良というのはですね」
エンデウィルだけがいつもの調子で、誰へともなく
「野良ぬこ……じゃない、野良猫でよくあるじゃないですか。ふらふらとアチコチの家に出入りして、あっちで
猫、という単語のイメージを、思わず緋瑪はサユキに重ねて見やる。なるほど、サユキの自由気ままで
同時に、ヒュルル――と、気の抜けた音が緋瑪の鼓膜を震わせる。
最後のメンバーを迎えて、サユキとヒメが笑顔で振り返った。
「おっ、
「今、メールを出そうと思ってたとこだよ。ごめんね、朝早くから」
緋瑪の背後で、ボヨヨンとトランポリンが
仲間の合流にサユキが元気よく挨拶を
「っと、また
――寝落ち。
現実世界のアルが、【ブライダリア】に意識を投じたまま
サユキが
「無理もないよ、僕だって眠いもの。セキトさんは大丈夫?」
「え、あ、んと……少し、眠い」
隣にすらりと細身の身体を並べて、ヒメは大きな欠伸を一つ。長く腰まで伸びる三つ編みの赤毛が揺れて、たちまち緋瑪にも
「っと、ここじゃ踏んでも蹴っても起きないんだったわ。じゃあ、いつもヒメにやる……」
「どうやってアルをこちょがすんですか、サユキさん。こんなにガッチリ着込んでるのに」
「……そんなこと、されてるんだ」
想像してみて思わず、緋瑪は絶句する。
自分がヒメなら、即座にハラスメントコールを実行するだろう。
相手がサユキでも。
アルの全身をくまなく覆うのは、磨き上げられた鋼鉄の鎧。
「サユキさん、私に任せて下さい。マスター、私をアルさんの元へ」
エンデウィルに言われるままに、緋瑪は右手の
「お目覚め下さい、蒼雷の騎士殿――ファーレンシュタット
「ん……むう、右手が……右手の傷が、
反応があった。
エンデウィルは脈アリとみて、さらに言葉を続ける。
「今こそ卿の力を私達は必要としています。さあ、お目覚め下さい。今が、その時」
「ぬぅ、はっ! ふう、夢であったか……まだ
「うなされておりましたが、ファーレンシュタット卿。いかなる悪夢でありましょうや?」
「遠い過去の――我が家名が汚された日の夢を……クッ、まだ古傷が」
パチリと
「――その時、奴の剣が我輩の右手を。我輩は……守れなかった。大事な……」
「ハイハイ、今日はその辺で一つ。次回に続く、ってことで。アル、生活スキルとって
「ふむ、それもまたよし! ペンは剣より強し、と言うからな。この戦いに……【エンシェントハング】との戦いにケリがついたら、故郷で――あの街で筆を取るのも悪くない」
魔法や剣技に代表される戦闘スキルは、その職業によって予め取得できるものが決められている。しかし、直接戦闘に関係のない生活系のスキルは、職業を問わずなんでも取得できる。サユキが
もっとも、それがこのブライダリアで所持金の増加に貢献するかは、はなはだ疑問だが。
「じゃ、そろったところで行こうか。今日はちょっと、気合入れていかないとね」
「まーね、久々にAランクのクエストだし。ボスまでやれば、かなり稼げるわよぉ」
ヒメとサユキの言葉に、エンデウィルが歓声を張り上げる。
「
「では、いざ
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