三次創作作品のレビューですので、これを紹介するに当たり、まず紹介しなければならない二次創作作品があります。
かくよむちほーの外の作品。
にこにこちほーと言う場所にある『けものフレンズ 12.12話「ひこうき」』 です。(作品の小説概要を参照ください)
この作品ですが、本編の最終話、かばんちゃんの旅立ち前に起きたとある事件(パークの危機レベル)を描いた作品であります。
作品の世界観を壊さずに、にこにこちほー内外のネタ(有名なものではアライさんトルネード。アライさんうどんシリーズ。シュッと細くなる博士。サバンナシマシマオオナメクジ、フルルとグレープくん等)を多数入れ込み、さらにはパークの危機に対してフレンズ達が団結して戦い、最後にはけものフレンズらしい、とても切ない気分にさせてくれると言う……すっごーい二次創作作品です。
シナリオも緩急、ほのぼのとシリアスが見事に構成されて織り成されているそれは、まるで本編の最終回のようで、けものフレンズという作品の素晴らしさを存分に描いています。
個人的には本編にまったく引けをとらない程のパワーを持った作品で、ここまでネタを入れながら世界観をあまり壊さないで再現できるのはすごいと思いました。
前編と後編(完結編)合わせて27分ほど、丁度本編1話を見る時間で見れます。
にこにこちほーと言う他所の場所、さらに言うと、メインコンテンツが『どうが』と言う、かくよむちほーとは違うものが多い場所の作品ですが、このかくよむちほーのエリアガイドをやっている私から見ても、かなりオススメの二次創作作品です。
是非、作品を読む前に視聴して欲しい、と言うのはありますが、動画を見る環境が無い方もいらっしゃると思われますので、あらすじを書きたいと思います。(見れる環境があるのならば、迷わずに見に行ってみてください。素晴らしい作品です)
なお、動画視聴されたことのある方は、以下のあらすじは飛ばしてみていただいても大丈夫です。
――『けものフレンズ 12.12話「ひこうき」』あらすじ――
本編後のある日、図書館で新しい料理を考えているかばんちゃん&サーバルちゃんと、博士と助手。
助手は博士に、かつてパークにもあったと言う「ひこうき」の修理について試してみてもよかったのでは、と語ります。
フレンズだけではどうにも出来ないですが、今はヒト――すなわち、かばんがパークにいる。それなら修理も出来るのでは? と言う話でした。
博士は、「好奇心のためにかばんを利用するのは良くない」と答えますが、この話題を聞いて反応したのは耳の良いサーバルちゃんと、たまたま資料集めのために図書館を訪れていたタイリクオオカミ。
タイリクオオカミはひこうきについての知識(?)を披露し、サーバルちゃんはかみひこうきがすっごーいと語ります。
そしてかみひこうきを実際に作って飛ばしてみることになりますが、まさかの失敗。
サーバルちゃんはかみひこうきを飛ばすことが出来ませんでした。
そうしているうちに、『うどん粉が無くなってしまった』とやって来た、アライさん&フェネックの乱入と、それに着想を受けた新しい料理『カレーうどん』を作るかばんちゃん。
新しい料理が出来たと和やかに一幕終えます。が、しかし、タイリクオオカミの話、それから『かみひこうき』の話でたまらなくなったのでしょうか。
夕方、けものフレンズ本編11話でさりげなく背景に登場していた、『ひこうき』の残骸らしきもの。それがある火山の5合目の場所に、助手がやって来ました。
ところが、助手の背後にセルリアンが……
シーンが変わり、夜。
まだひこうきの残骸の近くにいる助手の元に博士がやって来て話をしますが……なんと、博士が話をした助手は『助手そっくりのセルリアン』でした。
助手の持つ知識や好奇心を食べたセルリアンだったのです。
セルリアンは目的を語ります。
セルリアンの存在意義は種の保存と再現、それから滅びた種の復活。
海で隔てられたパークの外には出ることも出来ないとも。
しかし、『ひこうき』があれば外に出ることが出来る、と。
そう、セルリアンの目的は『ひこうき』の再現とパークの外に行くこと。
突如として巨大セルリアンが出現し、攻撃を受けた博士は身を翻しながら状況を確認。
知識と好奇心を食べられて意識を失っていた助手を発見した博士は、撤退を決断します。
そして、助手の姿をしたセルリアンは、空を飛ぶ巨大な『ひこうき』のようなセルリアンに乗り、小型セルリアンをばら撒きながらパークの上空を旋回。
各地でフレンズがセルリアンに襲われ、ハンターが迎撃に出ました。
一方、意識不明の助手は、かばんちゃんの機転で、『失われてしまった好奇心を刺激するりょうり』を口にして、復活。
パークはフレンズが総結集し、かつてパークで使われていたという『かっそうろ』に、着地誘導の滑走路灯を『火』を着けることで再現し、ひこうきのセルリアンを不時着させることに成功。
フレンズ達は力を合わせて巨大セルリアンを倒し、助手そっくりのセルリアンもまた、束縛されて事態は収束します。
しかし、博士は束縛したセルリアンに「ふねてきなもの」なら貸してやるのでどこにでも行けば良いと言いました。
夜が明け、船に乗り込むセルリアン。
「我々は保存し、再現し、永遠の世界を作り上げるのです」
「それでも良いのです。さぁ行くのです!」
セルリアンは、出航し、海の向こうへと旅立ちました。
「追わなくても良いの?」と言うサーバルちゃんに、博士が答えます。
セルリアンは、パークのサンドスターが無ければ、いずれ消えてしまう、と。
いきものはやがて終わりが来る。思い出を捨ててまで得る永遠になど、興味は無い。
だからこそ、一度しかない人生を精一杯楽しんで生きていくのだ。
美味しいものを食べてこその人生なのだ、と。
最後、密かに後をつけていたPPPが洋上で『ふねてきなもの』の中で拡散されていくサンドスターを確認しました。
――『けものフレンズ 12.12話「ひこうき」』あらすじ、ここまで―――
さて、長くなりましたが、本題の作品のレビューです。
『けものフレンズ 12.12話「ひこうき」』の後日談とも言える作品。
それがこの三次創作作品、『そらとぶゆめ』となります。
事件後、複雑な心境を残したままの博士は、旅立ち、消えたセルリアンを思い、一つの物語を想います。
それはギリシャ神話。固めた蝋で作った翼で捕らわれの塔から脱出したイカロスの話でした。
高く空を飛び、そのあまりの心地よさに太陽に近づきすぎて翼を溶かしてしまい、海に落ちて消えてしまう。
蝋が溶けていると気づいた瞬間、イカロスは――自分の体が消えてしまうことに気づいたあのセルリアンは何を思ったのか。
カフェでお茶を飲んでも気分は晴れず、悩み思いながら飛んだ博士は力の限り飛び、さばくちほーで力尽きたように辿り着きます。
そこでスナネコとツチノコの作っていたのは滑走路。
これが増えれば、ヒトの飛行機が来るかもしれないと、ツチノコは語ります。
そして、飽きっぽいスナネコが、珍しく壁に絵を沢山描いていました。
その時のツチノコのセリフにご注目ください。
とても深い、しっかりと三次創作元の流れを汲んだこのセリフは、とてもグッと来ました。
それは、ツチノコと会話していた博士も一緒だったようで――博士が行方不明になったと大騒ぎしながら現れたフレンズ達と話をしながら、博士は一つの決断をします。
ツチノコの言葉を聞き、劇中で『ひこうき事件』と語られる『二次創作作品12.12話ひこうき』で助手そっくりのセルリアンが何を思って船を漕いで行ったのか。
それをしっかりと想い、一つの考えに至った博士が、何をするのか。
これは是非、作品内でご確認ください。
作品タイトル、そらとぶゆめ。
とても素晴らしい三次創作作品です。
最後、エピローグらしきエピソードの閲覧もお忘れなく。
セルリアンを乗せていた船が、とある場所に辿り着くところで、この物語は終わりますが、このラストはとても感慨深いものがありました。
そんなわけで、三次創作と言うことで、親作品の解説も含めて力が入りすぎた紹介になりましたが、かなりオススメの作品となっております。
是非、この世界観に触れてみてください。
その後は是非、図書館に新しい本を探しに行きましょう。