第25話
カイの一族は誰もいなくなってしまった。
つい最近まで、賑やかだったルトの周りが急に静かになった。
ルトの周りにいた人は、ブランを残してみんな先に逝ってしまった。
ラウラ、湖の周りで暮らしていた
ブランはいまだにルトのそばにいてくれる。
ブランまでもがいつかいなくなってしまうのではないかという不安はルトの心のどこかに巣を作っていた。
ブランから言わせれば、そんなの今更である。ブランが幼体の時から、何百年ともに過ごしてきたと思っているのか。ルトの両腕で抱え込める大きさだったブランも今では尾が9本もあり、ルトの何倍も大きくなっている。
それだけの期間一緒にいたのだから、今更、ルトに呆れて離れることなどないというのに。
「ブラン。
私ね、ちょっと疲れた。
周りからみんないなくなって、ブランもいつかいなくなるんじゃないかって考えてたら、なんか疲れちゃったの。
だから、眠ろうと思う。
いつもみたいに夜をやり過ごすための眠りではなく、自分を落ち着けるための、癒やすための眠り。いつ目覚めるかわからないけど、、、」
『ったく、今更、どこにも行かないって言ってんのに、まだ不安なのかね、、
でも、たしかにこの何百年の間にいろんなことがありすぎた。
ルトは今まで一度も眠りについたことがなかったもんな。
いいよ。俺はいなくならないでこの世界のどこかでルトのこと待っててやる。ちゃんと癒やされてこい。』
「ブラン、、、
ありがとう。ごめんね、、、」
『待っててやるって言ってんだから、そんな泣きそうな顔すんなよ。安心して寝てこい。』
「、、、うん、、」
ルトはブランに背を向け湖の中に浮く小さな島へ向かった。花の散ってしまったそこで丸まったルトはブランがそばにいる安心感の中深い眠りについた。
『ルト』
[じょおうさま][るとさま]
[じょおうさま][じょおうさま]
[るとさま]
ルトは誰かに呼ばれている気がした。
囁くような小さな声が聞こえてくる。浅い眠りの中を漂うルトはさえずるような声にまぶたを開けた。
小さな花が咲き乱れる小さな島で、小さな兄弟に囲まれたルトは目をさました。
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