第24話
カイは、ルトと別れたあとしばらくの間気力が戻らなかった。何もする気になれず森の中をさまよい歩いていたときと同じようにボーッと過ごしていた。しかし、あれから森へ踏み込むことはなかった。
そんなカイを支えたのはアミだった。カイにとってアミは、しっかりした妹であったが、それが恋愛の対象に変わるのに時間はかからなかった。
カイは、立ち直り、アミに恩を返しながら思いを伝え、恋仲になった二人は結婚することになった。
カイと別れてからカイとアミが結婚することになるまで、今まで、人の一生が何度も入るような長いときを生きたルトにとって、ほんとに短い時間だった。
カイとルトの過ごした時間と同じくらいの期間だった。逆にルトとカイが過ごした時間はルトの一生の中でとても短いものだったけれど、ルトにはとても濃く充実した期間だった。
カイとアミの結婚式の日。
村人たちに祝われながら二人は式場で一生を誓いあった。
その瞬間、森のどこかで花火が打ち上がり、村中に色とりどりの小さな花が降った。
とても幻想的な景色だった。降ってきた花はルトとカイが一緒に過ごした湖のほとりにしか咲いていない花だった。
ルトから、カイへのお祝いだった。
カイとアミは子供を生み、育て二人仲良く過ごし、そして、最後の時を迎えた。
ルトは、ふたりのそんな様子をずっと見守り続けた。二人だけではない。二人の間に生まれた子は小さいときから見ているせいか、まるで自分の子のように可愛く、見つからないようにしながらもついついお世話を焼いてしまう。その子も結婚し、子供を産み、その子たちのことも孫のように可愛がった。
カイの一族は神に愛されていると言われた。彼らの結婚式には空から幻想的な花が降ってきたし、致命的な危機には何かに助けられていた。
そういうふうに言われたカイの一族も終わりを迎えようとしていた。最後の子はカイの鶴の子に当たる。つまり、孫の孫の孫の子供で、子供を二代目と数えて10代目に当たる。彼は生涯結婚しなかった。子供のときに見た蒼い髪の女神に恋したのだと。
ルトに愛された一族はルトを愛したことで終わってしまった。
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