第23話
ルトは自分の心のとおりにすることにした。自分の正体をカイには知っていてほしい。
もし、それで気持ち悪いと思われても伝えないと後悔すると思った。
【カイには伝えてないことがあるって言ったでしょ?
妖精って知ってる?面白いことが大好きな手のひらサイズの女の子たち。人間の子供には見えるけど、大人には見えないの。
私、妖精なの。
サイズは規格外に大きいけれど、この湖の妖精なの。
だから、大人になってしまったカイには私を見ることはもうできないの、、、。
誰が悪いわけでもはないけれど、もう会えないの、、、。
私の仲間はもういないけれど、私はこの場所を守らなきゃ。】
カイは、ルトがきっと人間ではないとは思っていたが、まさか、絶滅したと言われるあの妖精だとは思わなかった。
「じゃあ、もう会えないの?」
ルトはカイの目の前に立った。カイに向かって手を伸ばす。ルトの手がカイに触れたとき、カイの目から一筋の涙がこぼれた。涙がルトの指先を濡らす。ぬくもりを感じたカイが頬を触っても、ルトの手には触れられない。
【、、、そうね、、、、
こんなにそばにいても見てもらえないなんて、切ないわ、、、、
カイ、私は、もうあなたを見てることしかできないの。
カイが私に触れることも、見ることもできない。
私とカイははじめから、生きてる世界が違ったのよ。たったひとときでも、カイの生きる世界をともに過ごせたこととても幸せだわ。
カイ、私はカイに幸せになってほしい。
私は、カイが私のために生きてくれたことで幸せをもらったの。
だから、今度は、あなたを幸せにしてくれる誰かのために生きて、、、、。】
「ると?、、、ルト!」
ルトはカイの頬から手を離し、紙にかけた魔法を解いた。
「ブラン、行きましょう、、」
『わかったよ。、、、いいんだね?』
「ええ、伝えたいことは伝えたもの。
これ以上ここにいたら、、、
それに、ほら、カイには待ってる人がいる。」
森を走ってくる影が見える。
『ホントだ。』
「行きましょう。」
ルトはカイを振り返らないように湖に向かって歩き出した。ブランはその後をついていく。
カイにはやはりルトの姿は見えなかった。白い狐が湖を渡っていってしまう。カイはブランを追いかけて湖に入ろうとした。
「カイ!!」
腕を掴まれて振り向くとそこにいたのはアミだった。いつも、森でフラフラになってるカイを迎えに来て、世話を焼いてくれる妹のような少女だ。
「何してるの!」
「話してくれ!ルトが行っちゃう!!」
「ルト、、?ルトって、あの女の子?」
「ルトが見えるのか?!」
「え、あの蒼い女の子でしょ?
あ、こっち向いた!手振ってるよ!」
アミは無邪気に湖の白い狐に向かって手を振っていた。
「キレイな子だね、、、。」
「、、、、。」
アミの顔はどこか寂しそうで、とてもきれいだった。
カイは、アミに手を引かれて家に帰っていった。
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