第21話
ルトは、カイから預かっていた数冊の本を手に取ると、湖の辺りにある大きな岩の上においた。
この岩では、よく二人で腰掛け、
湖に沈む夕日を眺めた。
二人だけの特等席だった。
カイも、森を探し回ったあと
毎日この岩を訪れていた。
カイにとっても、この場所はルトとの大切な場所であったことがわかる。
ルトは、本の間に紙を挟んで本の横に座る。
ずっと守ってきた、静かになってしまった湖を眺めていた。
日が沈む頃、カイはいつものように湖の辺りにある大きな岩を訪れた。
今日もルトに関する情報は何もなく、ただただ平和な森が広がっている。
水辺にしゃがみこんだカイは、映り込んだ自分の顔を見つめる。
ため息を一つつくと、バシャリと顔に水をかけた。
カイはルトに会いたかった。話したかった。抱きしめたかった。褒めてほしかった。出かけたかった。笑いあいたかった。
ただそれだけだった。
ふと、戦争に行く前のことを思い出す。
あの頃は楽しかった。
いつも二人で走り回って、
転げまわって、
白い狐に怒られた。
戦争になんて行かなければよかった。
そしたら、、、、
ふと、白い狐が視界を横切る。
慌てて目で追うと、狐は大きな岩を駆け上がった。
まるで、導かれるように、カイは岩の上に登った。
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