第20話
一月ほど、カイが森から出なかったとき、
森のそばをうろうろしていた何かの気配が、まるで意を決したように森の中に踏み込んできた。
ルトは、カイが入れるように、結界の中に穴を作っていた。純粋な心の人だけが抜けられる小さな穴。
その気配は、小さな結界の穴を抜け、森の中に入ってきた。
クタクタになって、今にも倒れそうなカイを介抱して、家に連れ帰って寝かせていた。
カイが好きで、カイが心配でたまらないというのがよく伝わってくる。
ホントは、カイを森へは行かせたくはないけれど、それがカイを生かしているのをわかっているから、行くことを止めない。
大好きな人が、幸せになるのを応援したい。大好きな人に好きな人と結ばれてほしい。
そんな思いで溢れていた。
ルトの目から見ても、カイは弱っていた。
カイにルトは見えていない。
カイが、どんなにルトを求めていても。
ルトがカイの目に映ることは二度とない。
ルトがカイと話をできることは二度とない。
ルトは弱ったカイを支えることはできない。
現に、弱ったカイに
ご飯を食べさせ、
体を拭い、
話を聞き、
体を温め、
布団で寝かせ、
カイを抱きしめているのは
あの小さな存在である。
この森に入ってくるのは、どれだけ勇気語いることだったろうか。
非力な存在には、この森は大きく立ちふさがったことだろう。
でも、あれはここにいる。
あの少女は、カイのために身を投げ出す覚悟でここにいるのだ。
それに比べてどうだろう。
ルトは、カイが戦争に行くといったとき、ついていかなかった。
ルトが戦争に出れば、確実にカイを守れたのに。
戦争を一瞬で終わらせることも可能だったのに。
カイにふさわしいのは、
ルトなのか
それとも、あの少女なのか。
今後、カイを助けられるのは、、、、、
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