第16話

『人間の王よ

目覚めよ?


起きるのだ。


ようやく目が覚めたのか、、


まあ、良い。


そなたには、我から一つ贈り物をやろう。

我の遣いがそなたのもとへ向かっておる。


我が遣いから、受け取るがいい。

そなたの助けになるであろう。』


人の国の王は目覚めた。

齢40になろうかという王は、不思議な夢を見た。


夢で見たのは、美しい娘であったような気もすれば、年老いた老婆であった気もする。

ただ、王には、神の啓示に思えた。

負けていた戦争もきっと勝つことができるであろうと、自分に活を入れた。





その日の昼間、


カツン


執務室の窓に何か当たる音がする。

いつもだったら、近衛を呼ぶところであるが、神の啓示のあとである。

悪いことが起きようもないと窓を開ける。


ブワッと強い風がカーテンを巻き上げ、部屋の中へ吹き込む。

咄嗟に目を瞑った王が目を開くと、そこには、5本の尾を持つ真っ白な狐がいた。本来魔物であるはずのそれは、威厳と大きな体を持っており、何より神秘的であった。


狐に気圧された王は、身動きが取れなかった。


狐は、口に加えた何かを王のもとに置く。

王が手に取ることを催促するように、尻尾をダシダシと床に叩きつける。


金縛りにかかったようだった王は、慌てて、目の前に置かれたものに手を伸ばす。


それは、木の箱であった。

木の箱は、質素ながらも雰囲気がある。開け口は、見つからない。



じれた狐が寄ってきて、箱に触れた。

すると、箱は光り輝き、きれいに2つに割れた。


中には、赤い石で作られたペンダントがある。美しかった。

なんだか、吸い寄せられるように、王はこのペンダントを自分の首に下げた。

抗いがたい欲求であった。この美しいものは自分のものだと主張したかった。


王が、ペンダントを無事首から下げたことを確認した狐は、執務室から消えていた。










王のもとに届けられたのは呪いのペンダントであった。

一度身につけたら、死ぬまで外せない。

ペンダントは身につけた者の髪の毛を寂しくした。

王のふさふさだった頭は後退してしまった。


でも、その変わり、物理絶対防御の結界を得た。

悪意を持った攻撃のみ、全て弾いてくれるすぐれものであった。



それから、人間の国では、このペンダントを国宝として、代々、王が受け継いでいくことになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る