第14話
それから、カイは欠かすことなくルトのもとへ訪れた。
湖の周りと洞窟、祭壇にしか行ったことのないルトにとって、カイから聞く話はとても興味深いものだった。
カイは、ルトに村で起きたことや、噂話、来る途中でのことを話して聞かせた。
それだけではなかった。
ふたりは、いろんな場所へ行った。
花の丘、動物の草原、
夕陽の渓谷、雪花の雪原、
氷の神殿、トレントの森、
神秘的な鍾乳洞、温かい水の川、
きのこの茂る大木、巨大な魚が登る滝、
ドラゴンの眠る火山、白い虎の竹林、
火の鳥の孵る場所、黒い亀の洞窟、
エルフの村、ドワーフの工房、
オークの里、人食い花の湿原、
人魚の入江
ルトにとって、珍しい場所ばかりであったが、もちろん、人間であるカイにとっても未知の場所であった。
未知なだけではない、力のないカイには、命がけであった。
でも、二人は楽しかった。今しかできないことを楽しんでいた。
いろんな場所を訪れるたびにそこに住む人々の知恵を学び、力を得た。
ルトは最近変なのだ。
カイが横にいると、ブランと一緒にいるときみたいに落ち着くのに、
なんだか、そわそわするのだ。
カイが近くに来るとドキドキして、でも、離れがたい不思議な気持ちだ。
少しずつ男らしく成長していくカイが眩しくて、ずっと見ていたいのに、目をそらしてしまう。
他の種族の女と仲良く話しているのを見ると、邪魔したくなる。邪魔したルトを見て、なんだか、嬉しそうなカイの顔を見るのは、なんだか、照れくさい。
カイが村に帰っていくときに、明日も来るとわかっているのに、引き止めたくなってしまうのだ。
ルトは、本で読んだことがある。
これは、恋という名の症状にとても近い。
カイは、この誕生日で17歳になる人間である。自分を見ることのできるカイは、まだ、人間として、成熟していない。
もう、何百年も生きているルトは、こんな若いカイに恋をするなんて犯罪だと自分に言い聞かせる。
寿命の違う種族の恋愛は、悲劇を引き起こすことが多い。
カイを巻き込んではいけない。まだ、未来の明るい少年なのだ。
そんな、ルトの気持ちになんだか気がついているカイは、そんなルトの様子を嬉しそうに眺めるのだった。
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