第9話

ルトは成長していた。

どれだけの年月をかけて成長したのか本人でさえもわからなかったが、

6歳ほどの見た目であったルトは、人間でいう12歳くらいの容姿になっていた。


黒に見える程の深い青の髪と瞳は、ルトの生まれた、あの湖の美しい鮮やかな碧に変わっていた。


背の高さを図るためにつけた壁の傷を見なくても、背が伸びたのは一目で分かる。


しかし、それ以外は変わらずルトである。

以前より、表情が豊かになりはしたが、まるで凪いだ湖のような瞳。

人が近づくのを躊躇しそうなほどに美しく整った顔。

成長したと言っても、あまり変わらなかった。


ルトがそのように成長する間に、ブランは尾が2本も増え、体がふたまわりも大きくなったというのに。


ある日、本を読み切ったルトは、自分の髪を見て故郷の湖を思った。


そろそろ帰ってみようか。


ついこの間、1ヶ月前に儀式で捧げられた書物も読みきり、古代魔法についての本も全て目を通し、習得した。

ちょうどいいのではないか?


「ブラン、本はたくさん読んだ。知識も得た。

時間はかかったけれど、切りもいいし、一回、湖に帰ってみようかと思うの。

、、、、ついてきて、、くれる?」


『当たり前だろう!、、、全く、世話が焼けるな、、、』



ラウラが死んでしまってから、ルトの話し相手はブランだった。


何が原因だったか忘れたが、ルトと言葉を話せないブランの間で大喧嘩したことがある。

そのときは、誤解だとすぐにわかったが、

言葉を話せないことを初めて不便だと思ったブランは、進化の際に〈念話〉の魔法を習得していた。


それからは、ルトの唯一の話し相手は比喩ではなくブランである。



ルトの故郷である湖は、ラウラの洞窟から、少し離れたところにあった。ゆっくり歩いていくと3日ほどかかる。

そう考えると、あのときの疲れたラウラはよく、湖までたどり着けたものである。


ルトとブランは、急ぐ旅でもなかったため、珍しいものを見ては立ち止まり、木の実を見ては食べと一週間近く使って、湖にたどり着いた。

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