第8話
立ち上がったルトは、いつもと同じように夕飯の支度を始め、ブランとともにご飯を食べた。
いつものように、布団で寝て、朝起きて、ご飯を食べて、本を読む。しかし、ルトの開いた本が、そこから先に進むことはなかった。大好きな本を前に、ぼーっとしてしまい、内容が頭に入ってこない。気づくと日が暮れており、ご飯を食べて寝る。
そんな生活がしばらく続いた。
その間、ブランはルトのそばを片時も離れることがなかった。
ご飯をルトとともに食べ、読書の時間も狩りに行かずに、ずっとルトの膝の上にいる。
寝る時も、ルトの用意した寝床ではなく、ルトの枕元で丸くなって同じ布団で眠った。
ブランがルトを見つめる眼差しには、不安と心配があった。
ルトがいつものように進まない読書を終え、寝ようと布団をめくると、ルトの布団に大の字で寝転がるブランがいる。
ルトは、つい、笑ってしまった。
ルトが笑ったのはいつぶりであろうか。
確か、ラウラが死んでしまった日、ラウラを起こしに行く途中が最後だったはずだ。
思い出したルトの頬を水が一滴つたっていった。
「え?」
ルトの目から涙がとめどなく溢れてくる。
「どうして?」
その場にしゃがみこんだルトは、しゃっくりを上げながら泣き出した。ブランは、ルトの膝の上に行き、ルトの涙を舐めた。
涙の止まらないルトは一晩中泣き続けた。
ラウラとの思い出話をブランに聞かせては泣き、泣いては、思い出を語った。
ルトが目を覚ますと朝だった。涙は止まっていた。
「頭痛い、、、」
一晩中泣き続けたルトの目は真っ赤に腫れていた。
『キュイ』
鳴き声のする方を見ると、タオルを咥えたブランがこっちへ歩いてくる。
『キュイキュイ』
ブランは魔法を使って冷やしたタオルを問答無用でルトの顔の上にのせた。
「ちょっと!」
タオルを退けようとしたルトには、安心したように穏やかなブランが見えた。
心配をかけていた自覚のあるルトは、反抗するのをやめ、おとなしく、顔の上にタオルをのせたのだった。
「、、、ねぇ、ブラン、、、、」
『キュイ?』
「ブランは、ずっと一緒にいてくれるよね。
、、、私を一人にしないでね、、、、」
何を当たり前なことをとでも言うように、一度首を傾げたブランは、自信満々に一声鳴いた。
『キュイ!』
「あのね、後で、一度湖に帰ってみようかと思うんだ、、、ラウラに言われたのもそうだけど、気になるし、、、、、、
今すぐにじゃなくって、ここの本をもっと読んで、ラウラみたいにいろんな知識を得たら、、、
時間はかかるかもしれないけど、もっといろんなことを知りたいの。」
ブランは、返事をせずにルトを見つめる。
「、、、ダメ、、、かな?」
『キュイキューイ』
「ありがとう!わがままだけど、付き合ってね!」
『キュイ!』
任せろとばかりにブランは胸を張った。
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