第7話
ラウラとルトが出会ってから何年も月日が流れたある日、ルトを違和感が襲った。何かがいつもと違う。しかし、ルトには、何がいつもと違うのかわからなかった。
首を傾げつつも、いつもどおりの生活を送りはじめる。
調理をし、ご飯を食べる頃には、その違和感が単なる勘違いであろうと思いはじめた。
しかし、本を読み終わると、いつもより静かだった。いつも、ピーチクパーチク喚くラウラが、今日は一言も喋っていない。いつも、ブランと追いかけっこしているラウラが今日は飛んでいるとこを見ていない。
確実におかしかった。
不安になったルトは、ラウラの様子を見に行くことにした。よくよく考えてみると、最近のラウラはなんだか元気がなかったような気がする。
今日のように、一切姿を見せないなんてことはなかったけれど、ブランとの追いかけっこではすぐに捕まるし、ご飯を食べる量も少ない、ブランでさえも、少し気遣っていたような気もする。
風邪でも引いたのか。
ラウラが風邪で寝込んだところなんて見たことがない。そう考えてから、ルトは、ラウラなら、風邪で寝込んでいても賑やかだろうなと思い、ふふふっと笑ってしまった。
ラウラの寝床に、ラウラはいない。
不思議に思ったルトの耳に、ブランの『キュイキュイ』という焦ったような鳴き声が聞こえた。
慌ててそっちへ行ってみると、ブランの横に、床にへたり込んだラウラがいる。
ラウラに意識はなかった。
ルトは、初めてあった時のように、ラウラを手の上に乗せると寝床へ運ぶ。《治って》いつものように唱えるが、ラウラが目を覚ます気配はない。
「おかしいわね。《治れ》」
何度もルトが何度唱えてもラウラが目を覚まさない。
「なんで?どうして!
《治れ》《治って》ねぇ、《治って》ってば!」
『うるさいわね、、もう少し静かに出来ないの?、、、、、』
「ラウラ!」
『全く、、、、いつまでたっても、、、この子は、、、、、、』
「もう!心配かけないでよね!ラウラが死んじゃうんじゃないかって!そしたら、どうしようって!」
いつも冷静で、あまり感情が言葉にのらないルトとは思えないほど、力がこもっていた。
『ふふふ?、、、ごめんね、、、、でも、許して、、、流石に、あたしにも勝てないものはあるのよ、、、』
「は?どういう、、」
『ルト、、、、あなたが、、、ここにきてから、、どれだけ時間が経ったかしら、、、?鳥の寿命ってね?、、、、、そんなに長くはないのよ、、、、』
「何、、、言ってるの?」
『そのまんまよ、、あなたと出会ってからのじかんは、最高に楽しかったわ!
少し不服だけど、、、ブランもね?、、
、、こんなに誰かと過ごすのは、初めてだった、、、、
一緒にいてくれて、、、ありがとう、、、』
「なんで、最後みたいなこと言ってるのよ!《治れ》《治りなさい》《治って》って言ってるでしょう!どうして治らないの!」
『どこかが悪いわけじゃないからね、、、、ルト、よく聞いて?
あたしが死んでしまったら、
一度あの、湖におかえりなさい。
別にまたここへ来ても構わないし、好きなようにして構わないから、、、、、、、
一度仲間の元へかえりなさい、、、。
わかったわね?』
「、、、、、、」
『ルト、返事は?』
「、、、、、、」
『はぁ、最後まで困った子ね?
ブラン?ルトのことよろしくね?」
『キュイ、、』
ラウラは、返事を返さないルトに苦笑してしまった。
『あなたたちと、もう少し生きてみたかったわ、、、、ふふふ?』
ラウラはゆっくりとまぶたを落としていった。目を開けることはない。
ルトは胸の中に渦巻くものがなんなのかわからなかった。ただ、ラウラがもういないという現実だけが目の前にあった。この現実を受け入れたくない。
ルトは、呆然と座り込むことしかできなかった。
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