第4話

ある日、ルトが本を読んでいると、


【人間は身長が伸びる。他の動物も幼生の時から、成体になる時に体長は大きくなる。しかし、稀に、成体で生まれてくるものもいる。】


という記述を見つけた。


 自分の種族はどうであったであろうか?

妖精である自分たちは、少女の姿で生まれ、そのままの姿で死ぬまで暮らしていく。そうすると、ここでいう、稀な生物に当たるのかもしれない。

 しかし、そうすると、自分は何なのであろう。


 年をとることで、大きくなるというならば、自分は他の妖精よりも大人ということか?


 しかし、他の妖精で自分のような大きさの子はいなかった。もっと言えば、妖精たちを比べても、その大きさに違いはなかった。


 ルトは、自分がなんなのかわからなくなってしまった。



 その日一日、ルトはどこか上の空であった。掃除をしては水を入れた壺をひっくり返し、本棚にぶつかり、下においてある本につまずいて転び、ラウラを踏みそうになった。挙句、食事を作る時には、ラウラを材料にしてしまいそうになったのである。


 ラウラは命の危機を感じるとともに、ルトの様子がおかしなことに気づかざる得なかった。



『ルト!何があったのよ!ほんとに!

今日一日、ボーーーーーっっっとしちゃって!何回、あたしが死にそうになったか!

ただただ、考え事をしたいなら、放っておくところだけど、ルトがそんなんじゃ、こっちもいろいろ困るのよ!


さっさと全部吐き出しちゃいなさい!

あたしでどうにかなることなら、解決してあげるから!!』


 流石に、ラウラを料理しようとしてしまったことを申し訳ないと思ったルトは、いろいろ思うところはあったが、ラウラに思ったことを言ってみることにした。



 話を聞いたラウラは、返事に困ってしまった。自分が今まで読んできた本にも、ルトのような事例は書かれておらず、ルトの正体は、ラウラにもわからなかったのだ。

 初めてルトにあった時、ラウラも同じ疑問を持っていた。ここで取り繕っても仕方ないと、


『ルトの正体はね、正直あたしにもわからないわ!今まで読んできた本で、ルトのような話は出てこなかったの!

でも、いろいろ考えることはできるわ?

ルトが、その前例として、答えを出すのはどうかしら?

例えば、妖精も背が伸びるのか?とかね?


こっちにいらっしゃい!!

壁に背をつけて?』


ガリガリガリ、、、


『よし!これでいいわ!

ルトの今日の身長は、ここよ!

毎日測ればいいのよ!ルトが妖精であることは間違いないんだから、ルトは妖精の代表ね!

もしかしたら、妖精は成長が遅い種族なだけかもしれないじゃない!ルトが、他の子よりちょっと成長が早いのかも!

ほらここ!

【成長には、個人差がある。】

ってちゃんと書いてあるわ?

だから、そんなに深く考えすぎないの!

もう少し、情報が集まってから、一緒に考察しましょう?

ね??』


ルトは、ラウラが必死に慰めてくれていることに気づいた。ラウラは、答えがわからないながらも、ルトの葛藤を消化させようとしてくれている。なんだか、ラウラのその気持ちが、暖かかった。


 それに、ラウラが言うことも一理あると思った。考えることは大切だか、答えのわからないことを延々と考えていたってどうしようもない。だったら、まず、行動して少しでも答えに近づくべきだと思った。


 それから、自分の身長を壁で計測することがルトの日課に加わった。



 後々、このおかげで、ルトは自分の変化に気づいていくことになる。

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