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私がこの街を守ることになってもうすぐ二年になる。
その発端は、私を育ててくれた人がそういう仕事をしていたから。ただそれだけ。育ててくれた恩を返したくて、私は自らこの仕事に足を踏み入れた。
父として私を育ててくれた人とは、遺伝子的に何の関係もない。身寄りのない私を、彼は本当の父のように育ててくれた。笑い、泣き、怒られ、抱き締められて、愛情を持って育ててくれた。私はそんな父に感謝を返したくて、危険を承知でこの組織の一員になった。
仕事内容は危険といつも隣り合わせ。新聞に取り上げられるような凶悪事件から、新聞にも取り上げられないような秘密裏の事件まで。爆弾処理なんてお手の物。立てこもり犯の動向から、暗殺者をスナイプまで。星の瞳を持つ私にしか出来ない仕事。
今の所属している組織には“星の瞳”を持つのは私だけ。ウェンディが持つ“風の息吹”はもう一人持っているらしい。
これらの特殊能力はこの組織に入った時に手術をして手に入れたもの。私に適合したのが星の瞳だったのだ。
星の瞳は視覚の能力。主に透視を得意とする。だから爆弾処理の場面では私が呼び出されることが多い。
この仕事は嫌いじゃない。仕事をこなす度、成果をあげる度、ボスに褒められる度、彼が喜んでくれるから。頑張ったと髪が乱れるくらい頭を撫でてくれるから。だから私はこの薄汚れた世界を守ろうと決めたのだ。
魔法少女のような服を着て、可愛らしく髪も整えて、相方の力を借りて空を駆け、この世の悪を成敗する。それが私にできる唯一のことだから。
「ほら、帰ろう? もうこんな時間よ」
こんな時間と言われても、なんて思ってしまう。だってこの街は眠らない。時計がないと時間なんて分からないから。
「うん、そうだね、帰ろう」
にこりと微笑み返す。彼女は安心したように笑った。
「ほら、急がないとボスに怒られちゃうわよ」
「怒ってないよ、心配してるだけだよ」
「でも顔が怖いんだもん~」
彼女が出した右手に手を乗せ、ふわりと風に乗る。短いスカートが捲り上がる。気持ち手を添えて広がりを押さえるが、ビルとビルの間を飛ぶ少女二人に気付く人など居はしない。だから見えていようがいまいが気にしない。
そのまま基地まで夜空を駆けた。
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