駆ける少女

カゲトモ

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 風が頬をなぞって行く。穏やかなように見えて、その実ただねっとりとしているだけのように思える。そんな風。ビルの下を走る無数の車のテールランプ、所狭しと並ぶビルのネオンサイン、煌々と光る街灯。そんなものが混じって、なんだか空気を吸いたくなくてぐっと息を止めてしまう。

 見下ろした街は、私には薄汚く見えた。

「ステラ」

 背後の闇から凛と通る声が聞こえた。振り返ると微笑みを浮かべた彼女がこちらに向かって歩いている。

「ウェンディ」

 相方の彼女の名前を呼ぶと、ふわりとスカートを揺らし風に乗って地球の重力を無視した移動方法で隣に着地した。

「何を見ていたの?」

 私の金色の髪、それから彼女の白に近い色素の薄い髪がふわふわと揺れる。彼女はビルの屋上の片隅、一歩でも踏み出そうものなら固いコンクリートの上に真っ逆さまに落ちてしまうような場所に私と肩を並べている。

「・・・街、だよ」

 少し考えてから口にした。

「大切な、守るべき街」

――守らなくてはいけない、街。

「そう」

 彼女は返事を返すと、その薄い唇を閉じた。

 沈黙が二人を包む。相変わらず下の世界は煩いけれど。

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