第5話 青
暑い。雲ひとつない青空が頭上に広がっている。新潟は一年を通して曇り空が多く、こんなに青い空を見るのは久しぶりだった。陽がじりじりと照りつける。肌が焦げていくような気がした。太陽とは、こんなに暑いものだったのか。
澄んだ青空を見上げる。青という色が好きだ。なぜ自分はこんなに「青」に惹かれるのだろう。額に滲む汗をハンカチで拭い、青空を見つめながらふと考える。
青という色には、汚れがなく透き通ったイメージがある。清らなり。古語で言えばこの言葉が当てはまるのかもしれない。美しさを表す最上級表現。その中でも、「清らなり」は、源氏物語にも見られるように「汚いものが一切ない」美しさを表す際に用いる。ある意味で、美しさ以外を受け付けない、排他的な色だ。
青は「若さ」を象徴する言葉でもある。理想ばかり高く、経験が伴っていない。傲慢な若者のイメージ。傲慢は若者の特権だ。どこまでも高く理想を抱き、大人に立ち向かう。その傲慢さを大人は嘲笑う。しかし、どの時代においても、大人たちが若者の主張に圧倒される瞬間がある。安保闘争における学生運動。多くの若者が思想を共有し、ともに大人と戦った。あの時、まさに若者は大人の首筋に噛みついたのだ。青さとは、そういった力を秘めている。
青は、僕らの色だ。若者が大人に突きつけた独立宣言。その国旗は、きっと青一色で染め上げられる。愚かしいまでの潔癖。傲慢な理想。大人との戦いという過程を経て、そして僕らも大人になっていく。僕らの青は、社会の色に染まっていく。美しくもあるが、いつ他の色に染まるかもしれない儚い色。そんな青だから、僕は好きなのだ。
僕らは声を上げているだろうか。一度、自分に問うてみよう。僕らより少し先に生まれたという、ただそれだけの理由で威張るアイツらの寝首をかきたくはないか。達観したように笑うあの顔面に、一発お見舞いしてやりたくはないか。
若者は過激なくらいが丁度いい。そして、若者の滾る情熱を受け止める責任が、大人にはあるだろう。どの時代も、そうやって歴史は動いてきたはずだ。若者の反逆を大人たちが受け止め、そしてねじ伏せる。こうして若者は大人になり、次の世代の若者の反逆に向き合う。青の国旗を次の世代に託していく。こうして、若者の意志が直接的ではないにせよ、社会に何かしらの影響を残していくことになる。この過程が何よりも重要なのだ。
最近、若者と大人が没交渉になってはいないか。受け継がれた青の国旗が、今にも破れそうになっている。僕らはもっと社会に求めるべきだ。主張をすべきだ。
歴史は、僕らの「青」で回っているのだから。
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