第6話 加奈子

私が目覚めた時にはりょーじ先輩はいなかった。もう、下校時刻だと保険医の先生に起こされて私は鞄をとりに教室まで行った。

教室に香織がいた。

いや、もう1人?誰?西日が邪魔をして影でしっかりとは見えないでいる。

髪が長い人。

かおかお!_と、口から出そうと思った声をグッと押さえ込んだ。ここで声をかけたら一生話せなくなるようなそんな気がした。

教室に入れないで、そっと扉に隠れた。


「…………………………」

小さいわけじゃない教室の声は聞き取れない。わたし、何してんだろ。

香織は何をしてるんだろう。

それは誰?私を無視して誰といるの?

チラッとみた教室には香織の姿は見えなくなっていた。 いや、正確には見えにくくなっていた。


跪いて、その人の足を

香織が舐めていたからだ。


「⁉︎」


身震いがした。何が起こっているのかわたしにはわからないからじゃなくて、香織?わたしのクールな香織はどこに行ったの?

ツゥッと頬に涙が垂れて制服のセーラー服の襟を湿らしていく。わたしは、ここにいるべきではない。

何処にもいたくない。


鞄のことは忘れてその場を立ち去っていった。


鞄はなかったんだ。

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喰い改めます。 こばん @kobansama

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