第4話 的場 香織2

私のボタンのかけ間違えはどうも取り戻せないらしい。

1日にして親友と先輩を失った。いや、先輩はもともと関わり自体があまりなかったけど。

あれから加奈子を無視するしかない日々がつづき一週間、周りも加奈子も不審がっている。


理科準備室に駆け込んだ私は部屋の隅にあった机のしたで息を整えていて「アレ」を聞いてしまった。

倉田先輩と言い…。

しかし、残念ながら私には相談すべき友達もいなければこんなことネットなどで相談することもできない。手詰まりだった。

すごすごと一週間後の図書委員にはいかなければならなかった。

勿論まっていたのは

「こないかと思った。」

倉田先輩だ。 頬杖をついてにこやかに手をヒラヒラとふる先輩に私は諦めて隣に座ることにした。

「私は先輩に興味はありません。」

「うん、知ってる。」

「レズでもありません。」

「うん、知ってる。」

「何でも、知ってるんですね。」

「ええ。」

顔は見ないよう図書委員の出席名簿に名前を書きながら、それでも先輩は続けた。

「的場 香織さん。 あだ名はかおかお、趣味はなし、A型七夕生まれの身長167センチ。好きな本は赤毛かのアン、友達のお名前は加奈子ちゃん。」

…先輩は私に本当に興味があるようだ。欠陥品に?何故?加奈子もだ。

「…ずるいです。なんでみんな誰かに興味がもてるんですか?私はそんなちっともわからないのに、あなた達はいとも簡単に人を受け入れてしまう。」

2人きりの図書委員、誰もいない部屋にわたしの少し荒げた声が消えていった。

倉田先輩は私の手をとり、私も倉田先輩の顔をはじめてちゃんと見た。

「そう、辛かったのね。」

栓を抜いたように、私は先輩に抱きつきわんわん子供のように泣いた。こんなこと誰かに言ったのははじめてだったから。

泣き止むまで背中を撫でてくれた先輩は、泣き止むと私をしっかり見てこう言った。

「香織ちゃん、私があなたを助けてあげる。」

助ける?

「あなたが人に興味を持てないなんてそんなことはないわ、あなたはずっと蓋をしているだけ。今みたいに全部曝け出してしまいなさい、私が何でも聞いてあげるから。」

「私が人と恋愛や友情を育めると私は思えません。」

「そんなことないわ!今のように泣いたりできるあなたはきっと今まで色々我慢してきたのよ。だから私が貴方のお友達になるわ。」

友達…。先輩が?

「あの…。」

「いきなり言ってこの間は困惑させてごめんなさい。だから罪償いだと思って私を姉だと、友達だと思って。私は貴方がそんな欠陥品じゃないって証明できるわ。」


先輩の目は恐ろしいほど綺麗で、見とれているうちに私は首を縦にふった。

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