第一章 第二話 このままで
北暦1999.2.27
「おかぁさん! 風船が!」
「あら…これだけ高いと届かなそうね…。」
公園を散歩していると子供が泣いている。そして上を見てみると風船が木に引っ掛かっていた。その様子を見て私たちは一斉にルヴェーナを見る。
「なっ、俺かよ!」
「うん、私はお年寄りの介護したしフェンはひったくり捕まえたでしょ。」
「そんでセリカが怪我人の治療、フェンが麻薬組織を取っ捕まえたし。」
「貴方の番ですよ。せっかくですし行ってみたらどうでしょうか?」
「任務。」
私たちがルヴェーナを押す。解せないといった表情で私たちを見ている。
「俺、こういうの得意じゃないんだよなぁ…。別の意味で。ったく…。」
ルヴェーナは渋々もゆっくりと木へと近づく。そして風船だけ重くする魔法を使って風船を下ろす。
「ほらよ、ガキんちょ。」
「わぁっ! ありがとう! おねぇちゃん!」
ルヴェーナは照れ隠ししながらも風船を子供に渡していた。
「すみません本当に。」
「い、いやぁ…。」
「ひっ!」
ルヴェーナはぎこちない笑顔を見せると親らしき人がゾッとした表情を見せた。ルヴェーナの笑顔っていうのが他の人から見れば怖いからかな…。失敗したかな?
「おねぇちゃんの笑顔、かっこいい!」
「こらっ、し、失礼いたしました。」
子供は笑顔で手を振っているが親が子を引っ張るように去っていく。ルヴェーナは少々ぽかーんとしていた。
「大丈夫?」
「いや、ああいうガキんちょもいるんだなって。」
ルヴェーナは少し笑いながら私を見る。送り込んだのは正解だったかもしれない。
「そうだアリア、お前誕生日祝いしてなかったよな。」
「えっ、何で急に? しかもすごい今さら感。」
フェンが唐突に私に話しかけてくる。
「そうね、色々と忙しかったし、今なら落ち着いてきたのでからベストタイミングですね。それではアリアさんの好きなところ行きましょう!」
「賛成。」
皆がセリカの意見に賛成している。本当に仲間思いな人たちだ。
「それじゃあ、ケーキ食べに行こう! ここの近くになにか紹介されていたお店があるし!」
「おっけ! それじゃあそこまで競争するか?」
「おっ、腕なるじゃん!」
「周りに迷惑は絶対かけないでね。」
何故かケーキの店まで競争することになってしまった。まあ、でもこれが私達らしさと言えばいいかな。
「やるからには負けない。」
「エヌも乗り気なのね。珍しいわね。」
私たちは一斉に走る準備をする。周りにはあまり人はいない。後は地面を傷つけないようにいかないと。
「それじゃああのハトが飛んだらスタートで。」
「あ、飛んだ。」
フェンがルールを決めたとたんにエヌがハトが飛んだことを確認する。
「あっ。」
私達は一瞬同じ声をあげて固まった。そして遅れて皆同時にスタートする。
「お先失礼。」
セリカが魔法を使って勢いよく飛び出していく。ま、魔法使うのもアリなのですかい!?
「あっ、エヌお前も!」
フェンの声を頼りに上を見るとエヌが空砲を使った銃で飛んでいる、これ、何がなんでも負けたくない。
「そんじゃ俺も行くか!」
「アリア、遅れるんじゃないぜ!」
「わかってる!」
私たちは持っている能力を最大限使って目的地へと思いきり飛んでいく。この地形を最大限生かして勝たなければ!
「あー、奢りとか辛い。」
「仕方ないじゃない、ビリだったから。」
私達はカフェのテラス席でケーキを食べている。フェンがビリで到着したので私達はフェンに奢ってもらうことになった。このケーキ、めちゃくちゃ美味しい。
「人のお金で食べるケーキって最高だな。」
「ルヴェーナ、その言葉覚えておけよ。」
「エヌ、口にクリームついてるわよ。」
「すまん。」
楽しく会話しながらケーキを食べている。周りの人たちも楽しそうに会話しながらカフェを満喫している。こんな日々がずっと続いてくれると一番嬉しい…。
「今日は最高の誕生日祝いだよ。ありがとうね。」
私の声に皆が笑顔になってくれる。誕生日からは日程が離れてしまったけど…それだとしても最高の日なのは変わらない。この楽しい気持ちがずっと続いて欲しい。
『セーブ』
私はこの気持ちを忘れないためにセーブした。楽しい日々が続くようにと…。
ドーーン!!
「キャーー!!」
突然爆音と同時に左側の建物の奥から黒煙が舞い上がった。ここから1キロほど先の場所で爆発、何があったのか。
「アリア、セーブ能力は?」
エヌが冷静に私に問いかけてくる。私はその場でセーブしたことを察して首を振る。
「ルヴェーナ、重力で飛ぶ準備お願いできる?」
「おうよ、まかせろ!」
セリカの声にルヴェーナが楽しそうな表情を見せて能力を発動し始める。
「みなさん! ここからは離れて逃げてください! 向こうでの状況を見てきます!」
私は一般人に声をかけて逃げるように指示をだす。そしてルヴェーナの魔法に対して私達は体勢を整える。
「セリカ、私達の勢いを加速することはできるか?」
「出来るわ。」
フェンの案に私達はうなづく。そして思い切り上へと飛ぶ。
「っしゃああ! いくぜぇ!」
ルヴェーナが大きな声で叫ぶ。それと同時に私達は空中を蹴り、黒煙へと一直線で飛んでいく。そして落下地点を見ると一人の一般人が銃を持ったグループにつかまっている。この距離なら…!
「エヌ、援護お願い。ルヴェーナ、そこに飛ばして。」
「了解。」
「いっちまいなぁ!」
私はルヴェーナによって方向を一気に変える。そして囲んでいる人たちに向かって剣を構える。
「何だ!?」
敵が驚いている瞬間に私は剣で人質へと構えている銃を切り、人質を抱きかかえて地面へと着地する。人質を囲んでいた敵はエヌが全て打ち抜いていた。
「ったく、無理な着地するもんだな。アリアは。」
フェンが私の隣に降りてくる。それと同時にほかの仲間たちも私の周りにやってくる。
「お、おい…あれって。」
「まってたぜ…。」
私達がやってきたことに驚いている一般人と私達を待っていたかのような敵たち。一体目的は何なのだろうか。何だったとしても私達は、この人たちを守る。
「いこう、皆。」
HEROINE @RickaHotaru
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