第4話 生還
「で、結局どうすんだよこのガキは。」
「ガキとか言うな!この子は私が育てる!」
「私が育てるぅ?お前みたいな暴力女が育てられるわけないだろ!」
「あ?誰が暴力女だ!ねえ、クレンも私のこと暴力女だと思う?」
「まあまあカクもロメリアも落ち着きなよ。ほら、サルビアも本読んでないで二人を止めてよ。」
カクと呼ばれる大男のカクタスと女性のロメリアの喧嘩をなだめる男性のクレン。そして我関せずで読書をしている眼鏡をかけている男性のサルビア。
「ほら、落ち着かないと子どもが起きちゃうよ!」
現在子どもはロメリアの膝の上で眠っている。ロメリアが頑としてこの子どもを離さなかったからここにいる。
クレンがそういうと二人は落ち着いたのか黙って座っている。
現在は任務の帰り道で馬車に乗って本部まで帰っている。
「でも、本当に育てるの?親御さんとか探した方がいいと思うけど…」
「それはもちろん探すよ!だけど、この子この齢でこの髪色ってことはさ…。」
クレンの素直な疑問に雪奈も返す。
基本的には魔法が使える人類は自分に最も才がある魔法によって髪色が決まって産まれてくる。
髪の色が濃ゆいほど、その才能にあふれている。というのが一般常識である。
そしてこの少年の髪色はというと、
「恐ろしいほどに真っ黄色だね。この齢で髪を染めてるわけもないだろうし。こんな真っ黄色だとおそらくあの村の子どもだろうね。数か月前に子どもの捜索依頼もあったはずだし…。」
そういう推測をたてるサルビアに周りのみんなも黙ってしまう。
少年の住んでいた村は
その村から数か月前に子どもがいなくなったから探してくれという依頼があったことは記憶に新しい。
そしてその村は一か月ほど前に壊滅した。それも一日もたたずに…。
クレンたちも任務でその場で駆け付けたが、すでにその村があった場所は地獄と化していた。
村の痕跡を見るに近年再び活発化してきた魔族の仕業だろう。
「じゃあ、これからずっと一人で生きていかなきゃいけないじゃない!そんな思いをさせるなら私が育てるって言ってんの。」
「だからお前が育てんのが間違ってんだよ。お前もまだ16歳でガキなんだよ。ガキがガキ育てられるか!施設に預けるとか方法は他にもあるだろ。」
「ガキガキいうな。お前だってまだ18歳のくせに。」
ロメリアとカクタスの喧嘩が始まり再び馬車内が騒がしくなる。
「もう二人とも黙りなよ。結局のところその子の意思なんだからさ。聞いてみればいいじゃん。」
そういってクレンが顎で指した先には目が覚めた少年が不安そうにあたりを見渡していた。
「ここ、どこ?あなたたちは誰?悪い人?」
少年は警戒心満々で尋ねてくる。当然だ。あんな施設にいたのだから警戒を嫌でもする。
「私たちは悪い人じゃないよ。あなたを助けたの。少しおしゃべりしましょ。あなたのことなんて呼んだらいいかな?名前とか教えてくれない?」
「えっと……。 チカ。」
一気に話しかけるロメリアに若干押されながらも答える少年のチカ。
「そっか。チカくんっていうんだ。可愛い!」
そう言ってその16歳にしてはあまりにも豊満な胸に抱きよせるロメリア。
「こら、ロメリアやめなさい。チカ君が困ってるだろ。」
クレンがすぐさま助けに入る。
「チカ君、これからの話なんだけど君はどうしたい?僕たちと一緒に来るか、それとも児童施設に入るか。」
「どういうこと?お父さんとお母さんのところには帰れないの?」
クレンが尋ねると即答でチカが尋ね返してくる。
「お父さんとお母さんの居場所は今探しているんだけど時間がかかりそうなんだ。それまで君がどうしたいかなんだけど…。」
これまで辛い目にあってきた子どもに追い打ちをかけるように親御さんの死を伝えるべきではないと判断したクレンはとっさに嘘をついた。
「あなたたちは何をしている人たちなの?」
確かに何をしているのかわからない人のところに行くというのは怖いだろう。
「俺たちはギルドってところで依頼を受けている。簡単に言うと困っている人を助けるスーパーマンだな!」
「ギルド?」
そう偉そうに言うカクタスに対してまだ分からなそうにしているチカ。
「言ってもわからんだろう。実際に目で見て感じてみたらいい。もう着いたぞ」
そうサルビアが言うと、馬車が止まった。そしてカクタス、サルビア、クレン、ロメリアの順に降り、最後にロメリアが手伝ってあげてチカが降りる。
そこは三階建ての建物だった。
ただ大きいだけではなく底知れない迫力をチカは感じた。
そんな圧倒されているチカに向かってロメリアは笑みを浮かべて言う。
「ようこそ私たちのギルド、自由の泉へ!」|
生き延びた意味を探して ニスタケ @kentyan
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