ハレンチって言葉は言い方によってはなんかやばい。

「うまっ! レアチーズケーキは作ったことあったけどベイクドチーズケーキは初めて作った。初めてなのに美味すぎ……」

独り言のように聞こえる俺の感想。

隣で食べている美玲は。

「ん〜! おいひい! 上手に作れてよかった!」

喜んでもらえてよかった。

時間はまだ3時なのでもう一品作ろうかなぁ。

なんて考えていると、美玲がこんなことを言い出した。

「慎一……。食べたら眠くなってきた……」

目がとろーんとしている。

これは寝かせるべきだなぁ。

いや、でもなんか良くない気がする。

でも仕方ないよな。

自問自答をしてから俺はこう言った。

「美玲、俺のベッドで寝てこい。寝てる間にもう一品作ってるから」

「慎一、ありがと。おやすみ〜」

彼女はふらふらした足取りで、俺の部屋に向かった。


よーし、材料がかなり余ってるし、2品目を作ろっと。

ん……。

なんかスマホに通知が来た。

親からのメールでこんなことを言われた。


「今日から1週間、大沢さんたちと旅行に行きます! それで、お願いがあるんだけど、美玲ちゃんを家に泊めてあげて? 美玲ちゃんね、家に鍵を忘れちゃったの。だから1週間は家に入れないのよ。だからお願いね」


いやいや、美玲の両親はいいのか?

俺の家に泊めるってことは、年頃の男女を二人っきりにするってことだぞ……。

まあ、母さんから言われたってことは、母さんが伝えるように言われたんだろうけど……。

まあ、信用をなくすようなことをしなければいいんだもんな。

よし、泊めてやろう。

いや、冷静になれ。

岡川慎一。

年頃の男女が一つ屋根の下で、1週間も暮らすんだぞ?

ハレン……。

「ハレンチです! 」

誰かが俺の心中を代弁してくれた。

いや、お前誰だよ。

美玲の声ではない。

でも、聞き覚えのある女の子の声。

誰だ……。

「ハレンチですよ、兄様! 」

……へ?

兄様?

一体誰のことだ……。

いや、まず彼女は何に対してハレンチだと言っているんだ。

考えれば考えるほど分からなくなる。

いや、今のは大げさすぎた。

そんなに考えてなかった。

「兄様、この本は何ですか。表紙の娘がハレンチな格好をしています」

ロリっ子みたいな高くて可愛い声の主の方を向いてみた。

そこに居たのは、ロリっ子ではなくて姉の姿があった。

俺の実の姉である、岡川もかがいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る