第百六十五話◆本当の転移理由
――エルミリア城内―応接室。
「連れて参りました!」ガチャリと扉が開けられ、エルミリア城の応接室へ通される好矢たち。
既に応接室にいたのは四天王レディアと従者サミュエル。
サミュエルの方はスッと立ち上がり、頭を下げてくる。
「お久しぶりです!トール・ヨシュア先輩!!」
その光景を見て、ビリーの目が点になる……とてつもない魔力を秘めた尊敬する俺の上官が……ペコペコ頭を下げている……!?
「キミがトール・ヨシュアね……そして、オルテガ・レイラッハ……」
「久しぶりだな、レディア・ガラガス」
「……レディア、元気そうだな」そう言ったのはレオ。
「貴方たちもね、レオ」
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応接室には、四天王レディア、従者サミュエル、ビリー、そして城の上級兵二人。二人がけのソファに座っているのはレディアとサミュエルだ。
そしてこちら側には、皺月の輝きと怪光一閃が全員集まっており、二人がけのソファには好矢とソフィナが座っていた。それぞれの代表としてだ。
「まずは自己紹介を……初めまして。俺は刀利好矢といいます。よろしく」
「えぇ、よろしく。トール・ヨシュア……サミュエルをここまでの強さを持つようになるまで育ててくれた事、心から感謝するわ」
「育てた……?」
「私のサミュエルがよく言うの。僕はトール・ヨシュアさんに教わって、あの人の背中を追い掛けてるんです……って」
「そ、そうなんですか」嬉しく、そして照れくさくなる好矢。
「……さて、そちらはソフィナね?」
「あぁ。私達は好矢く……こちらの皺月の輝きとは別のハンターチーム、怪光一閃です」
「たまに聞くわ。貴方たちのチーム名も、活躍も…ね。……それじゃあ、そろそろ本題に入りましょうか?」そういうレディア。
「……その前に、よく俺たちがアグスティナ魔帝国へ向かっていると分かったな?」サミュエルに話し掛ける好矢。
「バハムート事件のニュースで皺月の輝きは有名になりましたから……それに事故に遭った船はアグスティナ行の船です。その船に先輩たちが乗っていたということは、元々アグスティナ魔帝国へ来る予定だったんだと分かりました」
「ただのニュース記事ではほとんど情報がないのに……見事に情報を集めて推察したのね……」アウロラは関心する。
「皺月の輝き、及び怪光一閃……両チームは魔女帝エルミリア様に謁見を申し込んできた。謁見理由は何だ?」レディアは聞く。
「俺の場合は……エルミリアに一つ頼み事があるんだ」好矢がそう言うと応接室にいたビリーと上級兵士が動き出した。
「貴様ァッ!不敬なるぞ!!」剣を抜く兵士二人。好矢たちに手を向けるビリー。
「…黙りなさい!」レディアがピシャリとそういうと、兵士二人の剣はパァンという音を立てて真っ二つに割れた!
その光景に驚き、詠唱をやめるビリー。サミュエルを見ると、彼はビリーを睨みながら首を横に振る。それで察したビリーは会釈をして下がった。
「「お、お許しを!レディア様!」」剣を折られた上級兵は二人揃ってそう言った。
そんな上級兵をチラッと見てから話し始めるレディア。
「……トール・ヨシュアの謁見目的に関しては…エルミリア様は許可することだろう。怪光一閃の謁見理由を申してみなさい」
「私達は、邪悪なる者についての話をさせていただこうかと……」
「……なるほど、何の話をするかは別として、お前たちはエルミリア様に信用されていない。私が同行することで許可は得られる可能性がある」
「それなら、それでお願いします」ソフィナはそう言った。
「分かった、しばらくここで待ちなさい」レディアはそう言うと、サミュエルはビリーに指示を出した。
「ビリー、エルミリア様にこの件の報告を。なるべく謁見出来るように計らうこと」
「はっ!」
そういうとビリーは素早く応接室から出て玉座の間へ向かった。
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――エルミリア城―玉座の間。
「――との事でございます」
「そう、分かったわ。……では皺月の輝きのトール・ヨシュア、オルテガ・レイラッハ……怪光一閃のソフィナ・ヨエルと同行者一名にレディアをここへ呼んで参れ」
「はっ!失礼致します!」ビリーは敬礼をして玉座の間を出て行く。
………………
「……で?話って何かしら?ヨシュア?」エルミリアは玉座に座って足を組み、頬杖をつきながら聞いてくる。
「俺たち皺月の輝きは七代目魔王ガルイラの指示で出来たハンターチームであることは知っていると思うが……」
そこまで言うと、エルミリアは手で制して話を遮って言った。
「悪しき者の話をしたいの?」
「あぁ、そ――」あぁ、そうだ。と言い掛けたところで、再びエルミリアからもう一つ聞かれた。
「それとも……邪悪なる者のこと?」
「……えっ?」
「えっ……悪しき者と邪悪なる者って一緒の存在ですよね?」ソフィナも驚き声を出す。
「概念としては一緒だけど……貴方と私を別の人間だというのなら、悪しき者と邪悪なる者は別人よ」
「なッ……!?」
「知らないのも無理はないわね……この世界の人間でも私くらいしか知らないだろうね……それで、どっちを退治したいの?」
「……両方です」
「それなら協力は断らせてもらうわ」
「……ん?どちらか片方なら協力してくれるのか?」
「あぁ、邪悪なる者を倒すというのなら、協力しないこともないわ」予想外な事を言い出すエルミリア。
「……どういうつもりだ……?」少し警戒をする好矢。
「悪しき物に関しては……世界を我が物にしようとする存在……私達はそれとは味方している……第六代ガルイラの中に入って操っていたのは悪しき物の方よ」
「では、邪悪なる者は封印されていなかった……?」好矢はそう言うとエルミリアは頷く。
不確定要素であったものの、ガルイラの言葉から忘れようと努力していた事……今それが繋がった。
俺がこの世界へ転移した理由……それは、悪しき者を封印したサラ・キャリヤーが居ないから、俺に邪悪なる者を倒させる為だった…………。
「何か分かったような顔をしているわね……?」エルミリアは好矢の顔を見抜いて言った。
「具体的にはどう違うんだ?」
「邪悪なる者の方とも最初は協力しようとしていたの。理由は悪しき者と同じく世界を分けてくださると言ったから。でも……邪悪なる者の本当の目的はね……」
――ゴクリと誰かの喉が鳴った。
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