第百六十二話◆アウロラの恋愛事情

――ホテルの一室。


「ヨシュアくん、貴方の魔力返すわ」アウロラが声を掛けて来た。


「魔力を返すって??」


「……黙っていたけど、貴方が意識を失っている間、私達全員で貴方の魔力を預かっていたの」


「え?じゃあ俺の魔力って物凄く低い状態なのか?」


「うん……かなり低いと思う」


「へぇ…どのくらいになったんだろう?」


「恐らく……100以下には」


「えっ……そんなはずは無いと思う……」


「どうして?」


「俺が目を覚ました日の夜、満優弐優不空五をやったから……」


「バカじゃないの!?どうしてそんな身体に負担かける真似するのよ!」


「魔力を失ったって気付かなかったからだよ!……中々眠れなくて、睡眠状態に入る為にやったんだ」


「……まぁ、あれは疲れと共に睡魔が襲ってくるものね……確かに魔力について何も言わなかった私達が悪いわ……」


それから皆を呼んでくると言って、アウロラは部屋を出て行った。



しばらくして皆が集まると、仰向けに横になった好矢の胸に手を当てて、一人一人が吸収した分の魔力を返す。


「なぁ、アウロラさん。ヨシュアは魔力が多すぎて動けなくなったんだろ?返しちゃっても良いのかよ?」ロサリオは手を止めて聞く。


「問題ないわ……魔力を少なくしている状態で大分精神力が安定したみたいだし……ハルティート大陸で戦っていた時のヨシュアくん、何だか鬼気迫るというか…何だか変だったでしょ?」


「あぁ……」


「魔力が多すぎて、暴走しかけていた感覚と思ってくれれば良いわ。人は魔力が少ないほど大人しくなっていくでしょ?」


そんな風に話しているのを聞いて、好矢は初めて会った頃のサミュエルを思い出した。かなり気の弱い学生さんだった気がする。

しかし、以前エレンの街でメルヴィンに確認してもらった時は、かなり活発になっていたようだ。魔力による性格の変化は多少はあるのかもしれない。


ちなみに、魔力蓄積症は物凄く珍しい病気なのだがその理由は、魔力を激しく使って、魔力欠乏状態に陥っても無理矢理魔力を絞り出すように使い続けなければなりにくい病気だからだ。

大抵の人は魔力欠乏状態に陥れば、自然とやめることだろう。

因みに魔力欠乏状態でも魔力を無理に使いすぎた場合、成長期の時に身長が急激に伸びると足が痛くなったりするのと同じく、回復した時の反動が大きすぎて倒れてしまうそうだ。

更に、好矢は昔摂取していた精霊の雫の恩恵もあり、魔力が一気に大量に増えてしまい、魔力蓄積症になったようだ。



皆から魔力を返してもらった好矢は身体中から力が漲ってきた。


「俺…こんなに魔力持ってたっけ……?ちょっと見てみたいし、約一年半ぶりに魔導士ギルドへ行かないか…?」


「そうね!」沙羅の言葉を受けて、皆で宿を出てぞろぞろと魔導士ギルドへ向かう。

もちろん、エヴィルチャーも一緒だ。




――魔導士ギルド。

まずは受付へ行ってエヴィルチャーを皺月の輝きの一員として向かい入れる手続きをしてからそれぞれが確認をした。


「魔法モニターオン!」



名前:刀利 好矢 所属:皺月の輝き

職業:放浪魔導士 趣味:草むしり・魔物狩り

魔力:20759

使用可能魔法属性:水・氷・風・雷・土・光・植物・金属

使用不可魔法属性:火・闇

得意魔法属性:植物



名前:刈谷 沙羅 所属:皺月の輝き

職業:エクスナー 趣味:好矢のそばにいること

魔力:3412

使用可能魔法属性:暗黒

使用不可魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・闇・植物・金属

得意魔法属性:暗黒



名前:アウロラ・ベレス 所属:皺月の輝き

職業:魔王軍上等魔導兵 趣味:料理

魔力:9855

使用可能魔法属性:火・氷・雷・土・光・闇・植物・金属

使用不可魔法属性:水・風

得意魔法属性:氷



名前:メルヴィン・バート 所属:皺月の輝き

職業:サヴァール王国第二王子 趣味:読書

魔力:10169

使用可能魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・闇・植物・金属

使用不可魔法属性:なし

得意魔法属性:火



名前:ロサリオ・デイル 所属:皺月の輝き

職業:放浪魔導士 趣味:なし

魔力:8934

使用可能魔法属性:火・氷・風・雷・土・光・闇・金属

使用不可魔法属性:水・植物

得意魔法属性:火



名前:ダグラス・ボガード 所属:皺月の輝き

職業:イストリアテラス騎士団長、マフィア首領 趣味:魔物狩り

魔力:2453

使用可能魔法属性:水・氷・土・植物・金属

使用不可魔法属性:火・風・雷・光・闇

得意魔法属性:土



名前:ガリファリア・エルニウム 所属:皺月の輝き

職業:遺跡の守り人 趣味:人間観察

魔力:17962

使用可能魔法属性:火・水・氷・風・雷・土

使用不可魔法属性:光・闇・植物・金属・一般魔法

得意魔法属性:風



名前:アンサ・クリッド 所属:皺月の輝き

職業:アーギラ巡回者 趣味:自分の鉤爪研ぎ

魔力:3416

使用可能魔法属性:金属

使用不可魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・闇・植物

得意魔法属性:金属



名前:ダラリア・ベル 所属:皺月の輝き

職業:テッコー武器屋店主 趣味:ダグラスの事を考えること

魔力:2735

使用可能魔法属性:水・風・闇・金属

使用不可魔法属性:火・氷・雷・土・光・植物

得意魔法属性:闇



名前:オルテガ・レイラッハ 所属:皺月の輝き

職業:魔王軍戦術スパイ、魔帝国軍四天王 趣味:技の研究

魔力:10004

使用可能魔法属性:氷・風・雷・土・光・金属

使用不可魔法属性:火・水・闇・植物

得意魔法属性:土



名前:エヴィルチャー・グロリアス 所属:皺月の輝き

職業:死霊術師 趣味:死霊術の研究

魔力:19833

使用可能魔法属性:火・水・風・雷・金属・暗黒

使用不可魔法属性:氷・土・光・闇・植物

得意魔法属性:暗黒



おいおいおいおい……何で二万超えてるんだよ……

そう考えたが、とてつもない勢いで魔法を使った記憶もあるし、途中で満優弐優不空五をした記憶もある。


「お前の魔力どうなってんだよ……」横から好矢のカードを覗いてきたロサリオも呆れているようだ。


「ふふっ…とうとう妾を超えたようだな……」ガリファリアが微笑む。



いや……この数値は笑い事じゃ済まない気がする……一年半程度とはいえ、いくら何でもどうして一気にこんなに増えた……?

そう考えたが、アウロラが答えをくれた。


「ヨシュアくん、例えばハルティート大陸へ行く前まで、死霊術って魔術の存在知ってた?」


「いいや、知らなかった」


「…じゃあ、原始魔法書で原始魔法を使ったのは何回目?」


「ハルティートでメルヴィンの傷を治す時に初めて使った」


「…だとしたら、精霊の雫の効果よ。魔法に関する伸び代が高ければ高いほど驚異的な成長を見せる……って話したよね?」


「なるほど……」


「もしかして、俺がこんなに増えてるのもそれが理由か?」ロサリオが見せてくる。

以前は5000にも届いていなかったロサリオの魔力は9000に届こうとしていた……のだが、それ以上に驚くべきことがあった。


「おい、ロサリオ。……お前の趣味欄どうした?」


「え?」


「趣味:なし…ってなってるぞ。前はアデラのことを考えること……とか書いてあったのに」


「まぁ……人の心は動くものさ」ロサリオは肩をすくめて言った。


「明日は大雪だな」


「今は真夏だろうが!」



好矢とロサリオの様子を少し遠目で見守る沙羅とアウロラ

「やっぱりあの二人って、仲良いわね」


「そうですね……」


「ところでアウロラさん」


「はい?」


「…ロサリオの事、どう思ってる?」


「えっ!?ど……どうって……」


「……気になってるんでしょ」沙羅が笑いながら言ってきた。

相変わらず勘が鋭い恐ろしい女性だ……さすが伝説の英雄……。


「……まぁ…その…………はい…………」アウロラは顔を真っ赤に染め上げながら言った。


「いつから?いつから?」


「その……ハルティート大陸で後ろから抱きしめられた時……ドキドキして………」普段見せない恥ずかしそうに照れているアウロラがそこにいた。


「アタックしないの?」


「……私がしても良いんでしょうか?」


「自分で考えなさいな」沙羅は笑ってそう言って、好矢とロサリオの間に割って入って、好矢にくっついた。


「…………」そんな様子を眺めるアウロラ。

「…………よし!」パチンと両頬を叩いて、アウロラは走ってロサリオにくっついてみた!



「…えぇっ!?アウロラさん!?」相当驚いてるロサリオ。


「私も気になってる人にくっつきたくなったの!!」顔を真っ赤にしたまま叫んだ。


魔導士ギルドの周りにいるハンターや魔導士たちが一斉にアウロラとロサリオを見る……


「あの…ここではやめてもらえますか……?」ロサリオは普通に断ってきた。


「そ…そうだよね……」そういうとアウロラはいそいそと離れた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る