第百五十五話◆魔力を分解する臓器
指を差した先には、回りと同じ肉の壁だが、そこだけ小さく穴が開いていた……。
「あれは……?」
「調べてみたんじゃが……あれは食らった魔力を吸収して体内で分解する器官のようじゃ」
「何だそりゃ……?そんなもの聞いたことがないな」
「ワシら人種族はアルコールという飲み物を摂取するじゃろう?あのアルコールを分解する臓器が人種族全てに備わっているのは知っておるか?」
「えぇ、まぁ……」
「アルコールを体内で分解するように、バハムートには魔力を分解してダメージを回復させていっているようなのじゃ」
「そんなまさか……」オルテガがそう言ったが、エヴィルチャーは至って真面目だった。
「でも、仮にその話が本当だとして、ボクたちはどうすればいいんですか?」
「決まっているじゃろう…あそこを攻撃して、臓器を破壊するのじゃ!」
「なるほどな……」オルテガは納得したようで、その臓器に向き直った。
「エヴィルチャー、バハムートに攻撃する時に暗黒魔法を使っていたけど……他の魔法は使える?」メルヴィンはとりあえず聞いてみた。
沙羅が使えないので、使えないと思いこんでいただけなのだが……
「使えるとも。……ワシが使用できるのは確か…火・水・風・雷・金属・暗黒…だったはずじゃ」
「上出来だ!雷魔法を使えエヴィルチャー」オルテガは使用魔法の属性を指示した。
「何故じゃ?暗黒魔法こそ至高の大火力魔法のはずじゃが……」
「コイツの弱点は、光魔法と雷魔法なんだよ。……俺とメルヴィンは光魔法も扱えるが、お前と力を合わせるなら一斉に大火力の雷属性魔法を使ったほうが良い」
「なるほど……お主らも雷属性が扱えると?」
「そういうことです」
「……じゃあ、ワシから約束事をさせてくれんか?」
「何だよ?」
「一つ目は、バハムートの体内へ脱出することに対してここに居る三人で力を合わせること……そして、二つ目は……もし脱出に成功した場合、ワシの身の安全を保証してほしいのじゃ」
「……クソジジイ…テメェ自分が何言ってんのか解ってんのか…?」オルテガはギロッと睨む
「ワシとて命は惜しいわ!……もちろん、脱出に成功すればバハムートを倒す手助けだってしてやるわ!」
「……身の安全だけは保証出来ません」メルヴィンはそう言い放った。
「ボクたちがエヴィルチャーに対して手出しはしないと言った所で、ヨシュアさんが貴方を殺すといえばそれを止める権利はボクたちにはありません」
「……未だに外の世界はハンターの慣習が残っているか……」少し残念そうな顔をするエヴィルチャー。
「リーダーの言葉は絶対…って慣習のことか……俺たちは元々は別にハンターってわけではないけどな」
「まぁよいわ。自分の身は自分で護ることとする!……そもそも脱出出来なければワシらは全員ここで死ぬんじゃからな!」
エヴィルチャーのその言葉をきっかけに、三人はバハムートの臓器がある上へ向かって手を伸ばした!
(あそこにある臓器へ……最大火力の雷球発射……魔力2600使用)
(魔力を分解する臓器へ……最大火力の雷撃……魔力5700使用)
(魔力を分解する臓器へ……ワシの手から最大火力の電撃を飛ばす……魔力9980使用)
「「「発動ッ!!」」」
ズバアァァァァァァン!!という轟音が閉鎖された空間に響く…。
魔力が残り少ないメルヴィンは2600、物理攻撃をメインに行って魔力をセーブしていたオルテガは5700、エヴィルチャーは回復し切っていない自分の魔力にムチを打って、ギリギリの9980を使用した!
メルヴィンが放った雷球は、オルテガの雷撃とエヴィルチャーの電撃を飲み込み、巨大化して臓器がある穴へ直撃した!
・
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それと同じ頃――
「おい、ヨシュア!皆を一旦退避させろ!…俺はあの脳天に最強の一発をお見舞いしてやる!!」ダグラスはチャージを終えたミョルニルを構えた!
「あぁ、頼む!他の皆は退避して、光魔法と雷魔法が扱える人がいれば最大火力で同じ脳天に撃ってやれ!!」好矢の指示に皆は頷いて高速でババッとその場を飛んで離れた。
皆が一斉に離れた瞬間、バハムートの目の前に電気を帯びたミョルニルを構えるダグラスが対峙する。
「ガリファリア、バハムートの目にドラゴンビームを…!……撃てそうか?」途中まで勢い良く言ったが、大分無理を重ねさせてしまい魔力の消費が激しいガリファリアを心配して、言い淀んでしまった。
「ビームは難しいが……ブレス攻撃ならば火力が低くても構わないのなら……撃てるぞ」
「目を焼くのは難しいか…それなら………じゃあ、バハムートの頭上に移動して、俺が合図したら頼む!」
「了解した!」そう言って、ガリファリアは飛び上がった!
「ダグラスさん、私も援護します!…………発動!」アウロラはダグラスが構えているミョルニルに武器威力を増加させる魔法を使用した。
ガリファリアはグングン高度を上げて、ちょうどバハムートの頭上へ来た!
「…よし……行くぞッ!」ダグラスはミョルニルを構えたままガリファリアから、バハムートの傷を負った頭上へと飛び降りる。
そこへダグラスが叫ぶ。
「今だ!ヤツの傷にブレスを撃て!!」
「了解した……!ハァッ!」龍神化したガリファリア口から、可能な限り収束された電撃のブレスがバハムートの傷へ発射された!
「くらえぇぇぇぇぇ!!」
ブレス攻撃が直撃したのと同時に、そこへダグラスとミョルニルが力を合わせて最大限の魔力を込めた電撃の一撃を振り下ろした!
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