第百五十六話◆トドメの一撃
ダグラスが叫ぶ。
「今だ!ヤツの傷にブレスを撃て!!」
「了解した……!ハァッ!」龍神化したガリファリア口から、可能な限り収束された電撃のブレスがバハムートの傷へ発射された!
「くらえぇぇぇぇぇ!!」
ブレス攻撃が直撃したのと同時に、そこへダグラスとミョルニルが力を合わせて最大限の魔力を込めた電撃の一撃を振り下ろした!
…ドスンッ!バハムートの頭の傷から鈍い音が鳴った。
……その少し後、バリバリバリバリバリ……!!と激しい電撃の嵐が吹き荒れる!
「ギャアァァアァァァアアァァァアァオォォォォォム!!!」とてつもない叫び声を挙げてバハムートの身体は電気を纏った!
そのバハムートの咆哮はピタッ…!と止んだ!
「……??」魔力を込め続けるのに必死になっていたダグラスは我に返って目の前の攻撃した箇所を見ると、そこからバハムートの頭は裂かれ、口も真っ二つに割れていく……!
そこへ電気が流れて、声帯が使えなくなったのだろう。
「ど…どうだ……!バハムート!そしてミョルニル!……お前の魔力……耐えてやったぞ……!!」ダグラスは力いっぱいにそう言うと、裂けたバハムートの頭からフラリとよろけて海面に落ちていく……
「今行くぞ!」ガリファリアは魔力欠乏症になり力尽きたダグラスを自分の身体で受け止めた!
「ウグッ……!!」強い重さと衝撃でガリファリアの身体に痛みが走る……
そのまま高度を落とし、砂浜へと降り立った。
「へへ…へ……仇は取ったぜ……メルヴィン、オルテガ……!!」
ダグラスはそう言うと意識を失う!
皆が砂浜に集まってくる!
「ダグラスッ!!」「大丈夫かーッ!!」…………
皆が砂浜へ降り立った瞬間、バハムートの背中が光りだした!
「!? な、なんだ!?まさか……」まさか…まだ生きているのか?そう続けようとした好矢の心配は杞憂だった。
その背中から現れたのは、一本の太い電撃。そこからメルヴィン、オルテガ……そして、エヴィルチャーが飛び出してきた!
「やりましたね!」元気そうに言うメルヴィン。
「よくも俺たちを飲み込みやがったな!覚悟しやがれ!」と叫ぶオルテガ。
「微力ながらワシもコヤツには恨みがある……!手を貸すぞい!!」そういうエヴィルチャー。
「……メルヴィン!オルテガ!無事だったんだな!!」砂浜から声を掛ける好矢。
「えっ……?あれっ?」バハムートの背中の上でポカンとしているメルヴィン。
メルヴィンの隣を見ると、オルテガも……そしてエヴィルチャーも唖然としていた。
なぜなら、自分たちが立っているそこは、バハムートの死骸だと理解したからだ。
「や…やったんですね……!!」
「あぁ……!俺とヨシュアとダグラスのお陰さ!」フフンと鼻を鳴らすロサリオ。
「うるさい黙れ」龍神化から人の姿に戻ったガリファリアに頭をゴチンと殴られる。
「にゃふっ」ロサリオはコテンと倒れ、気絶した。
「……あぁ、誰かのじゃない、皆の勝利だ!」倒れたロサリオを気にする様子もなく好矢は言った。ガリファリアに殴られて気絶するのはいつものことなので気にしていられない。
……というよりも、とてつもない疲労感から、気にしていられる余裕がなかった。
メルヴィンとオルテガはそのまま空をフワリと浮くと、あろうことかエヴィルチャーを抱えて砂浜へとやって来た!
「……」先程までの疲労感を押しのけ、無言でミスディバスタードを構える好矢。それに続いて沙羅もコールブランドを構える。
「ま、待ってください、ヨシュアさん!エヴィルチャーはボクたちを助けてくれたんです!!」急に止めに入るメルヴィン。
「…はぁ?」
「お主たちを助けたのは、ワシの命が惜しかったからじゃ……ヨシュアとやら、ワシらはバハムートの体内からお前たちの手助けも出来たことだろう。」
「ん……?どういうことだ?」ロサリオも聞く。
「とりあえず、エヴィルチャーの話は聞いてやってくれ。コイツの助けがなかったら、俺たちはやられてた可能性がある。ヨシュア、お前たちもだ」
「解った……とりあえず、話してみろエヴィルチャー。適当な命乞いの為の言葉なら、この場で斬る」そう言って剣をしまわずにエヴィルチャーの話を聞いた。
バハムートの体内には受けた魔法ダメージを吸収する臓器があること……それによって、吸収しきれなかったダメージしか入らないため、とんでもなく強い魔物であった。
しかし、その臓器をメルヴィン、オルテガ、エヴィルチャーの三人で一斉攻撃して、破壊した。
恐らくバハムートを倒せたのは、魔力の吸収機能を失った直後に食らったダグラスとミョルニルの打撃と電撃が合わさった攻撃で、一気にトドメを刺したからであること。
そしてその臓器を発見したのはエヴィルチャーで、協力を申し出たのはメルヴィンであること……
これらは、メルヴィンもオルテガも認めていた。
「……これが全て事実じゃ。今この大陸に居るゾンビは元の姿に戻すことは出来ないが、活動を停止させることなら出来る。それを条件としてワシの身の安全を保証してほしい」
好矢に対してハッキリとそう言ったエヴィルチャー。
「……ハァ。これが一番丸く収まる方法なんだな?」好矢はメルヴィンとオルテガに確認をする。
「あぁ」「そうだと思います」二人はそう言ったので、認めることにした。
「解った……だが、次お前がおかしな行動を取った場合、全力で殺しにかかってやる」好矢はそう言って剣をしまった。
「さて……一通り片付いたし、ダグラスやガリファリアを休ませないといけないし、休める場所へ案内してもらおうかしら?」沙羅はエヴィルチャーに言った。
「な、何でワシなんじゃ!」
「良いから案内しなさい。アタシはまだアンタのことを許してないから」沙羅は怒りの表情でコールブランドを向けた。
恐らくゾンビとして召喚されたガルト・エスの事を言っているのだろう。
「わっ!解った!わかったから、しまってくれい!!」
その後、一同はパルセニア南西地区のホテルへと向かった……。
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