第百四十三話◆戦闘準備

「あの……ダグラスさんっ!私の装備探し…手伝ってください!」ダラリアはダグラスに頼んでいる。

防御能力に優れたダラリアだが、自前の鎧は長年使用していたのかボロボロになっており、新しい防具を新調しようとしていた。

それを、このパルセニアで購入しようと考えていたのだ。


「そうは言ってもよ……オメェは俺よりも力は強いし、ドワーフなんだから装備の目利きは出来るだろ?」困った表情で言うダグラス。


「えっと……ダグラスさんが選んだ装備で戦いたい…です」顔を赤くしながら言うダラリア。


そのダラリアの表情を察したメルヴィンも言う。

「手伝ってあげてくださいよ、ダグラスさん」


「お、おう……」力なくそう言って装備探しを手伝う事にしたダグラス。


時刻はちょうど夜の18時に差し掛かろうとしており、これから装備屋へ行って装備を吟味して選んでしまえば、閉店時刻である21時にはなりそうだった。



「…………」部屋で無言でポーションを作る好矢。戦う前の準備として行っている。そのポーション作りを眺めているのは沙羅だ。

「くそっ!また失敗だ!」


「ねぇ、好矢くん?…さっきから、何やってるの?」


「あぁ……ポポイ草…この赤い草のことなんだが……これと薬草か雑草を合成することで魔力回復ポーションが作れるんだ……ただ、元々持っていた薬草と雑草でポーションを作ることは出来たが、ハルティート大陸で手に入れた雑草や薬草じゃ魔力回復ポーションがどういう訳だか作れないんだ」


「雑草にも種類があるのかな……?」


「おそらくそうなんだと思う……俺の魔力はダグラスとダラリアに飲ませたポーション分で4000以上使ってるし、さっきから失敗している分で合計200以上は魔力を無駄遣いしちまってる……参ったな……ってあれ?」


「どうしたの?」


「どうして、魔力増幅ポーションは作れて、他のポーションは作れないんだ……?」


「……作戦は明日でしょ?そんな事考えて魔力浪費するよりは、ゆっくり休めば良いんじゃない?」


「そうだな……今日は満優ミュー弐優ニュー不空五ファイをやるつもりだったから、魔力を減らし過ぎるのもちょっとな……」


「……魔力回復ポーションはどれくらいあるの?」


「さっきパルセニアへ来る前に余っていた材料で作った分を含めて……八本だな」好矢は容積拡張したところから魔力回復ポーションを取り出した。


「他のポーションは?」


「万治ポーションは十二本あるな……あとこれが体力回復ポーションで……これは二十本あるな」


「十分じゃない?」


「そうか……?」そんな話をしながら、好矢は沙羅に万治ポーション一本と体力回復ポーションを二本渡しておいた。


「ありがとう……といっても、滅多に使うことはないだろうけど」


「そういう慢心が身を滅ぼすんだ。明日は頭を潰さなければ永遠に動き続けるゾンビが相手だ。それに何が相手でも準備不足はあっても準備のし過ぎなんてものはない」


「そうね……」


「さて、もう少し頑張るか……」そう言って好矢は魔力回復ポーションを一本飲んで魔力を少し回復させてから、また実験に取り掛かった。



パルセニア北西地区―防具屋。


「これなんて、どうでしょう?」ダラリアが装備するのは女っ気の欠片もない完全防御をメインにしたフルアーマーだった。


「おぉ…中々男らしくてカッコイイんじゃないか?」ダグラスはもうそう言うしかない。それほどまでに目の前のダラリアは男性的な強さの象徴を着ていた。


「…えぇっ!……じゃあ…ダグラスさんがさっき良いって言ってくれたやつにしようかな……」


店に到着したばかりよりも距離が縮まり、ダグラス相手に恥ずかしがらずハキハキ話せているダラリアがいた。

ダラリア自身も意外と話せるなぁ…と気付いてはいたものの、意識し過ぎると好きな人の前では顔を赤くしてしまう癖を治したいが為に、敢えて気にしない振りをしていた。


「でも、明日の戦いはあくまでゾンビが相手だ……装備の女性的美しさは捨てた方が良いんじゃねぇか?俺はお前が危険な目に遭う方が怖いね」ダグラスはそう言う。


すると、ダラリアは「ッ~~!?」と声にならない悲鳴をあげて顔を真っ赤に染める。


「どうした?」その様子でも気付かないダグラス。


戦いへ出向くための装備選びだが、二人にとっては楽しい時間だった。



パルセニア北西地区―図書館。


図書館にいたのはロサリオとアウロラの二人だ。

ロサリオは図書館で自分の得意な火属性魔法を更に強く出来るものがないか探していた。当然、魔法が存在しない大陸なのでそんなものを探すこと自体が一苦労なのだが……。

そしてアウロラは既に自分が読みたい本を発見して読んでいた……本のタイトルは……“異性にはこれ一冊!絶対オトせる必殺☆テクニック!”……恋愛指南書だった。


「ふむふむ……なるほど……」その恋愛指南書を読みながらノートに書くアウロラ。


少し離れた所から見るアウロラの様子にロサリオは「さすがはトーミヨの卒業生だ…勉強熱心だな……」などと思って眺めていた。


「…っと、これはどうだ?」ロサリオが発見した本は“氷属性を持つ武器”だった。自身の得意とする属性の苦手な属性は水と氷……そのうちの氷属性に関する本だった。

これは一読の価値がある!と思い、その本を手に取ったロサリオ。

イスに座り、その本を1ページ1ページめくっていくロサリオ……。


ふと、一つのページに目が留まる。

「これは……!!」


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