第百四十四話◆最後の五大魔器と仲間たち
ふと、一つのページに目が留まる。
「これは……!!」
そんなロサリオの様子に気付くアウロラ。
「……どうしたの?」
「こ、これ…見てくれ」ロサリオはアウロラの前に開いた本を置いた。
「!!……これって……!」
「あぁ!……ハルティート大陸にあるんだ……
それは非常に高い魔力で氷属性が秘められた獄弓ジュデッカと呼ばれる、五大魔器だった。
五大魔器というのは、沙羅が持つ聖剣コールブランド、ダグラスが持つ
「最後の一つが見つからない訳だわ……世界中の人に知られていない大陸にあったのね……!」
「サイエルに頼めば、これ…もらえるんじゃないか?」
「そうね……この大陸にあるもの何でも一つ持って行っていいってことだったし……」
「問題は……メルヴィンのヤローが持てるかだけどな」
「…………私も欲しかったな……五大魔器」
「まだ分からないぞ?ジュデッカに認められるのはアウロラかもしれないし、俺かもしれない……ヨシュアのヤローだって五大魔器を手に入れてないんだ。アイツが認められる場合だってあり得る」
「そうね……!今回の作戦、俄然やる気が出てきたわ!」
「俺もだぜ!この前のミョルニルは俺の腕力じゃ持てる気がしなかったが、弓矢となれば……!」
「ふふっ……」「ハハハッ……」まだ見ぬ伝説の武器への期待を膨らませ、二人で笑い合うロサリオとアウロラ。
パルセニア北西地区―居酒屋。
ここで酒を呑んでいたのはオルテガとアンサだった。
アンサには腕がないが、一般的な人種族なら腕が生えているだろう場所から生えている翼の先を上手く巻いてパルセビアーが入ったジョッキを握って飲んでいる。
「お前…中々器用だな」
「これくらいは鳥人族ならば出来て当然だ……我々の境地へ辿り着けなかった下等生物のハーピィでは難しいかもしれんがな……」
「やっぱり、見た目は似ていてもハーピィと鳥人族はハッキリとした違いがあるのか?」
「あぁ……人語を話せるかどうかも関係あると思うが……純粋に奴らは気性が激しい。見境なく他の生物を攻撃するなどまさに魔物そのものではないか」
「確かに、その通りだな……」
「……明日はダラリアに頑張ってもらうが、私もガリファリアと共に空で見回りをするつもりだ。ありがたく思え」
「お前な……心強いしありがたい言葉なんだが……なんというべきか……恩着せがましいよな」
「恩着せがましい?…実際お前たちにとっては私に恩があるのだろう?」何を言ってるんだ?といった表情で聞いてくるアンサ。
「他の人種族と円滑な関係を築くためには、謙遜という言葉を覚えた方がいいぞ……いずれは人種族の頂点に立つんだろ?それなら、謙遜くらいは出来ないとな」
「謙遜とはなんだ?」
「簡単に言えば……そうだな……自慢や、
「なるほど……それをやると、どうなる?」
「しっかりとした心を持っている人間だと思われるはずだ」
「そうなのか……やってみる事にしよう」そう言うと、またグイッとパルセビアーを飲むアンサ。
そんなアンサの様子を見て、発現したばかりの人種族も教育次第では現在世界最大の権力を持つ上級魔族と並べるのではないかと、彼らの中で生活を共にしてきたオルテガ自身が感じた。
――パルセニア北西地区―噴水公園。
……夜道を歩いていると、ベンチに座っているガリファリアを見付けた。
「ガリファリアさん、ここにいたんですね……」横からメルヴィンが声を掛ける。
「ん…?メルヴィンか……妾に用か?」
「いえ…そういうわけじゃありませんけど、皆さん各々好きなことをして楽しんでますし……ガリファリアさんはどうしているのかなって……」
「妾は……これを眺めていただけだ」そう言ってガリファリアは噴水を見る。夜になってしまい、水が止められている噴水だ。
「……水出ませんね?」
「夜には水は止められてしまうらしい」
「水が出ない噴水見て楽しいんですか……?」
「あぁ……見てみろ。噴水に鳥がとまっただろう」
「えぇ」ガリファリアと目線を合わせると、視線の先には噴水のてっぺんの水が噴射される所に鳥がとまっていた。
「もし、このタイミングで水が噴射されたらどうなると思う?」
「え……びっくりして飛び立つんじゃないですか?」
「あぁ……それが見たくて妾はここにいるんだ」
まさかとは思ったけど……そのためにこんな時間から……?と考えるメルヴィン。
悠久の時を生きてきた龍神族……そうであるからこそ、一般的な人種族の有限の時を無限であるかのように使うことが出来る。
きっと彼女自身、何日間か暇な時間があればずっとここに座って噴水を眺めていただろう……ボクだったら間違いなく飽きてるな……
メルヴィンは一人でそんな事を考えていた。
「……いつまで突っ立っている?座るなら座れ」ガリファリアは顔だけメルヴィンに向けて言った。
「あ……じゃあ失礼しますね」
ガリファリアの隣に腰を下ろした。
「…………」
「…………」
二人はしばらく水の出ない噴水を眺めていた。
「…のう、メルヴィンよ」
「はい?」
「お前はどうして皺月の輝きへ入った?」
「……どうしてでしょうね。人類を救いたいというのもありますが……ヨシュアさんの強さに憧れた……といった所でしょうか?」
「では、どうしてヨシュアのヤツは……アイツを皺月の輝きへ入れたと思う?」
「アイツ?」
「ロサリオ・デイルだ」
「あぁ……どうしてでしょう?」
「ヨシュアとロサリオの二人は……きっとすごいことを成し遂げる魔導士になるぞ……」
「ロサリオさんも…?」
確かにロサリオさんの攻撃魔法の火力は凄まじいものがある。魔法詠唱の正確さや魔力の精密な操作はボクから見てもまだまだだけど、火力だけで言えばヨシュアさんを超えるかもしれない。
魔力では、ボクやヨシュアさんに大きく劣っているのに、それは不思議でならない。
「ヨシュアは、最初こそロサリオに過去やられた事の仕返しのような事をしていたが……最近の二人を見ろ。まるで友人ではないか」
「それは…言われてみれば確かに……」
「お互いがお互いを認めているんだろう……人間族はお互いを認め合って高め合う珍しい人種族だ。あの二人は本当に強くなるぞ」
「……ガリファリアさんも先見の明がありそうですね」
「妾の場合は……長く生きすぎただけ……時が来れば、寿命を縮めることにする」
「ど、どういうことです!?」
「……言ってなかったな……龍神族は自分で寿命を決めることが出来るのだ……しかし、龍神族としての私の役目はとうに終わっている……皺月の輝きで余生を楽しんでいるようなものだ」
「だから、指図されるのを物凄く嫌がっていたんですね……」
「そういうことだ」
「…………」
ふと、ガリファリアは立ち上がると自らの翼をバサァッと広げた。
「どうかしました?」
「……飲み物を買ってくる。お前はそこにいろ」
突然思い立ったかのように、ガリファリアは広げた翼で大空へ羽ばたいた。
翼を開いたガリファリアの姿が満月と重なる……その様相は、現世に現れた堕天使のようであった……
そして皺月の輝きの一行は気付いていなかった……。
ちょうど、ゾンビの大軍がパルセニア北西地区に到着していたことを……
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