第六章★死霊術師編
第百二十五話◆夢のまにまに情報を
――馬車の中。
「ちょっと、ガブ!変な所触らないでよ!」エリシアが声を荒げる
「触ってねぇよ!それに触るんならアデラの身体触ってるっての!」
「ガブ…それ、どういうこと……?」アデラが怒ってる……
「あっ、いや…今のは言葉の綾ってやつで!」
「ふふっ、冗談だよガブ。心配しないで?」そう言ってガブに身体を寄せるアデラ。
「イチャイチャしてる目障りな奴らはほっといて、ソフィナ…この馬車で三台目だろ?そろそろ皺月の輝きと会えないとマズイんじゃないか?」
旅が始まってからずっとラブラブなガブリエルとアデラを見ている為、イラッとしているレオが発言する。
三台目というのは、ソフィナ達トーミヨの卒業生は馬車を雇いまくって各地を回っており、二度も乗り継いでいるというのだ。
ちなみに冒険者のパーティを組んでいるわけではないが、ソフィナ達六人は冒険者ギルドや魔導士ギルドを回って依頼を受けて旅の資金をちょくちょく稼いでいた為、馬車の運賃は問題なかった。
――その時、皺月の輝きはテッコーの街から魔族を仲間に加えるために、魔王都ガルイラへ向かっている最中であった。
「……とりあえず、地図を見る限りで一番近いのは魔王都ガルイラだな」レオが地図を見ながら言う。
「じゃあ、ちょっとルートからズレるけど、早速行こう!」
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――エルミリア城―玉座。
周りには不思議な空気が立ち込めており、視界にはモヤが映っている……
「オルテガが裏切ったというのは本当なの!?」エルミリアとその側近が話している。
「…そのようです。恐らく亡命先は……魔王都かと……」
「ガルイラめ……!美味いエサをチラつかせてオルテガを駒にしたつもりか……!!」
「どちらにせよ
「そうね……」しばらく考え込むエルミリア。
その時、玉座の間の扉の奥から声がした。
「鋭鋒の氷刃レディア・ガラガスにございます……エルミリア様、お呼びでしょうか?」
「入れ」エルミリアの合図で「失礼します」と言って入室するレディア。
ツカツカと玉座の方へ歩き、一定距離で片膝を付く。
“レディアさんだ……ってことは、ここはエルミリア城……”
「…楽にしろ」エルミリアの指示に「はっ!」と言って、立ち上がる。
「……さて、レディア。早速本題に入るが、オルテガが裏切ったという話は聞いているか?」
「はい、私の従者サミュエルから聞き及んでおります」
“従者サミュエル……?”
「そうか……従者サミュエルを呼べ」エルミリアが言った。
レディアは扉へ振り返り「入れ!」と言った。
「失礼致します!」サミュエルが扉を開けて、玉座の前で片膝を付いた。
“あ、僕がいる……。黒と金のカッコイイローブ着てる…欲しいなぁ……”
「楽にしろ、従者サミュエル」
「はっ!」サミュエルもレディアの隣で立ち上がる。
「従者サミュエルよ。お前はオルテガの裏切りを以前から知っていたか?」
「…………」
「な、何を仰るのですか!?エルミリア様!」突然のことに焦るレディア。
「否定しなさい!魔族の間では否定すべきことはすぐに否定しなければ疑われてしま――」
「……知っておりました」レディアが言い終わる前にサミュエルが発言した。
「えっ……?」
「説明しろ」エルミリアがサミュエルへ命令する。
「二ヶ月前のことです……」
「ヤバッ!寝坊だ!やっちゃった~!レディアさんに怒られちゃう……」エルミリア城の廊下をタッタッと走るサミュエル。
「あ、お疲れ様です、オルテガさん!」偶然向こう側から歩いて来ていたオルテガに挨拶をするサミュエル。
「…止まれ」
「はい…?」
「いつも“さん”ではなく“様”で呼べと言っているだろう」
「いえ……レディアさんが様なんてアイツには勿体無いと……」
「……従者サミュエルよ。真面目なのは良いことだが、時には臨機応変に呼び方を変えるのだ……。今は近くにレディアはいない……だったら“様”を付けて問題なかろう?」
「あっ、すみません……」
「そんなでは、皺月の輝きに入れるか分からんぞ?」
「えっ……?僕は皺月の輝きには入るつもりはありませんが……?今のところは……ですが」
「……そうなのか?だとしたら共闘することはない…か……」オルテガはボソッとそう呟きながら歩き去って行った。
「――というわけです」サミュエルが話し終える。
「なるほど……何故伝えなかった?」
「濁った考え方の持ち主が自ら消えていくのです。それに、あえて泳がせておけば行き先も解ります」
「その口振り……従者サミュエルよ。お前はオルテガの行き先まで知っているのか?」
「はい……オルテガは魔王都ガルイラへ向かった模様です……尾行任務を遂行させていた僕の部下のビリーがマジックメッセージにて、昨晩伝えて参りました」
「……なるほど」
ビリー・レウティス……サミュエルと共に入軍試験を受けた別の学校出身の人間族の男だ。
サミュエルの異常な魔力数値よりは大きく劣っているものの、彼も四天王の従者の部下として、従者の手が回らない仕事を従者の指示を受けて優先的に行う軍の一員よりは待遇も良いポストだ。
ちなみに、従者がビリーを部下として指名したので、ビリーはそのポストに就いていた。
「どうして教えてくれなかったの?」レディアがサミュエルに聞く。
「申し訳ございません……ある程度は把握しておりましたが、正しい情報を伝えるため、確証が持てるまでは敢えて黙っておりましたが……報告が遅れてしまいました」
サミュエルはレディアに頭を下げた。
「……従者サミュエルよ」玉座に座りながら組んでいる脚を組み替えて、サミュエルに声を掛けるエルミリア。
「はっ!」
「現時刻を以って、従者の任を解く」
「「なッ……!?」」サミュエルとレディアは同時に声を出した。続けたのはサミュエルだ。
「報告が遅れたことに関しましては猛省しております!どうか――」
「……そして、現時刻から暫定的にサミュエル・ラングドンをアグスティナ四天王の四番手を名乗ることを命ずる」
「……えっ?」
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