第百十三話◆鳥人族
無事、ドワーフ族領のテッコーの町へ入ることが出来た一行は、まず宿を探すことにした。
なるべく町内のイザコザを起こりにくくする為に、メルヴィンとアウロラ、ガリファリアが三人一組で行動していた。
メルヴィンを差別されそうになった場合、ガリファリアが力で守り、アウロラは会話で交渉をするためだ。
メルヴィン本人は「エルフ族が嫌われているのは元々知っていましたし、ロスマへドワーフ族が来たって同じ反応だと思います。だから僕はワガママは言いません」と言っていた。
「さて、好矢。どうして宿を全員で取らないで町へ繰り出したんだ?」ロサリオに聞かれたが、そろそろ新しい装備が必要だと思っていたのだ。
もちろん、好矢や沙羅の武器ではない。ダグラスの武器を新調したかったのだ。
「俺の武器、見て分かる通りボロボロだろ?だからドワーフ族の町で新調したかったわけだ」ダグラスはボロボロのハンマーを見せて言う。
「なるほど……なぁヨシュア。俺も新しい装備が欲しいんだが」ロサリオはそう言った。
「あのねぇ!買うのはアタシなのよ!?」皺月の輝きで桁違いのお金を持っている沙羅が突っ込む。
「そうは言ってもさ……俺の装備も見ての通り……こんなやつで」見せてくれた装備は、トーミヨの魔力検査の時に使用する指定の杖だった。
魔力伝導率は50%……何故低いのかと言うと、素の威力を数値化したものをそのまま検査魔導器に掛けると故障に繋がってしまうことがあるため、半分の威力で魔法を使って検査するそうだ。
その武器をそのままロサリオは持ってきていたのだ。
「ロサリオ……お前に武器が必要なのは分かった。でもここはドワーフ族領だぞ?」好矢は言う。
「……だったら何だ?」
「魔導士向けの武器を扱っている店があると思うか?」
「…………アッ!」好矢の言葉に今更気付くロサリオ。
「……解ったら贅沢言わないで別の町へ行った時に沙羅に頼んでくれ」好矢の言葉に沙羅が反応する。
「コラ、好矢!お金を払うのはアタシなんだからね!?」
ごめんなさい……
「それはそうと…武器屋はどこだ?」ロサリオはキョロキョロ見回す。
「あれか?」ダグラスが剣のマークの看板を見付けてその建物へ入る。
――武器屋。
カランカラン……
………………シーン…………。
「えっと…いらっしゃい」しばらくすると、ドワーフ族の女性が奥からやって来た。ガッシリした小太りの女性だった。
「おい」ダグラスが声を掛ける
「ひっ!?すみません!!」慌てて返事をするドワーフ族の女性。
「いや……怒ってるわけじゃなくてだな……。ちゃんと店番してねぇと商品盗まれたりして危ねぇぞ?気を付けろよな」
「あ、はい……すみません……」シュンとするドワーフ族の女性。
ドワーフ族のイメージが全然違った……
「ところでよ……このハンマーみたいな威力の高い武器を探してるんだが……取り扱ってるか?」ダグラスはボロボロになっている大きなハンマーを取り出す。
「このサイズでしたら……王都で……いや、でも……」色々と考えるドワーフ族女性。
「どうした?」顔を覗き込むダグラス。強面が目の前に現れて驚くドワーフ族女性。
「うわあっ!?す、すみません!!しょ、しょーしょーおまちください!」固まりながらトテトテと店の奥へ入って行った。
歩き方がエンテルのような女性だった。
「何だアイツ……?」ダグラスはそう言いながら近くにあった石のベンチに腰掛ける。
――数分後。
「お、お待たせしました!」ドワーフ族の女性が奥から顔を出してきた。
「おう、武器持ってきたか?」
「はい……ウチで取り扱ってるハンマー系の武器はこの二つになります……」そう言っていつもダグラスが両手で振り回しているような巨大なサイズのハンマーを軽々と片手で持ち上げて、
ドスン!と一本……そしてもう一度奥からドスン!ともう一本のハンマーを石のテーブルの上に置いた。
ギョッとした顔でドワーフ女性を見る一行……さすがのダグラスも驚いている……。
「あ、あの……何か……?」不安そうにしているドワーフ女性。
「あ、あぁ…いや……」そう言ってダグラスは二つのハンマーを見比べる。
「この二つはいくらなんだ?」ハンマーを見比べながら聞くダグラス。
「二つとも900,000コインです。ハイ」
「きゅっ…!」沙羅が言いかけて自分の口を押さえる
「でも、お客さん……」ドワーフ族女性は話し出す。
「なんだ?」
「お客さん、か…か…カッコイイから……タダでもいいです……」ドワーフ女性はそう言う。
「ハァッ!?」ダグラスは驚く。驚くのは当たり前だ。カッコイイからタダって頭がおかしいのか?と感じた。
「あのなぁ…仮に俺がカッコよくて、お前の好みの男だったとしても…だ。タダで武器を譲るって頭おかしいだろ!?払うべきものは払うぞ!」ダグラスはそう言った。
「え?あっ…何も、タダでタダであげるとは言っていません!」
「「「「タダでタダで???」」」」その場に居る四人の頭の中はクエスチョンマークで埋め尽くされる。
「どういうことだ?」ダグラスは聞くとドワーフ族女性は答えた。
「実は……今、テッコーの町は困っている状況でして……それを助けてくれたらタダで差し上げます!……って、言うことです!」
ドワーフ族女性曰く、カッコイイからタダであげる…というより、カッコイイから頼みを聞いてくれそう!その頼みを達成出来たらタダで譲る……という意味だったらしい。
因みに、彼女が言うカッコイイは強そう…という意味でもあるらしい。
人間族や魔族が異性を選ぶ基準は、性格の良し悪しや顔の良さだったりするが、エルフ族は異性を選ぶ基準は弓術の腕や魔力である……
ドワーフ族は筋肉質で強そうな男性がモテるらしい。ドワーフ族と巨人族のハーフはよく見掛けるらしいが、ダグラス何かは特にモテやすいらしい。
ドワーフ族は元々身長は低いのだが種族の特性とも言えるその特徴をコンプレックスに感じている人が多く、そのコンプレックスが巨人族への憧れになっているようだ。
「その…頼みってぇのは何なんだ?」ダグラスはとりあえず聞いてみる。
「鳥人族が……ウチの町を荒らすんです」初めて聞くワードだ……鳥人族……?
「鳥人族っていうのは何だ?……そんな人種族聞いたことないけど……」好矢は聞いてみる
「魔物のハーピィが突然変異で知能を付けた存在です。彼女らは自らを鳥人族…と名乗っています」
「意思疎通が出来るってことか?」好矢は再度聞いてみる
「いえ……彼女らは喋ることは出来て、私達に言葉を伝えることは出来ます…しかし、私達の言葉は理解出来ないようなんです……」
それは一体どういうことだろうか……?その言葉を理解出来なければ、話すことなど不可能だ…それなのに自分は話せて相手の言葉は理解出来ないことなど有り得るのだろうか?
「その……鳥人族の攻撃を鎮めてほしいんです……険しい山道を通ると山賊のように襲い掛かってくるんです…背の低い私達じゃ敵いません……」
どうやら、本当に困っている様子のドワーフ族の女性……
「……分かった。その依頼、受け取った」ダグラスはそう答えた。
「本気なの?」沙羅が聞く
「当然だ!俺たちゃ皺月の輝きだ。困ってる人間を助けんのがハンターの仕事なんじゃねぇのか?リーダーさんよ!」ダグラスが好矢に言う。
「……そうだな。その山へ行くぞ!」
ドワーフ族の女性から詳しい場所を聞いてから、宿屋で待機している仲間の元へ向かうのだった。
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