第百十四話◆最強の防具
――ホテルの一室。
「それ、ホント?鳥人族って……」アウロラは半信半疑の様子だった。
「あの場で嘘を吐くとは思えねぇ……本当に被害に遭ってるんだろうよ」ダグラスはそう言う。
「……アウロラさん、そのドワーフ族の女性曰く、テッコーの町の東にある山だと言っていたんですが……地図には何と?」
「えぇ、あるわね。“アーギラ黒山”が……」
「えっ……」ロサリオの顔が強張る
「どうした?」好矢が聞いているが、好矢と沙羅、ガリファリア以外の全員の表情が強張っていた……
「何なの?どうしたの?皆」沙羅は周りに聞く。
「アーギラ黒山を知らねぇのか……?」ダグラスは言う。
「知らないから聞いてるんでしょ!」
「毎年10000人以上の人種族が謎の死を遂げる死の山だ……登って帰って来た奴はいねぇ……」
「噂に聞いたことあったが、ドワーフ族領にあったのか……」ロサリオまで驚く
どうやら、死の山と呼ばれる山へ登るのが恐ろしく、皆は萎縮しているようだ……
しかし、皺月の輝きの最終目標はそんなヌルいものじゃない。我々は世界を救おうとしているハンターチームだ。
「あのさぁ!そのアーギラ黒山?がどれだけ危険な場所かは解らないけどさ!アタシが戦った邪悪なる者とどっちが危険なわけ!?」沙羅が大きな声で言う。
「そりゃあ、邪悪なる者って野郎の強さは未知数だけどな……物にゃ無視した方が良い物だってあるんだよ……」ダグラスは呟く。
あのダグラスが気落ちしている……その光景は珍しいことこの上なく、同時に、どれだけ危険な場所であるのか……それを物語っていた。
しかし、ダグラスの勢いの良さは好矢が持っていない周りの士気を高めるものだ……。彼が気落ちしてしまってはチーム全体の士気が下がってしまうのだ。
どうにかして、元気を出してもらうしかない。
「……好矢くんがいる!ガリファリアがいる!……アタシもいる!!皆がいる!!大丈夫!!……私達は英雄になるのよ!!」突然、沙羅が大きな声で宣言した。
「……沙羅の言う通りだ。アーギラ黒山が危険な場所なのかは俺も知らないが、そこで命を落とすなら元々邪悪なる者を倒すなんて不可能だ!腹を括って行くしかないだろ!それにダグラス!お前が引き受けた依頼だ!最後まで覚悟決めろ!!」
剣道教室に通っていた頃、沙羅によく言われていた言葉……“覚悟決めろ!”……これを好矢は初めて仲間に使った。
「……あぁ、そうだな。……やるしかないか……」
「皆がそこまで気落ちする場所なのだ……妾も死にたくはない。全力でサポートさせてもらうぞ」ガリファリアもハッキリと協力する声明をしてくれた。
「……よし、行くぞ」
「待ってください!食料が今のままでは足りません!……今日一日は準備に当てることを提案します」メルヴィンは言った。確かに、数日分しかない。
……いや、数日分で足りないというのか……?
「メルヴィン、何日分なら足りると?」好矢が聞いてみると、メルヴィンは答えた。
「少なくとも、遭難した場合を考えて10日分以上は……」
「分かった…防具類も用意しておかないといけないよな?」好矢は言った。
「もちろんです。全員分、可能な限り防具の性能は高まっていた方が良いと思います」
こうして、皺月の輝きはアーギラ黒山攻略へ向けての準備を行うことになった。
「また、アタシの財布からコインが消えていく…………なんて、言ってられないか!早速買い物行くわよ!」
――テッコーの町―防具屋。
防具屋に入ると早速色んな物を物色を始める仲間……。突然強そうなハンターが七人もゾロゾロと入ってきたので突然の事に驚くドワーフ族の男性店主。
「本日は、どのようなものをお探しで?」そういう店主に近付いてダグラスが言う。
「アーギラ黒山へ登れる最高の防具を用意しろ」
「あ…アーギラ黒山ですか!?……しょ、少々お待ち下さい!!」更なる驚きを隠せないドワーフ族の店主。店の奥へ引っ込んでいく。
・
・
・
――数分後。
「こちら何て
軽装装備というより動きやすい服のような格好が多かったが、好矢と沙羅は今回を期に、ガリファリアと同じく部分鎧を装着することにした。
メルヴィンは胸当てがついた弓を打ちやすくしてある軽装…アウロラ、ロサリオは魔導士のローブを新調、ダグラスは重装備を装着することにした。
「…それらの装備品でよろしいですか?」ドワーフ族の店主が言う。
ドワーフ製の防具は高価である分、非常に優秀な能力を備えている……。
ダグラスが購入した重装備に至っては、ちょっとやそっとじゃビクともしない頑丈さで、好矢たちが装備した部分鎧もダグラスのハンマー攻撃一撃を軽々と耐えた上に衝撃吸収能力が高い凄まじい品だった。
アウロラ、ロサリオが購入した魔導士のローブは、防御能力が高いローブで、物理的な攻撃には特に耐性がある。魔法攻撃は各々の魔力で抑えられる。
さらに、ローブには魔法伝導率が入っていた。110%の伝導率だが、防具に魔法伝導率を付けるというのはドワーフ族ならではの発想だった。
受ける魔法ダメージや物理的なダメージを伝導率で防ぐことが出来るのだ。その上で武器の高い魔法伝導率を発動させ障壁魔法を使えば、その魔導士の防御能力はダグラスを凌駕する。
そしてメルヴィンの胸当ては、ドワーフ族と巨人族にしか扱えないというスキル魔法がかかっており、一番高価であった。
かけられているスキル魔法というのは、遠距離攻撃の命中精度に補正を掛ける能力だった。弓による攻撃はもちろん、武器や手から発射させる魔法(火球や氷球など)の命中精度、手ブレなどを抑え、ほんの少しであれば追尾する能力を秘めている。
元々エルフの国でも凄腕のスナイパーとして名高かったメルヴィンは、更なる命中精度を手に入れることとなった。
「それらの品は当店で最も優れた一品の数々でございます……まさか、アーギラ黒山へ行ってくださる方がいらっしゃるとは思ってもみませんでした……!それでお代なのですが……」
さすがは商人で、感動をしてウルウルしていたが、お代はキッチリといただいていた。確かに高価な品を渡しても死なれてお金が払われなかったら困るよな……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます