第百五話◆再戦!懸河の乾坤

――翌朝。メガロスの町の門前。

ピッカピカに輝いて嬉しそうにしている沙羅。アウロラさんから「何か良い事あったんですか?」と聞かれると「うん!」と答える沙羅。


「俺には解る……あれはオンナになった顔だ……」ダグラスはニヤニヤしながら好矢を見てきた。


キスしかしていないので、何か勘違いされている可能性があるが、否定すると余計怪しまれる事もあるし、何より沙羅がかわいそうなので何も言わないでおいた。


「さて、次の行き先は魔族領だ。ダグラスは搭乗用の動物は持ってるか?」好矢が聞くと「あ~……持ってねぇな。」と言った。


「だったら、妾の上に乗ってよいぞ」ガリファリアはそう言った。


「……大丈夫なのか?俺は体重も装備も重いぞ?」ダグラスはそう言った。かなりガッシリした体型の巨人族で、武器や防具も重装備のダグラス。合計で120kgは軽く超えていても不思議ではない


「だからこそ、搭乗用の動物はかわいそうだろう?……ハァッ!」ガリファリアは自身の発声と共にバサァッ!と翼を広げ、肌にある鱗が青く光り…それが周囲に広がり、真っ青で眼が真っ赤なドラゴンに変身した。


その光景を見ていた門番はビビッたまま固まっている。


「おぉ……これが龍神族の龍神化か……すげえもんだ……」関心しているダグラス。


「さぁ、妾に乗れ。背中に角のような突起があるはずだ。そこに足を固定すれば安定するだろう」ガリファリアに言われた通りに跨るダグラス。


「この部分か……おぉ、乗り心地も良い感じだな!ありがとよ、ガリファリア!」


正直ちょっと羨ましかったが、他のメンバーと共にライドゥルに乗って魔族領を目指して走り出した。ガリファリアの飛行速度は実際はかなりの速度が出るが、走らせているライドゥルの上空を旋回するような形で、ゆっくり付いて来てくれている。



出発をして四日目。王都メガロスからゴランド街道…タイタスの街…ベリウム街道…龍の渓谷…ベルグリット村……と来た道を引き返して行く好矢たち。

しばらくライドゥルを走らせていると、ガリファリアが好矢の頭上を旋回しながら、低空飛行をして寄ってきた。


「どうした?」見上げながらガリファリアに声を掛ける好矢。


「……まだしばらく野宿をすることになるのか?」


「あぁ、そうなるはずだ。もちろん、既に町が視界に入っていれば、そこまで頑張って行くつもりだけどな」


「そうか……」


「別にどうしてもふかふかのベッドで休みたいなら先に行ってもらっても構わないけど、離れ過ぎるのは得策ではない。一応は敵対している種族がいるわけだから」


「上級魔族か……」ガリファリアはそう言うと、また上空へ上がって旋回を始めた。


「見えてきました!」ライドゥルに乗るメルヴィンが指を差す。その先にはサヴァール王国のロスマの街があった。街自体は視認できたが、まだ門までは見えない。

前回、ロスマの街へ行くときは数日間歩いたが、今回は全員がライドゥルに乗っているので、もっと少ない時間で港まで行けるだろう。

しかし、来た道を引き返す時は、なるべく急いだがどうしても時間をロスしてしまった。アグスティナ魔帝国へ近付かないよう、迂回して進んだからだ。


さて、ロスマの街を過ぎて、何日間かは掛かるだろうが港まで行けば、後は二週間船旅をすることになる。その船旅の後、ようやく王都ガルイラまで行ける。

しかし、沙羅がまた船酔いで吐きまくり、船の上でずっとダウンしているのでは……と思っていた。


そして、ロスマの街の門が見え始めてきた時――


ゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!!地面が激しく揺れ出した!


「地震!?」沙羅が言う。皆のライドゥルは速度を遅くして止まってしまった。

すると、好矢たちの進行方向……約数メートル先にズバァン!という爆発音と打撃音が混じったような音がして、尖った大きな岩が数本地面から出てきた!まるで行く手を阻むように。


最後にズバァン!と、今度は進行方向とは逆に一つ生えた!


「な、なんだ……!?」


最後に生えてきた尖った岩の塊が割れて中から、アグスティナ四天王のオルテガが現れた。

「……やっと見つけたぞ。トール・ヨシュア、そしてガリファリア・エルニウム!」


「なんだテメェ?岩太郎みたいに出てきやがって!」ダグラスが言う。

岩太郎……トーミヨの学生の時、ソフィナの家で厄介になってる時に読ませてもらった子供向けの絵本に出てきた。

岩をも砕く武器を造った!と言う職人が岩の塊に向かってその武器を振り下ろすと、砕けた岩の中から赤ん坊が出てきて、そいつは岩太郎と名付けられた……という話だ。

その後の展開は、日本昔話の桃太郎ソックリだった。唯一違う点は、相手にしていたのが鬼ではなくドラゴンだったという点。


「トール・ヨシュア……また新しい仲間を連れているようだな……!」


「テメェ名乗りやがれ!」ハンマーを取り出し、ガシッと構えるダグラス。


「今回は随分と血の気が多いお仲間だな……俺の名はアグスティナ四天王、懸河の乾坤オルテガ!俺の相手をしてくれるのはお前か?」オルテガは大きな斧を抜いてダグラスへ向けた!


「ヨシュア!コイツと戦ってもいいか?」ダグラスが聞いてくる。


「あぁ。オルテガはかなりの使い手だ。気をつけろよ!」


一度だけ一対一で戦っているが、ガリファリアの乱入が無ければ勝てなかった相手だ。ダグラスはオルテガ相手にどこまで戦えるか……?


「前の俺と思ったら大間違いだ!俺は確実に強くなった!そして、新しいミスリルの斧を頂いた!俺に死角はないッ!!」


「武器の材質が良けりゃ、死角が無くなるとでも思ってんのか?だとしたら本物の馬鹿だな!」鼻で笑うダグラス。


「……俺は名乗ったんだ。貴様の名前は何だ?大男よ!」オルテガは斧を構えたまま聞いてくる。


「俺の名はダグラス……巨人族のダグラス・ボガードだ!」


「ダグラス・ボガードか……全力で来いッ!!」


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