第百三話◆二人の新規メンバー

「……ダグラス・ボガードよ。これにサインせよ」


「なッ……!」手渡された紙を見て手が震えるダグラス。「な、何故ですか、ロドルフォ王!」


「決まっている。この国で一番の使い手であるお主ならば、そこのトール・ヨシュアの頼みを叶えられるからだ。」ロドルフォ王はそう言った。正直ありがたいことだった。


「ですが、何故会ってすぐの人物にここまで……?」ダグラスは納得出来なかった。


「元々、我々巨人族と人間族は親交が深い。今回命令を下したのは魔族だ……とのことだったが、皺月の輝きのメンバーに魔族がいない。それなのに、堂々と七代目魔王ガルイラ殿の話を持ち出せる理由は、そこにサラ・キャリヤーがいるからであろう?トール・ヨシュアよ。」


「……左様でございます。」好矢はそう返した。


「さらに、信ずるに値する理由はもう一つある……。サラ・キャリヤーがいることで、皺月の輝きが魔族と関係を持っている事は証明された。そして、信ずるに値する理由とは簡単に人を信用しない魔族が、皺月の輝きのメンバーに魔族を加入させなかったことだ……」

ロドルフォ王は、皺月の輝きのメンバー一人一人を見ながら言った。

「それはつまり、魔族が皺月の輝きへ監視としてメンバーを加入させずとも、期待通りの働きをしてくれる…と信用している証。あの魔族がそこまで信用している人間族を、我々巨人族が信用しないでどうする?これからも人間族との良好な関係を保つ為に我が国からは騎士団長兼マフィアの首領を務める貴様を出す!」


サラッと言ったが、騎士団長とマフィアの首領とはどういうことだろうか……?

しかし、路地裏を通って城まで案内されたというのは、早く行けるように…という点と、自分はマフィアとも関わりがあるという事を暗に伝えようとしていたのだろうか?


「異論は無いな?皺月の輝きのトール・ヨシュアよ」


「もちろんでございます。ご協力感謝申し上げます。」そう言うと好矢を筆頭に、片膝を付いている皺月の輝きのメンバーは全員頭を下げた。


「しかし……全種族を仲間に……か。ドワーフを味方にするのは大変かもしれぬぞ?」ロドルフォはそう言った。


「何故でしょうか……?」


「そこにエルフ族がいるからだ。……お主、名は何という?発言を許可する。」


「ボクはメルヴィン・バートと申します。サヴァール王国の第二王子です。」メルヴィンは名乗る。


「…!お主があのメルヴィンか!大きくなりおったな……!」ロドルフォは驚いている。


「えっ…?」


「そう警戒するな。余がこの国の王に着任した時、赤子であったそなたと一度会っておるのだ。」ロドルフォは当時を思い浮かべ、微笑みながら言った。


「そうでいらっしゃいましたか……!」


「して……メルヴィンよ。皺月の輝きにドワーフ族が加入することとなった場合、どうする?」


「もしそうなってしまったら、抜けたいのは山々ですが……ドワーフ族を加入させない為に奔走するかと。」平然と言い放つメルヴィン


「トール・ヨシュアよ、こういうことだ。エルフ族とドワーフ族は非常に仲が悪い。行動を共にするとはとても思えんな。」


「だとしても、これは魔王ガルイラ様からの命令です。必ず遂行致します。」好矢はハッキリとそう言った。


「…………」不満そうな表情を浮かべるメルヴィン。世界の危機よりも種族間同士の仲の悪さを優先させるバカはどこにもいないだろう。そんな事をして共倒れになるくらいなら協力し合おうとするはずだ。

メルヴィンもそれは解っていたが、やはり嫌いなものは嫌いなのだろう。無論、仲良くしろとは言わないし、好きになる努力をしろとも言うつもりはない。


「すまないが、メルヴィン…ドワーフを仲間に引き入れても我慢してくれ」好矢は言った。


「今のボクは、サヴァール王国の第二王子である前に、皺月の輝きのハンターの一人ですから……」メルヴィンはそれだけ言うと、何も喋らなくなった。


「コホン……トール・ヨシュアよ。先程ダグラスに渡したその紙に、お主の名前もサインして、冒険者ギルドへ行ってパーティ加入の申請をしておけ。」ロドルフォはそう言って、城へと戻って行った。


「ありがとうございます……」その背中へ御礼の言葉をかける好矢。



――冒険者ギルド。


「……かしこまりました。以上で手続きは完了です。ダグラス・ボガード様はこれより皺月の輝きのメンバーとなりました。」ギルドの係員が言う。

無事に巨人族の味方を付けることが出来た。あとメンバーに入れていないのは、龍神族とドワーフ族と魔族だ。

魔族は頼めば仲間になってくれそうなものだが、特にドワーフ族は難しいだろう。メルヴィンが嫌がっていたが、ドワーフ族も同じ気持ちのはずだ。


「とりあえず、今後の行き先の話をしよう。」好矢はそう言って、仲間を連れて冒険者ギルドの中にある大きなテーブルの所へ集まった。


「これで皺月の輝きのメンバーが、俺、サラ、アウロラ、メルヴィン、ロサリオ、ダグラスになった訳だけど、今後の行き先は――」好矢が話していると聞き覚えのある声が聞こえた。



「…それで、どこにいる?」


「個人情報ですから……それに貴方上級魔族でらっしゃいませんか?」


「妾は上級魔族ではない。良いからトール・ヨシュアはどこにいる?」



声が聞こえた方を見ると、ガリファリアがいた。そこへ近付く好矢。


「ガリファリア!どうしたんだ?」


「トール・ヨシュアか!やっと見つけたぞ!」


「え?」


「仲間にしたかったんだろう?妾を。」ある程度荷物をまとめて来ている。


「もちろんそれはそうだけど……どうしてここが?それに、お前には役目があるんだろう?」


「妹に仕事を引き継がせてきた。」


「そうなのか……すみません、係員さん。彼女も皺月の輝きへの加入手続きをお願いします。」


「え?わ、分かりました……。」そう言って係員さんは用紙を出す。



一通り終わり、新しく味方が出来た為、一度全員の魔法モニターを確認しておくことにした好矢たち。


名前:刀利 好矢 所属:皺月の輝き

職業:放浪魔導士 趣味:草むしり・魔物狩り

魔力:6078

使用可能魔法属性:水・氷・風・雷・土・光・植物・金属

使用不可魔法属性:火・闇

得意魔法属性:植物



名前:刈谷 沙羅 所属:皺月の輝き

職業:エクスナー 趣味:好矢をイジること

魔力:1998

使用可能魔法属性:暗黒

使用不可魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・闇・植物・金属

得意魔法属性:暗黒



名前:アウロラ・ベレス 所属:皺月の輝き

職業:魔王軍上等魔導兵 趣味:料理

魔力:5211

使用可能魔法属性:火・氷・雷・土・光・闇・植物・金属

使用不可魔法属性:水・風

得意魔法属性:氷



名前:メルヴィン・バート 所属:皺月の輝き

職業:サヴァール王国第二王子 趣味:読書

魔力:4983

使用可能魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・闇・植物・金属

使用不可魔法属性:なし

得意魔法属性:火



名前:ロサリオ・デイル 所属:皺月の輝き

職業:放浪魔導士 趣味:アデラの事を妄想すること

魔力:1327

使用可能魔法属性:火・氷・風・雷・土・光・闇・金属

使用不可魔法属性:水・植物

得意魔法属性:火



名前:ダグラス・ボガード 所属:皺月の輝き

職業:イストリアテラス騎士団長、マフィア首領 趣味:魔物狩り

魔力:442

使用可能魔法属性:水・氷・土・植物・金属

使用不可魔法属性:火・風・雷・光・闇

得意魔法属性:土



名前:ガリファリア・エルニウム 所属:皺月の輝き

職業:遺跡の守り人 趣味:人間観察

魔力:12214

使用可能魔法属性:火・水・氷・風・雷・土

使用不可魔法属性:光・闇・植物・金属・一般魔法

得意魔法属性:風



「メキメキ上がるわね、ヨシュア……」呆れたように言うアウロラ。

一人目を見張る物があるのはガリファリアだ。一人だけ桁違いに強い。何せ、皺月の輝きのトップであった魔力の二倍以上の魔力を有しているのだ。


「ガリファリア、お前…そんなに強かったのか」驚く好矢。


「当然だ。これくらいの強さでなければ、遺跡の守り人は務まらない」


前にも聞いたことがあるのだが、遺跡の守り人というのは何なのだろうか……?


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