第八十一話◆会議

「学長を……暗殺するって……!?」サミュエルは当然驚く。


「ちょっとレオ、サミュエルくんをビビらせないで!」エリシアが口を開く。

「心配しないで。本当にシルビオ学長の命を奪うわけじゃないの。あの人の中の邪悪なる者を殺すの。」


「邪悪なる者って……あのコールブランドで封印されたおとぎ話の……?」サミュエルは知らなかった。

遠い地で、自分が一番慕っている先輩が英雄と共に旅をしていることを。


「アデラが手に入れた情報によると、シルビオ学長の中に邪悪なる者がいるそうだ。」レオが教えてくれる。


「そうなんですか……確か、五百年前の戦いでは六代目ガルイラっていう魔王の中にいるんでしたよね?。」


「あぁ、ちなみに好矢くんはそのガルイラのご子息である、七代目ガルイラ様の命で邪悪なる者を倒すための最強のパーティを作る旅に出掛けている。」


「最近、ヨシュア先輩のこと教えてもらえないなって思っていたら、旅していて分からなかったんですね。」サミュエルは一人で納得する。


「実はもう旅のことは知っていたんだが、お前にはトーミヨに対する不信感を抱かせたかった。課外授業をしている間、教官同士で小競り合いが無かったか?」


「……あ!ありました!最近どんどんダメな学校になっていきますよね。」サミュエルが答える。


「あれを仕組んだのはエリシアだ。」とレオが言う。


「あら、仕組んだのは私だけど実行したのはレオでしょ?」さも、エリシアは何もしていないというスタンスで話している。


「…えっと……どうやったんですか?」


「薬師の教官いるでしょ?」


「レイラ・レヴァイン教官ですか?」


「あの人、最近結婚したのね。それで彼氏からもらった指輪をコッソリ盗んで、いつもアナウンスしてる女の教官のカバンに入れて、その代わりに教官が付けてる指輪を、薬師教官のカバンに入れたの。」


「……それ、犯罪じゃないですか…。」サミュエルは言う。


「私がやりたかったのは、そうすることで教官同士のいざこざを作って、学生、教官共にこの学校に対する不信感を抱かせたかったの。そうするとシルビオ学長が孤立するでしょ?」


「なるほど………。」サミュエルは納得はしていたが、この行為自体は相手を陥れること以外の何物でもないので進んで褒めるべきものとは思えなかった。


「シルビオ学長が孤立したら、次はどうすると思う?」エリシアが言う。


「えっと……解らないです。」サミュエルは悪い笑顔をしているエリシアを見る。


「学長が得意な属性は光属性……あの光属性を使って、私達をマインドコントロールするはず。」


「それって……マズくないですか?」


「うん、だからどうやってそのマインドコントロールから脱するかを考えていたの。」


ソフィナは少し考えながら言う。

「だったらエリシア。おそらく学長は、学校に一番人が多い時間帯を狙うはず……それを考えると、二コマ目と三コマ目の間の時間になる可能性が高い。」


「なるほど……」


「二コマ目と三コマ目の間の時間でトーミヨを抜け出すなんて無理だぞ?」


ソフィナの意見に同意した四学年がみんな休むと、当然シルビオは警戒する。だからギリギリまで学校に留まっていたかった。


「この大会議室を使えばいいのでは?」サミュエルが言う。


「どういうこと?」エリシアは聞いてくる。


「一コマ目の時間が終わった直後に大会議室を使うことを教官に話しておくんです。二コマ目の時間が始まって10分ほど経つと、廊下を歩く教官はいなくなります。その隙を狙って学校を抜けるんです。」


「なるほど……残り80分あれば余裕で学校から抜け出せるな。二コマ目の時間丸々を使用するということにしておけばいいわけか。」ソフィナが納得する。


「ところで…ヨシュア先輩は今はどうしているんでしょうか?」


「課外授業で好矢くんと会ってきたよ。」アデラが言う。


そして初めて聞かされた。ヨシュア先輩と一緒に旅をしているのがサラ・キャリヤーで、仲間には四学年の皆さんの先輩であるトーミヨOBのアウロラ先輩。

さらにエルフ領地で仲間にしたエルフ族の男性……その四人が旅をしており、龍の渓谷で龍神族を味方につけようとしているという話を聞いた。


「でも……龍神族って本当にいるんですかね?」サミュエルが聞くとアデラが答える。


「龍の渓谷で会ったよ?私達依頼遂行してたら、アグスティナ魔帝国の兵士に襲われたんだけど、ヨシュアくんたちと龍神族の女性が助けてくれたの!」


「じ、実在したんですね………。」


「俺も驚いたけどな。」レオが言う。アデラ先輩とレオ先輩は同じ班だったようだ。


「とにかく、サミュエルくんも私達と一緒にトーミヨを脱出してくれ。来年には卒業が控えているし、トーミヨ内部との情報伝達が出来るようにしたい。」


「分かりました。」ソフィナの言葉に従うことにしたサミュエル。


一段落ついた所で腕時計を見るレオ。

「……ところで、サミュエル。もう四コマ目の講義始まってるけど、行かなくていいのか?」


「えっ…?って、うわあぁぁ!早く言ってくださいよ!!」急いで大会議室から出て行くサミュエル。


四学年の講義は、課外授業で皆が戻って来るか、戻って来なかった生徒の死亡確認が取れた時から始まる。



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