第八十二話◆帰還
「さて……私はこれから
ソフィナ、アデラ、レオ、エリシアの四人は廊下を歩きながら話を続けた。
「じゃあ俺たちも付き合うか。」そう言ったのはレオだ。ソフィナ以外の三人も、皺月の輝きに参加したい魔導士たちだ。
レオは魔法剣士を目指している存在なので、ガブリエルや好矢と同じだが、魔導士が多い以上物理型は一人でも多い方がいい。
「エリシア、お前魔力いくつになった?」レオが質問する。
「アンタ、聞かなきゃ良かったって後悔するわよ!前に測った時より上がって、今は1277よ!」
「おっと……さすがの数値だな!俺も1000は超えてるけどな!」
「なッ……!」
トーミヨの毎年の入学者は魔法学科だけでも40~50人くらいになるものだが、好矢とロサリオを含めて25人に届かない程度の人数だ。
何故この年だけ?と思われがちだが、仕方ないとも言える。
今までの例にない、進路相談の教官であるシルビオが学長に就任したため、世間のトーミヨへの期待度が低くなったのだ。
しかし、今回のアグスティナ魔帝国然り、彼が学長になることによってトーミヨの就職先が広がったのが現実。魔導士として食っていきたければトーミヨへ入れ!と言われる時代だった。
そんな中でも、在学中に黄金期と言われているのが、この四学年の魔導士たちだ。
彼らは五学年がようやく到達する魔力を軽々超えている化け物たちであり、それ故、世間からの期待度も高いのだ。
もうソフィナは、四学年でありながら学内二位の魔力数値、そして高度な魔導語学を学んでいる。
因みに学内一位はもちろん、アンナ・ヨエル……ソフィナ・ヨエルの姉である。
ただ、アンナは特に皺月の輝きに参加したいと考えてはいない。先行き不安なハンターよりも、堅実に稼ぎたいそうだ。
「せっかくだし、一度魔法館に寄ってから戦闘フィールド借りに行かない?どうせ私が一番低いけど……。」アデラは自虐的に発言した。
「まぁ……アンタが一番低いのは分かってるよ。」エリシアがアデラの肩をポンと叩く。
――魔法館。
「ここに来るのも久しぶりだな……出発する前日に来ただけだもんな……。」レオはそういうと、四人が魔法モニター付きのイスに座った。
「「「「魔法モニターオン!」」」」
名前:ソフィナ・ヨエル 所属:国立魔導学校トーミヨ
職業:魔導士見習い 趣味:散歩
魔力:1401
使用可能魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・闇・植物・金属
使用不可魔法属性:なし
得意魔法属性:雷
名前:アデラ・エイジャー 所属:国立魔導学校トーミヨ
職業:魔導士見習い 趣味:植物学の勉強
魔力:898
使用可能魔法属性:火・水・氷・風・雷・土・光・植物
使用不可魔法属性:闇・金属
得意魔法属性:氷
名前:レオ・ヒース 所属:国立魔導学校トーミヨ
職業:魔導士見習い 趣味:剣の修業
魔力:1091
使用可能魔法属性:火・氷・風・土・光・闇・金属
使用不可魔法属性:水・雷・植物
得意魔法属性:風
名前:エリシア・アーネット 所属:国立魔導学校トーミヨ
職業:魔導士見習い 趣味:魔法訓練
魔力:1277
使用可能魔法属性:火・氷・雷・土・光・闇・植物・金属
使用不可魔法属性:水・風
得意魔法属性:雷
表示されて受け取ったカードを各々見せ合う四人。そこへ――
「おーい、ここにいたか!」後ろから声を掛けられた――ガブリエルとファティマだった。
ボッ…!!
「ぅ熱ちッ!!」いきなりアデラがガブリエルが被っていた帽子を燃やした!
慌てて魔法館の石床に帽子を捨てて水魔法をかけるガブリエル。「ちょっ……何すんだよ!」
「私という彼女がいながら……!ファティマとペアルックですって……!!」
ガブリエルは斧のマークが描かれた緑色の三角帽子を被っていたのだが、全く同じ帽子をファティマも被っていたのだ。
アデラはモテまくるが、付き合ってみるとメチャクチャ嫉妬深い女の子だった。
「ち、違うって!聞いてくれよ!!」慌てて説明をするガブリエル。
「あら……悔しいの?羨ましいの?」アデラを挑発するファティマ。
「ぶっ飛ばしてやるっ!!」ブチギレるアデラ。……その後、魔法館は阿鼻叫喚と化した。
魔法館の係員に叱られた六人。アデラは鼻息荒く「フーッ!フーッ!」と怒っているが、他の皆は落ち着いた所で、ガブリエルに釈明をする時間が与えられた。
「――そういうわけで、俺たちが行った魔族領で受けたハンターギルドの依頼で、依頼主の期待以上の活躍をしたってことで、彼が経営する魔防具店にある防具をプレゼントしてもらったんだよ。
…別に俺たちがペアルックにしようって言ったわけではないし、依頼主が魔法防御と消費魔力を抑えられる質のいい帽子ってことでプレゼントしてくれたんだよ。」
ガブリエルは何一つ悪くはないが、何とかアデラに許してもらおうと必死に説明する。
「…………」黙っているアデラ。
「えっと……機嫌直してくれよ。な?」アデラに近付くガブリエル。アデラは俯いている。
「……三回。」
「え?」
「デート三回で……許したげる……。」泣いた後のように、目を赤くしたアデラが言った。
「か…かわいい……」ガブリエルはついポロッと言ってしまった。
「またそれ!?」再び機嫌が悪くなるアデラ。「ご、ごめん!」トーミヨの中でも珍しい強くて屈強な男ガブリエルが、オドオドしている貴重な場面だった。
――数分後、戦闘フィールドへ向かう六人。
ガブリエルの腕には他の女に取られまいと、アデラがガッチリくっついている。
「羨ましいもんだな、ガブリエル!」笑いながら言うレオ。
「ハハ…茶化すなよ…」散々責められて元気が無いガブリエル。
「意外だな……何回もフッておいて、いざ付き合うとアデラの方からベタベタとは……。」ソフィナが意外そうに言う。
「俺もビックリしたよ。」ガブリエルはそう言うが……
「だってガブ、私とくっついてくれないんだもん!!」また可愛らしいことを言うアデラ。
「アデラ…アンタ計算じゃなくて天然でそんなこと言ってるの?」エリシアが目を丸くして聞く。
「私、数字苦手だからそういうの無理。」キッパリと否定するアデラ。
「計算ってそういう意味じゃないんだけど……」
「そうか……計算か……。」何やらメモを始めるソフィナ。恐らく好矢へ向けてのものだろう。
「やめとけ、ソフィナ。ヨシュアは恐らくもう……」
「何だ!?好矢くんにもう彼女がいるのか!?」まだ言い終わっていないのに、かなり食い付いてくるソフィナ。
「……そういえば、サラ・キャリヤーさんと、かなり仲良い感じだったよ。」アデラが言う。
「うぐぅ……」ソフィナが初めて音を上げた。
――戦闘フィールド。
戦闘フィールドに到着した六人。彼らは話し合って、模擬戦をやることになった。
ソフィナ・レオ・ファティマ vs エリシア・ガブリエル・アデラ というチーム分けだ。
隊列は二チームとも似ており、レオとガブリエルの魔法剣士が前列。残りの女性が後列になったが、ファティマの武器は槍の為、中列に加わった。
ガブリエルは魔法館で魔力を調べていないので気付いていなかったが、彼は既に四学年で二番目の魔力を手に入れていた。つまり、エリシアを超えていたのだ。
魔力が高い物理型というのが、どれ程強いか……好矢を見れば一目瞭然だ。彼は魔法の扱いに長けているが、剣を使わせたらもっと強い。
レオとガブリエルも、そこまでの強さには到達していないものの、トーミヨの中では群を抜く強さを持っていた。
彼ら二人もそれが自信になっている部分はあるが、いくらやっても好矢には追い付けないという劣等感と、いつか好矢を超えてやるという上昇志向で飽くなき探究を続けている。
そんな彼らの戦いが、どれほど刺激のある戦いとなるか……その模擬戦を窓から眺めていたのはシルビオ学長だった。
「俺の手駒たちよ…強さを見せたまえ……!」
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