第四章★サミュエルの戦い編
第八十話◆企み
「戻ったぞ!」ソフィナ、エリシア班がドアをバーン!と開けて、課外授業から教室に戻って来た。
……初日は二組か……かなり早く帰ってきたなお前たち。実戦教官が褒めてくれた。
課外授業を終えて帰って来たのは、レオ、アデラ班とソフィナ、エリシア班だった。レオ、アデラ班は本当は依頼をこなしていないのだが、
ソフィナたちに重要な事を伝えるために、好矢たちにリザードマンを狩ってもらっている。
とはいえ、魔法学科の中でも特に遠い所へ行かされたレオとアデラが一番乗りで帰って来たということは、他の皆はかなり苦戦しているということにもなる。
アデラはガブリエルのことが心配になる。
「ガブ、大丈夫かな……?」
「アイツは俺よりは強いし、大丈夫だろ。」レオが言う。
「そういえば、ソフィナちゃん。旅先でヤバイ奴と遭ったよ!」アデラが思い出したように言う。
「オルテガって奴か……アイツメチャクチャ強いみたいだな……。」レオが言うが…
「違うよ、ロサリオだよ。」アデラが言う。
「ロサリオに会ったのか!?」ソフィナが驚く。
「うん……私達を助けてくれたの。」
「まだ、アデラちゃんアデラちゃんとか言ってなかったか?」ソフィナが言う。
「あ~…うん……言ってた。」困ったように言うアデラ。
「まぁ、ヨシュアが余計なことを言っていなければ、ガブリエルがアデラの彼氏ってことは判らないはずだが。」
「ヨシュア君の性格からして、言うと思うよ。」
「好矢くんとも会ったのか…どこで会ったんだ?」ソフィナが言う。
「龍の渓谷で会った。龍神族を仲間にするつもりだったみたい。」
「そうか……。」
「それと……もう一つ、何よりも重大なこと。」アデラがソフィナとエリシアに伝えようとしている内容は勿論……
「邪悪なる者の正体が分かったの。」
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「……今日はここまで。」教官がそう言って教室から出て行く。
「ありがとうございました!」二学年の生徒たちは言う。グレン、ドリス、サミュエルたちのクラスだ。
グレンはサミュエルの所へ行って、話し始める。
「サミュエル、今日、ソフィナ先輩たちが帰って来たらしいぜ。」
「そうなの?一度挨拶しに行かないと。」サミュエルが席を立つ。
「でもな……何やら四人で会議みたいなことしてるらしいぜ。」
「会議? 何の?」
「それは知らねえよ。でもかなり真剣な会議だそうで、トーミヨの大会議室使ってるらしい。」
大会議室というのは、元々部屋自体に防音魔法が掛かっており、外から盗み聞きすることも出来なければ、盗聴も出来ない完全に外界との音を遮断することが出来る部屋だ。
基本的に教官たちが使うのだが、予め教官たちに何時から何時まで使用するという旨を伝えておけば、学生間でも使えるようにしてある部屋だった。
ちなみに、問題点は一つあって、学内の教官や学生の呼び出しも、聞こえないのだ。
それ故、利用する学生の名前を全員分扉の前の台帳に記入しなければならないという決まりがあった。
「ノックしたら入れてもらえるかな?」
「まぁ……話を中断してドアを開けることはしてくれるかもな。でも先輩たちの問題だろうし、下級生の俺たちが入れてもらうのはどうだろうな?」グレンはそう言ったが、サミュエルは一応行ってみることにした。
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「お、あれが大会議室か…。」
トントントントン……ドアを四回ノックするサミュエル。
「……」しばらく待つと、ゆっくり扉が開くと、ソフィナが顔を出した。
「…キミか。どうした?」
「えっと…今日帰ってきてらっしゃったということで、ご挨拶をと思いまして。」サミュエルが言うと、「…………」しばらく考えた表情をするソフィナ。
「おい、ソフィナ。誰だ?」奥から男の人の声が聴こえる。おそらくレオ先輩だ。
「ちょっと今、サミュエルくんが会議室に来てな……」後ろにいるであろうレオに声を飛ばすソフィナ。
「ちょうどいい。サミュエル!入ってこい!」奥からレオ先輩の声が聞こえてきたので、失礼します。と言って大会議室に入れてもらうサミュエル。
中に入ると、大きなテーブルを挟んで、アデラ、レオ、エリシア先輩が座っていた。
「座れ。」ソフィナはそう言って、イスを引いてくれた。
「あ、すいません、ありがとうございます。」
「レオ…サミュエルを入れても良かったのか?」ソフィナがレオに聞く。
「問題ない。……サミュエル、お前はこの学校の現状をどう思う?」思いもよらない質問がきた。
「この学校の現状……そうですね……昔よりは危険かと。」サミュエルは言った。
「ほう……理由は?」
「去年までなかった就職先があるそうですね?」
ちなみに、去年までなかった新しい就職先というのは、アグスティナ魔帝国だ。
アグスティナ魔帝国に入るためには、成績が一定以上である必要があるが、さらに様々な技能が求められる。
もちろん待遇もよく、新卒就職で二等兵及び二等魔導士から始まるが月収40万コイン以上が保障されている。その為、入学希望者が後を絶たないのだ。
「サミュエル、もしも俺たちの話に乗り最後まで付いて来る気があれば、お前に頼みたいことがある。」
「何でしょうか?」
「……シルビオ学長の暗殺だ。」
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