第五十二話◆四度目の模擬戦

今日は界歴1621年8月31日……。暑い日が減ってきたが今日もまだ暑い。

私はこれから模擬戦の準決勝の試合が始まる。


「さぁ…続いてはCチームvsBチームだァーーーッッ!!」


ワアァァァァァーーーーッ!!

戦闘フィールドを囲うようにして学生達の歓声が挙がった。戦闘はまだ始まってもいないのに、物凄い熱気である。


Cチーム控室

「いけそう?あの技。」

「当然だ!」

「…じゃ、ソフィナたちに一泡吹かせてやろうじゃないの!!」

「おう!」


Cチームの控室から、ガブリエルとアデラが飛び出す!

Bチームから登場したのは、ソフィナとレオだ。


今年の魔導学校トーミヨの四学年魔法学部……つまり、好矢の同期の私たちは、過去最少の二十二人。ロサリオが逮捕され、好矢が自主退学した結果の人数だ。

これでは、上手く三人や四人のチームを作ることが出来ない為、二人一組でチームにし、優勝候補である私ことソフィナのチームを一度不戦勝とさせることで、

全11チームでトーナメント形式の模擬戦を行うこととなった。


他の薬学部などの学科には模擬戦などはないので、やはりこの模擬戦はトーミヨ最大の催し物の一つとなっている。



好矢は一年で凄まじい魔力の進化を遂げたが、やはりソフィナやガブリエルも着実に魔力を上げていた。

ソフィナの魔力は1001。最後に好矢と会ったのが三学年が始まったばかりだったが、その当時は630だった。やはりソフィナは天才だ。

ちなみにアンナは五学年最高の魔力を持っている。現在1780らしい。五学年の最初に教わる、魔法を使い続けるものとは違う、効率の良い魔力の上げ方で一気に上げたのだ。

ガブリエルの魔力は762、アデラは616、エリシアは941、レオは755だった。



さて、一回戦でD、F、H、I、Kチームが。二回戦で、A、E、Jチームが脱落して、三回戦へ進出したのは、B、C、Gチームだ。

これから始まるのが、四学年一位の魔力量と実力を誇る私がリーダーのBチーム、男子学生で一位の魔力量を誇るガブがリーダーのCチームだった。

Gチームのメンバーは確かに強いが、私達のどちらかを相手にするということで、戦意喪失していることだろう。ふふっ。


「では……四学年模擬戦第三試合…始めッ!!」


「「「「発動!!」」」」始めの合図と共に四人全員が魔法を発動させた。


ソフィナは、雷球をガブリエルに発射。ガブリエルは、ディフェンダーという防御能力に優れた騎士剣を生成。

アデラは、ガブリエルに氷属性魔法を付与。レオは、土属性の物理魔法障壁を自身とソフィナに展開。


ガブリエルとアデラの作戦は、ソフィナの最近の攻撃が、上級魔法の雷球攻撃をメインにしているという癖を付いたものだった。

隙も少ない代わりに、威力が低い下級、中級攻撃魔法は基本的に頭上から雷光を落とす……所謂弱い雷のようなものだ。

雷球は、空気中のマナではなく、自身の魔力そのものを凝縮させて対象に発射させるもので、発動後の隙は発射した時の反動がある為、大きいのだが、非常に威力が高い。

全てひらがなで詠唱文を書いたとしても、大きな岩10個を衝撃波だけで軽々吹き飛ばせるほどの威力がある。

その威力は、第一試合のBチームvsIチーム、第二試合のBチームvsAチームの時、Iチーム、Aチームのゲージを一撃で空にしていたほどのものだ。

ちなみにもちろん、両チームは氷属性の魔法障壁を張っていたのに、障壁を突き破り、ゲージを一瞬で空にされていた。


だからこそ、その対策を立てなければガブリエルたちCチームに勝ち目は無い。

ガブリエルは自身が金属魔法で創り出した、ディフェンダーという騎士剣にアデラが氷属性の魔法反射障壁を発動させる。


これでガブリエルのディフェンダーは、魔法を防ぐことでその魔法を相手に反射させることが出来る。


「オラァァァァッッ!!」防ぐだけで良いのだが、気分が乗ったのかガブリエルは思い切りディフェンダーの刀身の部分で、ソフィナが放った雷球を打ち返した。

ソフィナを狙おうとしたが、ソフィナが咄嗟に攻撃を躱したのでレオに直撃した!


「ぐあぁぁぁぁぁッ!!」Bチームのゲージは土属性障壁を突き破り、一気に八割削れる!!

そこでソフィナが呟いた。

「こ、小手調べの為に低火力で放っておいて良かったわ……。」


相手は頭のキレるガブリエルと、魔力は少ないが、魔力自体の扱い方には長けているアデラの組み合わせだ。何かしらの対策を立ててくるはず……。

そう考えて、多少低めの威力で雷球魔法を放った。

つまり、低めの威力にしても土属性障壁を突き破ってゲージが八割削れるほどの圧倒的な威力だった。


「好矢くんが居たら、鼻で笑われるだろうがな!………………発動ッ!!」ソフィナは雷光攻撃に変更し、アデラを狙った!


アデラは魔法反射効果をガブリエルに付けたばかりなので、実戦教官の障壁……つまりゲージに直接ダメージを与えられる!そう考えて行った攻撃だ。

しかし……「発動!!」アデラが咄嗟に魔法障壁を発動した!


三学年で教わる、魔法の同時発動である。

氷属性魔法の魔法反射障壁と、魔法防御障壁を同時に詠唱待ちではなく、発動待ち状態にして行う手法である。

実際は二つ以上を発動待ちにして、一つずつ発動するものだ。好矢が当たり前のようにやっていた正真正銘の同時発動が出来る学生はこの学校にいるのだろうか…?


アデラが創り出した魔法障壁によって、Cチームのゲージは三割程度のダメージで済んだ。

……つまり、魔法防御に長けている氷属性の防護魔法を使っても一撃で突き破って、ゲージに三割のダメージを与えてきたのだ。


ガブリエルとアデラは同時に確信した。……同期で一対一でソフィナと戦って勝てる人物がいるとすれば、好矢だけだ……と。


二人がそれを考えた一瞬の間に、レオによる風属性の竜巻とソフィナによる雷球攻撃が放たれた!

ガブリエルは雷球を跳ね返して攻撃をしてくるが、レオが得意とする風属性魔法の竜巻の中に雷球を放つことで、

攻撃対象が風で上空に巻き上げられ、身動きがとれない所を、雷球で仕留めるという完璧な戦術だった。


魔法反射効果の付いたディフェンダーを持ったガブリエルではなく、魔法障壁が破られた無防備な状態のアデラが狙われたのは当然のことだった。


バリバリバリバリ……!!

アデラの身体に雷球が命中し、激しい火花が散って、アデラは地面に落ちる。


Cチームのゲージは空になり、Bチームの決勝進出が決した。


「準決勝……Bチーム vs Cチームは……Bチームの勝利だぁぁぁーーーー!!」いつも以上にハイテンションなアナウンスをしてくれる教官。


ワアァァァァァァーーーーーッッ!!!という歓声と共に、界歴1621年度四学年の模擬戦の決勝チームが決まった。




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