第五十話◆魔力増幅ポーション・完成!

時刻はもうすぐ昼の11時。ラエルの村から少し出た場所で魔法の訓練と一緒に、調合をして研究をしている。

エンテルは眺めているだけで飽きたのか、ライドゥルに乗ってラエルの村の周りをぐるぐる走り回って遊んでいる。


「そういえば、この組み合わせやってなかったな……。」


好矢はそう言いながら取り出したのは青いリンゴだ。

しばらく色んな組み合わせをやったり、注ぐ魔力量を変えてみたりと色々やっていた。


ちなみに、ポポイ草、ぺっぺ草、ソムソム草(赤、白、青の草)を全て混ぜ合わせて作ると、黒っぽい液体が出来た。

これ単体だと特に何もなく、マズイだけだった。

とりあえず、何かに使えるかもしれないので、取っておくことにはしておいた。


さらに、薬草にさっきの黒い液体の組み合わせ、魔力を込めた雑草に黒い液体の組み合わせなどをやってみると、

薬草と混ぜると、高い効能の魔力回復ポーション。雑草と混ぜると、高い効能の体力回復ポーションになった。


これから行うのは、今までやろうとすらしなかった、青いリンゴの皮や果肉を入れてみることであった。

これらの組み合わせは適当に思いついたものを混ぜ合わせており、効果のないものが一番多かった。そういった場合は、飲むか捨てるかしている。

黒い液体をとっておいた理由は、他のものと違って、赤、白、青を混ぜて色が黒くなるというのは、他の効果の無いポーションの特徴とは違って、何かしらの効果があると思ったからだ。


エンテルはライドゥルで近くを通り過ぎようとした時、ライドゥルから降りて声を掛けてきた。

「よひや!わたひもたべる!」どうやら、青いリンゴを食べようとしているように見えたらしい。


「じゃあ、これ食べな。」好矢はそう言って、持っていた青いリンゴとは別の青いリンゴをカバンから取り出してエンテルに渡した。


金属魔法でナイフを作り、青いリンゴの皮を剥いて、それをポーションの葉っぱと一緒に入れてみた。

入れたのは、ポポイ草(赤)、ソムソム草(青)、青いリンゴの皮である。

二つの草には葉脈しっかりと魔力を注いである。それをいつものポーション作りの要領で作ってみる。

…………出来た。


赤紫色のポーションが、そこにはあった。


今まで偶然完成した時とは違う作り方だから、よく似ているだけで魔力欠乏症を治せるものでは無いのかもしれないが、それは飲めば分かることだ。

ちなみに魔力300を消費して作ったので、読みが正しく、かつ、俺が知っている赤紫色のポーションであれば、俺の最大魔力は300増えるはずだ……と踏んでいた。


グビッグビッ……プハァッ!

そんなに美味しくはないが、青いリンゴの皮のおかげで飲めなくもない味に仕上がっていた。

飲み切ってしばらくすると、身体から力が湧いてきた。


「これは……成功か……?」ラエルの村にはギルドも魔法モニターも無い事を飲んだ後に思い出したので、確認のしようがなかった。


一応好矢は、一応もう二本作っておいた。両方今度は魔力を400使用したものだ。果肉は好矢とエンテルの二人で分けた。

食べながら、好矢は気になったことを聞いてみた。

「なぁ、エンテル。」


「なに?」


「お前…コールブランドって聖剣知ってるか?」


「おぼえてる。」


「……覚えてる?どういうことだ?」


「わかんない。…でも、おぼえてる。」


「誰かから聞いたのか?」


「ううん、なんかわかんないけど、おぼえてる。」


「知ってるってことか?」


「あっ!そう!してる、してる!」エンテル知ってるというワードが出て来なくて覚えてると言ったのだろう。

しかし、彼女に聞いたことで、かえって解らなくなってしまった。

昔見たことでもあるのだろうか?だとすると、エンテルは魔王城へ行ったことがあるということになる……それはないはずだ。


いくら考えても仕方がないので、とりあえず赤紫色のポーションをカバンにしまって、ラエルの村の宿屋の部屋へ戻った。

「名前……思い付かない…どうしようか…………」

しばらく考えたが、いい案が出なかったので分かりやすく「魔力増幅ポーションにしよう。」と決めた。


――翌朝。


「お世話になりました。」

「おせわになりまひた!」

好矢とエンテルは揃って挨拶をした。


「ありがとうね!そこらの放浪魔導士と違って、部屋も綺麗に使ってくれてありがたいよ!」

おばさんはそう言ったのだが、放浪魔導士って部屋の使い方も汚いのか……評判悪そうだな……。

医者を目指す人間は、人から受ける印象もかなり大切にしないとならない。清潔感があり、患者さんが信用出来るような印象が無ければ務まらない仕事だからだ。

どこかちゃんとした町で定職に就いた方が良さそうだ。


「じゃあ、エンテル。行くよ。」


エンテルと一緒に村を出て、ロープで括ってあったライドゥルのもとへ行く。

ライドゥルは村の入口でとめていたので、他の魔物から襲われたりしないように、門番さんが交代で、門の警備をしつつライドゥルの世話をしていてくれた。


「門番さん、ライドゥルがお世話になりました。」


「あぁ、君たちか。気にしなくていいよ!」


「少ないですが、お礼です。」そう言って好矢は銀貨を10枚(1000コイン)渡した。

ただのお礼でこんな額を渡しているわけではない。門番さんはエサ代などを、自分のお金から出していてくれていたのだ。


「うん、受け取らせてもらうよ。……これ、基本的なエサな!今後はほったらかしちゃダメだぞ!いいな?」

門番さんがライドゥルのエサを紙に書いてまとめていてくれた。


「すみません…。ありがとうございます。」


好矢とエンテルはライドゥルに乗り、更に東の地……魔王都ガルイラへと進むのであった。




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