第四十五話◆安定

「いやぁ……それは……ハハハ。」好矢は適当に誤魔化そうとしたが……


「じゃあ、薬草とポポイ草で何が出来るか分かるかい?」店主はそう聞いてきた。

薬草とポポイ草を調合する実験もしたかもしれないが、ノートにメモをまとめることにしたのは実験を始めて数日経った頃で、

結局、混ぜた物が何になるかはメモしていなかった。


「いえ……」


「実は、これになるんだ!」店主はそう言って魔力回復ポーションを取り出した!


……思い出した!

薬草とポポイ草で魔力回復ポーションが出来た後、雑草とポポイ草で試した時、同じように魔力回復ポーションが完成したので、

じゃあ特に書く必要はないな。と判断してメモしなかったんだ!


「へぇ、そうなんですね!」


「キミ、そうなんですね!って言うけどさ……自分で魔力回復ポーション造れるって言ってたよね?俺はハッキリと聞いたよ!」


マズイ……口が滑っていたようだ……。

好矢は、作り方だけは絶対に教えないことにして、全てを白状することにした。


「わ、わかりました……作ります。」


そう言って、店の隅に置いてある木箱の中のポポイ草を勝手に取って、雑草をカバンから取り出して、雑草を照明の光に照らしてよく観察する……

それから、魔力回復ポーションを作ってみせた。


「さっきキミが使った草は、薬草とは違うようだけど、何ていう名前の草なんだ?」


「ただの雑草です。俺は雑草からポーションを作ることが出来ます。その作り方だけは絶対に教えません。」


「キミが独自に見付けた方法ってことか……それは無理に聞けないな。」


好矢は雑草を光に照らしてから作るのだが、その光は魔力も何もないただの光だ。

雑草に魔力を込めて作っていることには違いないが、ただ魔力を葉っぱ全体に込めているわけではない。

光に照らして葉脈を確認して、その葉脈に沿って魔力を注ぎ込んでいた。魔力を注ぎ込むと、葉脈が少し浮いて見えるようになってくる。

さらにそこへ魔力をゆっくり追加していくと、葉脈が黒色に変色し始める。

その黒色に変色し始めた辺りで、ポポイ草と混ぜてポーションにする。……そうすると魔力回復ポーションが出来るのだ。


好矢の考察では、雑草に魔力を込めると葉っぱが弱り始め、葉脈が黒色に変化するのは魔力を外へ排出しようとしている状態の事なのだと思っている。

その排出しようとする魔力をポーションとして閉じ込めているので、そのポーションを摂取することで、魔力が回復する……といった考察だ。


ちなみに、雑草全体に魔力を込めると、異常が起きていない健康な部分がなくなってしまい、すぐに枯らしてしまう。それが理由で上手くいかなかった。

また、薬草に同じように魔力を込めて作ってみると、魔力回復ポーションは出来るが、効果が弱まってしまった。

おそらく、薬草の治癒能力が魔力を込めてしまったせいで押し出してしまったのだろう。


とにかく、草への魔力の込め方については試行錯誤の結果発見したものなので、この情報を誰かに教えるつもりはなかった。


「この雑草から作った魔力回復ポーションを卸してくれって言うのなら、引き受けますよ。」好矢は提案してみた。


「本当か!?それは助かる!!」店主は食いついてきた。一番簡単に作れる魔力回復ポーションでこの反応か……と思って、とあるものを出した。


水色の激辛ポーションだ。筋肉強化のバフポーションである。


「これは、筋肉強化のバフが付いたポーションです。非常に辛いので飲むのには一苦労ですが……。」


「そんなものまで作れるのか!?」店主は驚きっぱなしだった。


ポーションを卸す話が片付く頃にはもう夜になっていた。エンテルが心配だ。早く家に帰らないと!



――好矢の家。


「……ただいま。」


「よひや!おかえり!」


「食べ物買ってきたよ!一緒に食べようか。」エンテルに、葉っぱを重ねて編んだような包みに包まれた餅のような食べ物を取り出した。


味も食感も日本で食べた餅のまんまである。

葉っぱを重ねて編んだようなものも、日本にありそうでなかった包みなので、餅を食べても包みを見てここが異世界なんだと再確認させられた。


「おいひい!」エンテルは美味しそうに食べている。娘ができた父親の気持ちが少しわかったような気がした。


それどころか好矢は、いつまでもこんな幸せが続けばいいな……とすら思っていた。

だが、好矢は自分が脅威である可能性を思い出してしまう。そしてこの幸せは長く続いてはくれないのではないか?という考えがよぎる。


そういった考えを自分の中で膨らませると、再び強くあらねばならない!と思った。

思い立ったらすぐに行動するのが好矢の特徴の一つ。早速、翌日に卸す一週間分のポーションを作ってから、町の中心部にある公園で魔法の練習をすることにした。


卸し作業をやりつつ公園で魔法の訓練……お金がしっかりと貯まるまでは、それを繰り返して生活することに決めた。


――そして、毎朝ポーションを卸してからギルドへ行って、依頼をこなしてお金を稼ぐ……

そんな生活を始めてから一年が経った……。



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