第四十話◆バフポーション

「この白いポーションは、持続時間延長ポーション!滅多に店でも売ってないレア物よ!?」どうやって作ったの!?


「作り方は教えませんが……持続時間延長ってどういうことですか?」


「模擬戦の決勝戦でやってたでしょ?風魔法の魔法バフを使って、移動速度上げること……。」


好矢が仕掛けた魔法バフの起点に、ソフィナが風魔法を使って自分の仲間に風属性の移動速度上昇バフを付与したのを思い出した。

「はい。」


「あれ、しばらくしたら勝手に無くなっちゃったでしょ?」


「そうですね。魔力で持続時間を長くすることが出来ればいいんですが……。」


「そういう高度な魔法を使って魔力を減らすよりは、これ飲んで持続時間を延ばした方がいいってこと。」


なるほど、そういうことか……。


「これ一本しか作っていませんが、どのくらい伸びるんですか?」


「さぁ……?でも店にあるやつは大体5分延長だけど、それより色が薄いから、3分程度なんじゃない?」


「そうですか。じゃあ次はもっと濃いやつ作ります。」


「作れるの!?」やはり食い付かれた。教官という肩書があっても、学生がポンポン簡単にポーションを創り出す様子だと気になるのだろう。


「作れますが、作り方は教えません。」キッパリと言い放って続ける。「それで……こっちの水色の液体は何です?」


「作り方教えてくれないと教えなーい!」と言ってレイラ教官はプイッとそっぽを向いた。


「分かりました。それでは、教えてくれなかったとシルビオ学長に伝えますね。」と笑顔で言ってやると、


「わ、分かった!言う!言うからっ!!」と言われた。やはりシルビオ学長がピキるとみんな怖いのだろう。


「……とは言うものの……何だろうコレ……?」


色んな物を使って確認していると……


「……害が無いのは解ったし、あとは味しか無いわね。」と言って、ショットグラス程度のサイズのカップに注いだ。

「ヨシュアくんもどうぞ。」と言ってカップを渡してきた。


一緒に飲む……。もの凄く辛い!!!


「ギャーッ!何これぇっ!?」


「ヒィーヒィィ―!!」


二人しか居ないのに、薬学室はもの凄い大騒ぎになった。



「ッ……ハァッハァッ!なんて物を飲ませるのよ……」


「教官が勝手に飲んだんでしょ……。それで、何か分かりましたか?」


「ううん…辛いってことが分かっただけ。」


「そうですか……。」


ちょっと残念そうにして、ポーションを全てカバンに入れて薬学室を出ようとすると――


「あれっ!?」レイラ教官の声に振り向く。


――なんと、講義で使う、ポーションが大量に入った木箱を軽々持ち上げているのだ。


「こんなに軽かったっけ??」涼しい顔して木箱を持ったまま、そんな話をしている。


「教官、もしかしてさっきのポーションって筋力増加のポーションなんじゃ……」


「あぁっ!!」


二人でまた新しいポーションを発見した。一本のポーションの瓶からショットグラス二杯分程度しか飲んでいないのにこの筋力の増加量……

丸々一本飲んだらどうなるのだろうか……?試してみたい気もするが、やめておこう。

味が全くせず、ただ辛いだけのサラサラしたデスソースを飲んでいる感じだ。気分が悪くなる……。


・雑草×5+赤い草×1= 魔力回復ポーション(赤みがかった緑色)

・薬草×5+赤い草×5+白い草×5= 体力回復ポーション(透き通った青色)

・薬草×1+青い草×1= 体力回復ポーション(透き通った青色)←内容は同じ

・薬草×5+雑草×10→赤い草×3+赤い草×3= 万治ポーション(透き通った紫色)

・赤い草×1+青い草×1= 万治ポーション(透き通った紫色)←内容は同じ

・雑草×1+青い草×1= 持続時間延長ポーション(白味がかった液体)

・白い草×1+青い草×1= 筋力増加ポーション(水色の液体)←もの凄く辛い!取扱注意!!


レイラ教官が講義で使うポーションを移動させて準備をしている間、好矢はポーションについて分かったことを、ノート書き直しておいた。


「そういえば、今日の講義は終わり?」教官が強化された腕力のお陰で、チャッチャと準備を終えて話し掛けてきた。


「そうですよ。この後は今日の講義でやった内容をノートに清書します。」


「真面目ねぇ~。」


「当然ですよ。元の世界では医学生だったんですからね!」


「元の世界…?イガク…何……?」


「いえ、何でもありません。」


「そう……。あ、そういえばヨシュアくんって物凄い魔力高いらしいね!いくつなの?」


「新入生の入学式の時は1004でしたね。」


「それって4月じゃない。もう5月21日よ?」

そういえば、外出許可証がもらえて嬉しくて、全然行ってなかった……。


「じゃあ、これから行きます。」


「どうせなら、私も一年ぶりに見てみようかな!」と言って、好矢とレイラ教官は一緒に魔法館へ行くことになった。



――魔法館。


係員が声を掛けてくる。

「久しぶりですねぇ、ヨシュアさん、レイラ・レヴァイン教官!」


「な、何でいつもフルネームで呼ぶのよ……」


「へへっ、何か語呂がいいので。」


そうか……?と思いながら、イスに腰掛けて……「魔法モニター・オン!」


名前:刀利 好矢 所属:国立魔導学校トーミヨ

職業:魔導士見習い 趣味:草むしり

魔力:1137

使用可能魔法属性:水・氷・風・雷・土・光・植物・金属

使用不可魔法属性:火・闇

得意魔法属性:植物


……一ヶ月半でメッチャ増えてる……


「じゃあ次私の番ね!魔法モニター・オン!」


名前:レイラ・レヴァイン 所属:国立魔導学校トーミヨ

職業:薬師教官 趣味:調合

魔力:2655

使用可能魔法属性:火・水・風・雷・土・光・闇・植物

使用不可魔法属性:氷・金属

得意魔法属性:雷


「いくつだった?」レイラ教官が聞いてくる。


「1137でした。また増えました。」


「1137?ヨシュアくんは何年生だったっけ?」


「俺は三学年です。」


「……えっ!?1137!?えぇッ!?」やはり驚いているレイラ教官。


「教官は、どうなんです?」


「魔力は2655で、去年とくらべて56しか増えて無かったよ。講義以外では魔法何て滅多に使わないからねぇ……。」


「そうなんですね。」


「さて、今日はこれで帰ります。」

そう言って、係員からカードをもらった。


「そうね。また今度、新しいポーション出来たら見せてね。」


「たぶん、すぐ用意出来ますよ。まだ試してない組み合わせがあるので。」


白、赤、青の草全て合わせたらどうなるのか?

はたまた、雑草、薬草、白赤青の草全て混ぜ合わせたらどうなるのか?調合への興味が尽きない限り、俺は草むしりを止めないだろう。


その日は帰ろうと思ったが、少し早かったので、ギルドで依頼を受けてから帰ることにした。


しかし、それが切っ掛けとなってしまったのだ…………




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