第十三話◆魔法発動訓練

 好矢たちが驚くのも無理はない。

 ガブリエルに投げつけられた好矢の武器は、魔法で錆びにくい加工がしてある、鉄製の非常に美しくきらびやかな“ジョウロ”だったからだ。


「……これが武器?」


「あぁ、そうだ。中々に綺麗に出来てるだろ!」


「どうやって使うんだよ……」


「水魔法で中に水を溜めて、ジャァーっと……」


「ガブリエル……とりあえず、ありがとう」


「おう!」


 心を全く込めずに白い目でお礼を言ったのに、笑顔で颯爽と立ち去っていくガブリエル。隣にいたソフィナが口を開く。


「使い方によっては、面白いかもしれんぞ。……この世界には通常の水ではなく、熱湯でしか育たない植物も存在するからな! 見たところ、そのジョウロは熱にも強そうだ。火属性魔法と掛け合わせれば――」


「いや……俺、火属性使えないんだよ」


「……そうだった」


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 90分なのにやけに短く感じる講義が終わり、ソフィナに声を掛ける。

「なぁ……」


「どうした、好矢くん」


「魔法の発動の仕方、そろそろ教えてくれよ。講義は理解出来るけど、全く付いて行けない……」


「そうだな……分かった、いいぞ。だが、その前に昼食にしよう」


「あぁ」


 食堂へ行く。無一文なため、好矢の昼食は水だ。

 凄まじく美味しそうで、栄養もボリュームも十分にありそうな料理をソフィナが持って来た。

 彼女は定食を持ってきてから、好矢がお金を一切持ってないということを思い出したようだった。


「学長に頼んで、仕事させてもらえるように言ってみたらどうだ? とりあえず、このパンはあげよう」

 そう言って、ソフィナはパンをくれた。


「ありがとう、遠慮なく頂くよ。それはそうと仕事か……魔法が使えないと難しそうだな……」


 学長室――

 扉を四回ノックして開ける好矢。

「失礼します」


「……ヨシュアくんか。どうしたのかね?」シルビオ学長は机に向かって書類を書いていた手を止め、好矢と話す。


「突然ですが学長、俺、今お金を一切持っていないんです。……お金が貰える仕事、何かありませんか?」


 そんな話をしたが、規則で2学年次の野外の仕事は認められていないらしい。しかし、このままでは生活が出来ない――。


「ヨシュアくん。確かキミは今、ソフィナさんの家で居候させてもらっているんだったね? 彼女に負担掛けて申し訳ないが、しばらくは彼女の力を借りてはもらえないだろうか? 今度の模擬戦は、好成績を残した者には、多くはないが賞金がもらえる決まりになっている。キミは学生とはいえ魔導士だ。自分の生活は、自分の力で勝ち取るんだ」


 と、厳しい言葉を掛けられたが、俄然やる気が出てきた。

 ……模擬戦までまだ日がある。でもお金が無い。気が進まないが、学長の言う通りしばらくソフィナに養ってもらおう。


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 練習場――

 かなり広大な“草原”とさえ言える広さの練習場で、好矢とソフィナは向かい合う。

 周りにはその他の学生たちが、ちらほらと魔法の練習をしている。

「じゃあ、よろしく頼むよ」


「あぁ、では好矢くん。早速魔法の発動方法を教えよう。まず頭の中で、円を思い浮かべてみてくれ」


「分かった」そう言って好矢は、頭の中に◯を思い浮かべた。そのままソフィナは続ける。


「その円の中に、言葉と魔法の形状を同時に思い浮かべる……そして、そのイメージと共に魔力を外に解き放つんだ。……発動!」


 ……バァン!!

 という轟音と共に、細い雷光が地面を抉った!


「これが、雷属性の初歩魔法だ。威力が高い」


 魔力500を超えると、初歩魔法といえど、凄まじい威力になるようだ。

 好矢は植物魔法ではなく、土魔法を使うことにした。目的は――


(再生の土……盛り上がる土……魔力はこんな感じで……)「発動ッ!!」


 ボコッ。

 ボコボコッ。ボコボコボコッ。


 ソフィナの雷魔法によって抉られた土は、好矢の魔力を少量消費して、復元された。


「なるほどな。そういう魔法を使ってみたということか……。それに消費する魔力量のセンスも良い」


「思い切り使ったら、どうなるのか想像も出来ないからな。多少の土が盛り上がる感覚で使ってみた」


「中々筋がいいじゃないか。次は植物魔法を使ってみてくれ」


 好矢はそっと、先程盛り上げた土に手を当てる。

(ただの木に……蔦が無数に巻き付いている……。光属性の付与……浄化の効果……魔力は……この量!)「発動ッ!!」

 その刹那――

 ズバァン!!という音と共に、地面を突き破りそこそこの太さの木が、これでもかというほど蔦が巻きついた状態で地面から急に生えた!

 あまりの勢いに、好矢と近くで見ていたソフィナは1メートル以上吹っ飛ばされた。


「いたた……す、すごいな……」ソフィナはお尻をさすりながら目を丸くして、俺が作った木を眺めていた。俺自身も驚いている。


「ソフィナ、その木に近づいてみてくれ」


「え? あ、あぁ……」軽く返事をしたソフィナは木に近づいた。


「効果発動」好矢が言った。


その瞬間、ソフィナの身体が光りだした!


「な、なんだ!?」



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