第十四話◆魔法の実験


好矢の頭の中にメッセージが出た。

“浄化の木の効果発動。対象ソフィナ。汗・体臭の消臭、体内毒素一部解毒、魔力回復。"

あ、消臭とか……報告するなよ、そんなこと。


「その木は浄化の木。魔力が回復するらしい。」


「すごいな、好矢くんは!確かに、先程使った雷魔法の分は元に戻っているようだ!」


その後ソフィナから聞いた話では、魔力を消費して魔法を発動するということだった。

例えば、魔力が100の人が魔力を10消費して火属性魔法を使ったとする。

すると、全ての魔力を注ぎ込んで発動した場合、使用前の魔力100の威力で火属性魔法が発動する。

発動後、魔力は90になり、もう一度全ての魔力を注ぎ込んで火属性魔法を使用すると、魔力90の威力で、発動後の魔力は80になるらしい。


つまり、使えば使うほど弱くなっていくようだ。


ここまでを簡単にまとめると、最大魔力100の消費魔力10の魔法を発動→威力は100で発動し、最大魔力90になる。最大魔力90の消費魔力10の魔法を発動→威力は90で発動し、最大魔力80になる……といった具合だ。

また、威力には消費した魔力分も影響してくるので、威力100の魔法=強いということにはならないし、弱いということにもならない。

威力数値+αで考えれば良いだろうか?


ただし、ここにもテクニックがあって、消費する魔力を抑えることで、威力も抑えられてしまう代わりに、切り札のように魔力をとっておくことが出来るらしい。

これも例えると、最大魔力100の消費魔力5で魔法を発動した場合、威力が消費魔力分少し落ちただけで残りの最大魔力量は95になる…ということだ。

ここで上級魔導語を使用して消費魔力を減らして使えば、強い魔法が沢山撃てるようになるそうだ。


そして消費した魔力は時間と共に最大魔力まで回復していくそうだ。ちなみに最大魔力を上げるには、魔法をとにかく使い続けるしかないらしい。

じゃあ、俺の魔力が1上がったのは何だったのだろうか……?


――細かく説明されたが、好矢の頭には半分程度しか入って来なかった。今は覚えなくてもいいや。やりながら覚えよう。と決めた。


「大体魔法の発動の仕方は分かったよ。魔法を書くっていうのは、脳内にある丸い紙に書いていく……って感覚だな。」


「あぁ、そんな感覚でいれば、普通に魔法は使えるようになっていくはずだ。……そのうち魔法陣なども使えるようになるだろうが……まぁ二学年ではまだ教わらない。」


「とりあえず、今の要領で魔法を使っていけばいいんだな!」


「そういうことになるな。」


「ありがとう、ソフィナ。助かった!」


「さて、俺はしばらくここで発動魔法の実験でもするよ。」


「分かった。私の家の場所は覚えているか?」


「あぁ、覚えてる。」


「では、一段落したら、帰ってこい。」


そう言うと、ソフィナは立ち去って行った。


「……よし、続けよう。」


好矢は次に植物魔法を使ってみることにした。そういえば、熱湯で育つ植物があるとか言っていたな……。

近くに置いていたカバンから、植物学の教科書を出して見てみる。


ガゾの葉――非常に鋭利な棘がついた雑草。熱湯と魔力をかけて育てることで、鉄のように硬いガゾの葉が出来る。これを使った、ガゾブレードという武器も存在する。

教科書には挿絵も載っていた。

……なるほど。


(ガゾの葉……ガゾの葉は熱湯と魔力を非常に欲しがっている……魔力は…………数字が見えた!50使用。)「発動ッ!!」


ワサァッ!と、大きなガゾの葉が地面から生えてきた。

そして、今度はジョウロに水魔法で普通の水を溜め、金属魔法でジョウロの上にレンズを作り、その上に光魔法を発動……出来るかな……


(ジョウロの上で浮遊しているレンズ……魔力…10使用。)(高熱光源……レンズの上に……魔力……30使用。)「同時発動!!」


ボワンッ!という音を立てて、手に持っているジョウロの上に、レンズと熱光源が急に現れた。


(高熱光源……レンズを通した熱線で水を瞬間沸騰……!魔力…10使用。)「発動!」


水は暖かくなったようだが、まだ触れられる程度の温度だった。今度は魔力20追加使用してやってみた。…………ボコボコ泡が出ている。沸騰に成功したようだ。


沸騰したお湯が入ったジョウロで、ガゾの葉に熱湯をかける。それと同時に――

(水魔法……かけている水……魔力100使用。)「発動!」


ガガガガガガ……!!ガゾの葉がブルブル震えだした!ガガガという音から、どれ程硬くなったのかが容易に想像出来た。


(ただの木……地面から生やす……魔力15使用。)「発動ッ!」


ズドンッ!……中々のサイズの木を少し離れた場所に出現させた。


「よし……準備は出来た。風魔法で試してみるか!」


(突風……ガゾの葉をあの木へ高速発射!…魔力40使用……)「発動ッ!!」


ビュンッ!!シュンッ…ドドドドド!!

突風が鋼鉄のように硬くなったガゾの葉を木に向かって吹き飛ばす!魔力40使用分の強い威力で、ガゾの葉は木に5枚全てが突き刺さった!


「…出来た!でも消費魔力が大きい……合計でいくつかな………木の出現を差し引いても230か……」


準備も必要で隙だらけ、消費魔力が非常に大きい、消費魔力100くらいで今の威力が出せれば……!と思っていた。


「まだまだ改善が必要だな……。」




――魔法の実験に明け暮れる好矢は気が付いていなかったが、もうやってのけていたのだ。

国立魔導学校トーミヨの三学年の後期から教わる、魔法の同時発動と連携発動を……。





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