第四話◆森から脱出とトール・ヨシュア
エンテルと名乗ったその小柄な生物はゴブリンという種族らしい。確かにゲームでよく見かけるような生物だった。
エンテルが持っている木の枝を借りて、地面に書いてやった。
「おれは にんげんの とうり よしや だ」
それを見ると「わふ!?」と驚いた様子だった。
エンテルはまた近く地面に「おまえ にんげん?」と書いた。どうやら人間を見たことがないらしい。
このゴブリンのエンテルとはしばらく森の地面で筆談をすることになった。
分かったことがいくつか。ゴブリンの名前はエンテル。性別はメス。青いリンゴを集める依頼でこの森へ入ったということ。
青いリンゴを集める依頼というのは、ゴブリンが棲む洞窟には、冒険者のギルドがあるらしく、そこで受けた依頼のこと。
つまり、ただ食べたくて青いリンゴを集めていたわけではないらしい。
中々の生活資材が貰える依頼な上に、とても美味しい青いリンゴを食べられるとのことでゴブリンたちには人気の依頼のようだ。
彼女の話によると元々ゴブリンは、人間を忌み嫌っている。大昔、自分たちの棲家を人間に奪われたからだ。そして今も、発見され次第、退治されるという。
なので、俺のような友好的な人間がいることにも驚いていた。
俺は、地面に「このもり の でぐち を しらないか?」と書いた。それを見るとエンテルは「わふ」と言いながら自分の右側を指さした。
俺は「ありがとう」と文字を書いて、青いリンゴを3つ置いて頭を軽く撫でると彼女が指していた方向へ歩き出した。
しばらく歩いて行くと、木の数がだんだんと減ってきて、小さい丘のようなものが見え始めた。
俺はその丘を5分ほどかけて駆け上がると、辺りを見渡した。
――丘の向こうは平原が広がっており、その中心には大きな街が広がっていた。
「……行ってみるか」俺はそう呟くと、また駆け出した。
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街の入口付近へ着くと、巨大な街であることが判る。丘の上から見ると小さい壁だったが、街を包む壁は高さが目算10メートルを超えているようだった。
そして、街の入口には大きな扉があり、馬に乗った人、大きな荷物を持った人、剣や鎧を着た人、大勢の人々が行列を成していた。俺はいそいそとその列の最後尾へと並んだ。
行列の先頭では、書類を持った兵士のような男が町へ入ろうとしている人と話をしていた。町への入場手続きのようだった。しばらく待っていると、俺の番が回ってきた。
「キミ、名前と年齢は?」さっぱりとした事務的な話し方をしてくる兵士。
「
「トール・ヨシュア 21歳」
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