第二話◆なんだここ……?
灯明医科大学には寮があり、そこで生活している学生も多数存在する。俺もそのうちの一人で、金持ちの親のお陰で中々良い部屋に住まわせてもらっている。
時刻は夜10時。晩飯食べてお風呂入って勉強すればちょうどいい時間になるはずだ。
「さて、今日はカップ麺でいいか」刻んだネギも入れて、さあ、一口目を食べようと思い、麺をつかむために箸がスープに触れた瞬間、
カップの真ん中から黒い渦が出てきた。
「な、なんだこれ?」
次の瞬間、スープがバシャッとカップから飛び出し、俺を包んだ! 明らかに元々カップの中にあったお湯の内容量を超えている!
「あっつっ!! ってなにこれ!?」モゴモゴとする。もちろん熱湯に包まれている状況なので喋ってはいない。
というか、メチャクチャ熱い!
地獄のような熱さは極短い時間続いたものの、体感時間では10秒ほど経過した。
そして今度は氷水ほど冷たい水の中にいた。温度差が約100℃なのにもかかわらず、一瞬、体感の温度が変わっていることに気付かず暴れていた。
バシャッと水面から顔を出し、辺りを見渡すと、俺はどこかの森の池の中にいた。とりあえず池から上がると、完全に人気のない自然だらけの場所。
もう一つ驚いたのは、さきほどまで夜だったのにもかかわらず、近くに生えている木々から木漏れ日が差していた。
辺りには、見たこともない植物が沢山ある。なんだここは……?
今の格好は黒いフード付きのスウェットの上下に、白い安物のスリッパ。右手には箸。熱湯に包まれていたのに箸だけは放さなかったのは自分でも驚いた。
近くの苔の生えた切り株の上に座ると、非常に冷たかった水を見る。
「かなり冷たかったな……」
体感時間が10秒ほどであったようだが、実際熱湯に包まれていた時間は2,3秒程度らしい。
キンキンに冷えた池の水のお陰で、気持ち的には楽になった。どこかで応急処置のラップになるものは無いか探すが、当然あるわけがない。
諦めて、ヒリヒリする火傷の患部を眺める。
「どうするか……火傷の痛みが気になるほど自分が落ち着いているのも驚きだけど……マジでどこだよここ……」
切り替えの早い俺はとりあえず、食料になるようなものを探す。
まずは水。池の水を見ると、非常に透明度が高い。特に変な匂いもしないので少し口に含んでみる。
「あっ……売ってる水よりも美味い……」
そう呟いて、下痢を覚悟して好きなだけ水を飲んだ。飲料用に出来る水であるかは解らないが……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます