第一話◆目指すきっかけ
――時は遡ること数年前。
「あぁキミ、再々提出してくれたレポートだけど……」
俺はギクリとした。また突き返されて再提出しろ! と怒られる……と思っていたのだが……
「あれくらいしっかりとした内容が書けるなら、もっと最初から気合を入れて書くように! じゃ、お疲れさん」
人体構造学の教授から肩をポンと叩かれ、俺のレポートを持って颯爽と廊下を歩いて行った。
俺の名前は
やっとレポート地獄から開放された俺は、ハァと溜め息をついてからチラッと親父から入学祝いに貰った有名ブランド、ゴレックスの腕時計を見る……時刻は13時40分だ……。
ちょうど時間が空いたので昼食を摂ろうと食堂へ行くと、沢山の生徒で溢れかえっていた。ちょうど昼時だから仕方ないか……。
……そんなことはともかく、俺が医大生として、ここ灯明医科大学にいる理由を一つ話しておきたい。
俺には中学時代とても仲良くしていた友人がいたのだが、その母親がガンで亡くなった。
その友人の家族は元々、友人が産まれてすぐに父親が蒸発し、母親が女手一つで育てている家だった。
友人がしばらく学校に来ない事を気にかけていると、母親を失った悲しみからか、彼の自室で首をくくっている状態で発見された。
俺は、そんな悲しむ人を一人でも減らそうと思い、医者の道を歩むことにした。
さて、先ほどの再々提出したレポートだが、一週間前にあった講義が終わった時、教授から「今日の講義を聞いていて思った事を書きなさい」と言われていた。
きっと、彼のとても退屈な講義を聞いているやる気のある学生を探しているのだろうと思った。
俺はその講義をしっかりと聞いている側の学生なので問題なくレポートは書けたのだが「何だコレは!?」とキレられて突き返されるということが二回あった。
それを、たまたま同じ講義を受けていた学生とすれ違った時に相談してみると、とりあえず人体構造学の参考書を褒めとけば大丈夫。というアホみたいなアドバイスをくれた。
アイツ、俺を陥れようとしてるのか……? いやでも、たかが講義の後のレポートだしなぁ……と、一応信じて人体構造学の参考書を肯定的に賞賛するような感想をレポートとして提出してみた。
すると、しっかりと受け取ってくれた上に、褒めてくれたのである。
アホみたいなアドバイスをくれた学生の「アイツ、よく教授になれたよな!」という発言に二人して俺たちは笑い合った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます