壁に貼られたポスターを眺める。

私、どんな物にも物語があると思うの。

それがどんなに変な物でも。


泥で変色した靴紐、切れかかっている蛍光灯、腐りかけの蜜柑。


すべてにある。


入学祝いに叔母さんから貰った、趣味の合わないカバンにだって。

おばあちゃんの素敵な帽子の形見だって。

ただのコンビニで買ったおにぎりでも。


私は、そう思っている。


目に見えない、形に残ってないものにも物語があるに違いない。


表情を変化させる空、初めて友人に電話をした気持ち、テストの空気だってそう。


私はそんな小さな、地味な物語も眺めて読んでいたくなる。聴くのだって、知るのだって。


私は生きている。

物語が在り続ける。

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