第11話 不幸を食らう生き物


Aはこの誘拐事件によって精神的なダメージを受けた。それはもうどうしようもないことであった。そして、Aは死んだことになった。助かっていたが、新たな人生を歩みたい。もう忘れたい。そう、彼女からの要望があった。そのことは不幸にも否、幸にも名家にとっても好都合であった。




名家に起きた出来事だ。しかも、Aはメディア露出も多い。人の不幸が食い物な人が多い世の中。記者が食いつかないわけがない。正当防衛であれ人を殺したとなればなおさらだ。例え、今は情報を抑えこむことができたとしてもいつまでもできるかと言われれば、そういうことはない。




民衆を押さえ込むよりもずっと内々の兵士に圧力をかけたほうが楽だ。




結果、その事件は警察庁幹部によって誘拐殺人事件に書き換えられた。上書きして、保存。コンピュータ基本操作のように簡単に片付いた。





今回の事件、つまり木嶋氏が殺害されたことがどのようにして収束の一途をたどったのか。




殺人事件現場に訪れた桜田未來には、殺されている人の周りには無数の破片が見えた。これは守護獣が壊れた破片。つまり、守護獣が主を守ろうとしたが、相手の殺意が強すぎて守れなかった、命の破片。まあ、守護獣の命と引き換えに相手には甚大な精神的な傷もしくは肉体的な傷は追わせているだろうが。やがて、被害者は守ってくれるものをなくし、ただの人間と同様息絶えた。

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